「刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会」の開催に関する要望書

2006年1月6日


法務大臣 杉浦 正健 殿


日本弁護士連合会
会長 梶谷 剛


 


 「刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会」の開催に関する要望書


今般,「刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会」(以下「不服検討会」という。)について開催要綱等のお知らせを受けましたが,2003年12月の行刑改革会議提言の趣旨に鑑みれば,不服検討会の組織・運営には提言の趣旨と異なる問題点がいくつかありますので,下記のとおり要望いたします。



第1 要望の趣旨


1 名称を,「刑事施設不服審査会」若しくは「刑事施設不服審査委員会」(以下「審査会」という。)とし,その任務は,被収容者の不服を調査審理し,その不服に理由があるときは,法務大臣に対し,理由を付して,是正措置を執るべき旨の勧告を行うことができるものとすること。


2 審査会の事務処理を補助・促進するため,審査会に分野別の部会を設け,審査会委員のほか外部の有識者を部会員とすること。


3 審査会の事務を処理するため事務局を置き,かつ,事務局職員のなかに弁護士を複数加えること。


第2 要望の理由


1 行刑改革会議提言(以下「提言」という。)を受け,刑事施設の被収容者の不服審査に関する機関が設置されることは意義のあることであり,当連合会としても高く評価しております。


2 ところで,上記開催要綱等によれば,「不服検討会」は、全国の施設から法務大臣に対して寄せられる不服申立てについて,法務大臣による付議に応じて,調査検討を行う機関であるとされていますが,提言によれば,「調査審理」を行い,「必要な場合に法務大臣への勧告を行」うものとされています(提言32頁)。よって,提言の趣旨に忠実に,単なる調査検討と法務大臣への提言に留まらず,調査審理を踏まえて法務大臣への勧告を行うという機関の性格が明確にされるべきであり,名称も,提言の原案どおり「刑事施設不服審査会」とすべきであり,少なくとも「刑事施設不服審査委員会」とすべきであります。


3 また,被収容者から寄せられる不服申立ては,規律及び秩序,作業,各種指導,外部交通等,多岐にわたることが考えられ,それぞれについて刑事施設特有の背景事情を有しています。こうした事案の調査検討を5名の委員のみで滞りなく行うことは非常に困難と考えられます。審査会が「被収容者の人権侵害に対する救済をより適正に図ることを目的とする」(前同頁)ものである以上,その実効性を確保するためには,審査会内部に複数の部会を設け,審査会委員のほか外部の有識者を部会員として,調査審理を行うことが必要です。


4 さらに,提言によれば,審査会は、公権力による人権侵害等を対象とした独立性を有する人権救済機関が整備されるまでの暫定的な機関として設置されるものであるところ,人権擁護法案においても,人権委員会の事務局職員のうちには,弁護士となる資格を有する者を加えなければならないとされています(同法案第15条第2項)。審査会の事務局には弁護士を複数職員として任用すべきです。
よって,上記要望の趣旨記載のとおり,要望いたします。