「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」に関する申入れ

2006年1月18日


未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議御中
法務事務次官 樋渡 利秋 殿
警察庁長官  漆間  巌 殿


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


  「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」に関する申入れ


  1. 申入れの趣旨

    (1) 「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」においては、その設置の趣旨に鑑み、十分な議論を尽くされたい。

    (2) 「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」においては、法務省・警察庁と同様に日本弁護士連合会の答弁席を設置し、マイクも備えて、当連合会による発言の機会を保障されたい。


  2. 申入れの理由


    去る1月13日(金)に開催された「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」(以下「有識者会議」という。)の第4回会議においては、代用監獄に関する議論が行われましたが、議論の前提となる基本法令や、法制審議会で討議が尽くされた、いわゆる漸減条項についての1980年答申等について認識に混乱があるまま審議が進められたことは、極めて遺憾と考えます。


    そもそも、日本弁護士連合会(以下「当連合会」という。)は、「行刑改革会議で取り上げられなかった代用監獄問題、未決拘禁者処遇、死刑確定者処遇などについては、行刑改革会議の提言の趣旨に則り、別途の調査検討のための審議機関を新たに設け、時間をかけて諸外国の実情なども調査検討し、当連合会の意見も十分に聴取した上で、受刑者処遇に関する立法の成立後に次の段階での立法を目指すべきである」(2004年2月3日付け法務大臣あて申入書)として、審議機関の設置を求めてきました。


    昨年5月の受刑者処遇法成立後、再開された法務省・警察庁と当連合会の三者協議においてもなかなか一致点を見いだせない重要問題について、第三者たる有識者に、大局的見地から叡智を尽くした検討をしていただくため、あらためて当連合会は強く審議機関を設置を求め、ようやく実現にこぎ着けたものです。


    このような経過を経て設置された有識者会議は、百年前に制定された監獄法を改正しようとする歴史的事業の担い手であります。とくに、代用監獄問題は、国内外から厳しい批判に晒されてきた根本問題です。国家百年の計という言葉どおり、本来であれば、この問題の専門家である刑事訴訟法学者の代用監獄賛成側と反対側双方から、きちんと意見聴取し、行刑改革会議のときのように海外の未決拘禁施設も直接調査して、討議を尽くすべきであり、課題の重要性に照らし、当然にその程度の慎重さが求められるべきです。対立のある事項については引き続き議論する、との確認はなされましたが、現在の開催スケジュールに拘泥せず、十分な議論を尽くす努力がなされるべきであり、さもなければ、有識者会議の意義が正面から問われることになります。


    また、有識者会議では、当連合会の主張と両省庁の主張を対比する論点整理表に基づいて討議を進めてきましたが、そうである以上、当連合会についても両省庁と同様に答弁席を設置し、三者が対等の立場で議論に適宜参加できるようにしなければ、自ずと議論の方向性がバランスを欠いたものになるのは必至です。当連合会の主張も踏まえて議論を行う以上、当然に、法務省・警察庁と同様に当連合会の答弁席を設置し、マイクも備えて、日弁連に対しても適切な発言・資料提供の機会が与えられなければなりません。また、当連合会を対等に取り扱わないことは、両省庁と当連合会の三者が協議して早期の法整備に努めるよう求める両議院法務委員会附帯決議の趣旨にも反する事態です。


    よって、上記のとおり申し入れます。