流域自治に向けた河川法の改正を求める提言
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2007年7月12日
日本弁護士連合会
本提言について
長良川河口堰問題を契機として、1997年、河川法は、法の目的に「河川環境の整備と保全」を明記するとともに、97年改正法河川管理のための計画制度を従前の工事実施基本計画から、河川整備基本方針(第16条)と河川整備計画(第16条の2)の二段階に分け、整備計画の策定に住民意見の反映等の手続を導入すべく改正されました。
2001年2月から始まった淀川流域委員会は、住民やNGO関係者、公募委員も含む構成で徹底した情報公開のもとに行われ、ダムは原則として建設しない、などの画期的な提言を行いました。同じ頃、長野県の田中康夫前知事も脱ダム宣言を行い、学者を中心とした「長野県治水・利水ダム等検討委員会」の後、流域住民を中心とする「河川流域協議会」が設置され、下諏訪ダム(砥川)の建設が中止されました。その後、流域委員会の設置が全国に広がりましたが、その多くは、肱川水系にみるように、従来どおりの審議会、公聴会と変わらない内容に止まりました。さらに、第十堰問題を抱える吉野川では、従来どおりの基本高水を内容とする基本方針が先に決められてしまい、整備計画策定についても、流域委員会方式によらず、住民・学者・首長から別々に意見聴取する三部会方式が採られました。そして、この三部会方式が広がりつつあります。他方、兵庫県武庫川では、約半数の公募委員を含み、学者と住民が対等に議論する流域委員会が、河川区域外を含めた流域全体を対象とするまちづくりの視点から「総合治水対策」に取り組み、画期的な提言をまとめています。
以上のように、河川法改正から現在までの運用状況の多くは、住民参加手続を実質的に取り入れるはずの改正の趣旨に逆行するものとなっていますが、それを許している原因の一つは、改正法の規定(第16条、第16条の2)の不十分さにあると考えます。
本提言は、改正の趣旨であった住民参加を法の規定上にあらためて確立しようとするものです。住民参加の手法としては、淀川流域委員会、長野県、武庫川流域委員会の経験に学び、このような流域委員会を法定の機関として明確に位置付けることが挙げられます(提言2)。同委員会は、河川管理者と十分に対話し、専門家と住民が対等に議論する常設的協議会とし、目的と権限は基本方針及び整備計画の内容、実施状況、変更、について、原案の段階から、いつでも意見を述べるものとし、河川管理者は委員会の意見を尊重するものとします。そして、このような住民参加手続を基本方針の段階から採り入れるものとします(提言1)。さらに、そうなれば、基本方針についても整備計画と一体的整合的なものとして地方整備局レベルに策定を委ねることが自然です(提言3)。
以上の提言の内容は、最近の、河川問題に関わる住民団体の議論、地方分権の流れ、公共事業について構想段階から住民参加手続を入れる方向性、などにも合致するもので、時宜に適ったものと考えます。
本提言は、2007年7月20日、国土交通省に提出いたしました。
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