出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案に対する意見

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2007年10月11日
日本弁護士連合会

本意見書について

第164国会で成立した出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律(平成18年法律第43号)により、特別永住者等を除く外国人についてその上陸時に指紋等の個人識別情報の提供を義務付ける規定及び特別永住者等の外国人について証印を受けることなく指紋等の個人識別情報を利用して自動化ゲートを通過することを可能とする規定が設けられ、これらの規定は、2007年11月23日までに施行されることとされています。


現在、法務省は、これらの規定の実施のための手続等を定めるとともに、一定の要件に該当する日本人についても自動化ゲートの通過を可能とする規定を整備するため、「出入国管理及び難民認定法施行規則の一部を改正する省令案」を公表し、これに対する意見公募を行っています。


日弁連は、上記の改正法に関し、「外国人の出入国・在留管理を強化する新しい体制の構築に対する意見書」(2005年12月15日付け)及び「入管法『改正』法案の徹底した審議を求める会長声明」(2006年5月15日付け)を発表し、反対の意見を述べてきましたが、上記の省令案についても意見を取りまとめ、2007年10月11日に法務大臣宛に提出しました。


本意見の趣旨は、以下のとおりです。  


  1. 指紋及び顔の画像情報の提供を義務付けることについて
    省令案では、すべての外国人(特別永住者等を除く)の上陸申請時に提供を義務付ける個人識別情報として、顔情報のみならず指紋情報を規定するが、個人識別情報の提供の義務化は、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の制約にあたるから必要最小限にとどめるべきものであり、改正法施行にあたって提供を義務付ける個人識別情報として、顔情報のみならず指紋情報を規定するべきではない。

    なお、改正法におけるすべての外国人(特別永住者等を除く)の上陸申請時に個人識別情報の提供を義務付ける規定の施行時期等についても、国会等において、国際的動向などを総合的に勘案して、見直しが図られるべきものである。


  2. 提供を受けた顔情報及び指紋情報の保管及び利用について
    省令案では、外国人の上陸審査時に取得した個人識別情報についての保管や利用に関する規定が存在しないが、これらの個人識別情報は、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の保障を受ける重要な情報であるから、旅券上の情報や過去に退去強制を受けた者の情報などとの照合を完了した時点で直ちに消去し、外国人の入国後もこれを保管して犯罪捜査や在留を管理する目的のために利用しないこととすべきであり、その旨を省令において明記するべきである。


  3. 自動化ゲートの規定について
    省令案では、自動化ゲートの利用のために提供された顔情報や指紋情報の目的外利用について規定していないが、これらの情報は、プライバシー権ないし自己情報コントロール権の保障を受ける重要な情報であるから、日本人を含む市民の顔情報や指紋情報を、犯罪捜査や在留状況ないし生活状況の監視の目的で利用することはできないこととし、その旨を省令において明記するべきである。

    なお、自動化ゲートを利用しない者の出入国が現状よりも不便を来たすことのないよう、出入国手続全体の一層の迅速化に努めるべきである。

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