「生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言」についての補充提言-死後懐胎と代理懐胎(代理母・借り腹)について-

2007年(平成19年)1月19日
日本弁護士連合会


本提言について

生命の誕生に関わる生殖医療技術が生み出している問題に関し、日弁連は、2000年3月、生殖医療技術の濫用を防止し、生まれてくる子の人権と法的地位の確立及び利用者とりわけ女性の地位と権利を保護するため、生殖医療法の制定と制度整備を求める→「生殖医療技術の利用に対する法的規制に関する提言」を取り纏め公表している。


当時着手されていた政府による法整備に向けた検討は2003年7月の法制審「要綱中間試案」段階で止まり、遅々として進まない状況にある。


このような状況下、現在では生殖医療に関する技術によって、凍結保存した精子や卵子を利用して死後に懐胎することも、第三者の女性に妊娠、出産を代行してもらうことも、技術的には可能となっており、現に出生子の法的地位をめぐる訴訟が起こされている。


2006年9月には、最高裁判所が、死後懐胎子をめぐり、早急な法整備を促すともいえる判決を下した。こうした事態に政府も、先頃日本学術会議にそのあり方の検討を求めるに至っている。


日弁連は、生殖医療技術を利用して生まれてくる子どもや生殖医療技術の利用者となる女性などの人権が守られ、人間の尊厳が保持される社会を堅持したうえで生殖医療技術の利用が図られることが極めて重要であることから、基本的人権の擁護と法律制度の改善に努力することを使命とする弁護士の団体として、2000年3月の提言について補充しつつ、再び生殖医療法の制定と制度整備を求め提言をすることとした。


日弁連は、生殖医療技術の利用をめぐって、人権の擁護と人間の尊厳を貫く見地に立ちつつ、子どもを持ちたいとの願いにも調和する法整備のあり方や、法整備がなされないうちに生まれてきた子の法的地位が不安定にならないように環境を整備することなどについて、引き続き検討を続ける。


補充提言の趣旨

第1 精子・卵子・胚の保存と廃棄
  1. 生殖医療技術を利用しようとする者が自ら使用するために医療機関に預託した、又は、法律上もしくは事実上の夫婦が使用するために第三者より提供された、精子もしくは卵子又は胚の凍結保存期間は5年とし、その期間が経過したときはこれを廃棄する。   但し、提供者又は預託者の意思で5年ごとに期間を延長することができる。
  2. 凍結保存された精子もしくは卵子又は胚は、預託者もしくは提供者が死亡したときは、預託者又は提供者の意思にかかわらずこれを廃棄する。胚については、婚姻関係ないし事実上の婚姻関係を解消したときにもこれを廃棄する。

第2 精子・卵子・胚の使用と同意
  1. 凍結保存された精子もしくは卵子又は胚を使用するときには、使用の都度、預託者又は提供者の同意を得なくてはならない。
  2. 死亡した配偶者の精子又は卵子はこれを使用してはならない。

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