国税に関する不利益処分の理由附記及び処分基準の公表についての意見書

2007年11月5日
日本弁護士連合会


本意見書について

第1 意見の趣旨

国税に関する法律に基づき行われる処分その他公権力の行使に当たる行為(酒税法第二章の規定に基づくものを除く)に対して行政手続法第12条(処分基準の公表)及び14条(不利益処分の理由の提示)の適用を除外している国税通則法74条の2第1項につき、これらの条項の適用を認める改正を行うべきである。


第2 意見の理由

  1. 行政手続法14条(不利益処分の理由の提示)を適用除外とすべきでない理由
    一般に、法が行政処分に理由を附記すべきものとしているのは、処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものであり、行政運営の公正を確保し違法な行政処分の司法による事後チェックを機能させ、国民の権利利益を保護する上で極めて重要である。行政手続法も、かかる観点から憲法上の適正手続の具体化として、不利益処分の理由の提示の規定(行政手続法14条)を設けている。
    不利益処分の理由附記の上記重要性からすれば、これを適用除外とするにはそれ相応の理由が必要なはずであるが、国税に関する法律に基づき行われる処分等につき適用除外を正当化するために述べられている理由はいずれも説得力を欠く。
    青色申告以外の申告に係る課税処分についての判例も、明文の規定がないから理由附記のないことを容認しただけで、「更正につき詳細な理由が示されることが一般には望ましい」ことは認めている。
    法の支配の基本理念に基づき、違法な行政の司法によるチェック機能を強化し、国民の権利利益の保護に資するため、行政手続法14条を適用除外としている国税通則法の規定を改正すべきである。


  2. 行政手続法12条(処分の基準)を適用除外とすべきでない理由
    行政手続法12条は、処分の公平と予測可能性の確保のために処分基準の設定と公表を規定している。
    国税通則法が行政手続法12条を適用除外とする理由として述べられている理由はいずれも説得力を欠く。
    国税に関する法律に基づき行われる処分等についても、税務行政の公平性と予測可能性の確保の見地から、その適用を認めるべきである。


  3. 他の法令における行政手続法の適用除外の規定
    司法による行政へのチェック機能を十分に働かせるうえで処分基準の公表と不利益処分の理由の提示は何よりも重要であり、たとえば健康保険法39条3項や厚生年金保険法18条3項のように、「行政手続法第三章(第12条及び第14条を除く)の規定は、適用しない」と規定し、行政手続法第三章の適用を排除した上で12条及び14条の適用を認める立法例も存在する。

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