犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則案に対する意見書

2008年3月10日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

2008年2月10日、法務省は、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則の制定」について意見募集を行いました。

これは、更生保護法の施行に伴って、同法及び売春防止法を実施するための新たな省令を定めるものです。

日弁連は、この規則案について意見書をとりまとめ、2008年3月10日に法務大臣へ提出いたしました。

意見書の概要は以下のとおりです。


意見書の概要

  1. 実施に当たる者の姿勢
    日弁連は、更生保護法の目的規定として、社会内での指導・援護によって対象者の改善更生を助け、社会の保護・個人及び公共の福祉を増進することを明確化するように求めてきました。規則案第3条は「厳格な姿勢と慈愛の精神をもって接し、」と規定しており、対象者に対して厳しい姿勢で臨むべきかのような誤解を与えることは、避けるべきであると考えます。


  2. 国の責務の明確化規定を
    日弁連は、更生保護法案に対する意見書において、更生保護は省庁間の壁を超えて国家として取り組むべきことが、最も重要かつ基本的な課題であることを明記し、少なくとも省令や通達で明記すべきである、との意見を述べましたが、更生保護法に反映されませんでした。同法を実施するための規則において、国の責務を明確化する規定を総則に盛り込むべきであると考えます。


  3. 仮釈放の積極化
    日弁連は仮釈放について、対象者の円滑な社会復帰と改善更生に有益であるとの立場から、明確な基準規定の検討を提案してきました。また、「悔悟の情」については、より広く受刑者が自らの半生を省みる態度を斟酌できるものとすることを求めてきました。しかし、規則案第28条ではこうした提案の趣旨が盛り込まれていません。仮釈放の消極化を避ける表現に改めるべきであると考えます。


  4. 犯罪被害者等からの意見聴取手続
    日弁連は、被害者等からの意見聴取にあたり、受刑者(少年院在院者)側に発生した事情を知らせるべきことを主張してきましたが、規則案にこうした趣旨の規定はなくいわば運用に委ねています。規則案第24条以下には、被害者等の意見の斟酌が適切に行われるよう、一定の条件下で改善更生の経過等、判決後に生じた事情を被害者等に伝達することを規定すべきであると考えます。


  5. 遵守事項違反と仮釈放・保護観察付執行猶予の取消し
    日弁連は、遵守事項の違反を直ちに不良措置に結びつけず、他に適切な社会内処遇措置を執り得ない場合にのみ、取消し等の不良措置に結びつくべきことを主張してきました。仮釈放を取り消す措置は、不利益性の高い処分であり、事後的な不服審査の保障だけでなく、取消しの措置を執る前に保護観察者に対して、告知聴聞の機会を保障し、遵守事項違反の有無、その理由、情状などについて意見を述べ、資料などを提出する機会を保障するべきであると考えます。

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