内閣官房に設置される「多重債務者対策本部」の活動について(要望)

2006年12月22日
日本弁護士連合会


本意見書について

2006年秋の臨時国会において、概ね3年後に出資法の上限金利を29.2%から20%にまで引き下げることを骨子とした「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が成立しました。


日弁連は、多重債務被害の防止・救済に大きな第一歩を踏み出す歴史的な決断として、高く評価しました。


また、成立した改正法附則66条では、政府の多重債務問題解決のための責務を規定しているところ、この附則を実行するため、内閣官房に「多重債務者対策本部」を早期に設置することも衆・参両議院の委員会において附帯決議がなされました。


そこで、日弁連は、「多重債務者対策本部」の活動として取り組むべき事項を改正法附則66条の内容に即して、以下のとおり要望しました。(括弧書きの省庁は主な担当と考えられる省庁であり、日弁連として中心的に協力すべき点には日弁連と表示しました)。


要望の趣旨は以下の通りです。


  1. 「資金需要者等が借入れ又は返済に関する相談又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備」について(総務省、日弁連)
    (1)多重債務者を専門の債務整理相談窓口に誘導する体制を確立すること
     ①行政職員が多重債務、債務整理の知識を身につけるため研修体制を整備すること

     ②行政窓口から、多重債務者を専門の相談機関に確実に誘導できる体制を整えること

     ③自治体において多重債務者を発見し、援助する体制の整備すること

    (2)多重債務者の支援のため、都道府県においても関係部局課を超えた横断的な連絡協議会を組織し、これに民間の多重債務者や低所得者の支援団体を加えて総合的な政策の検討、実施を行うこと(総務省、金融庁、日弁連)
    (3)多重債務者に対する債務整理、家計相談の機関は公正中立であること(金融庁、日弁連)

  2. 「資金需要者への資金の融通を図るための仕組みの充実」について
    (1)自治体提携の社会福祉貸付制度、社会福祉協議会による生活福祉資金貸付制度の拡充を図ること(総務省、厚生労働省)
    (2)中小企業向けの貸付制度を充実させること(経済産業省)
    (3)生活保護制度の適正な運用を行い、積極的な活用に努めること(厚生労働省)

  3. 「違法な貸金業を営む者に対する取締りの強化」について
    (1)集中取締本部による取締りを強化するとともに、厳正な処罰により一般予防に資すること(警察庁、法務省)
    (2)ヤミ金融事犯のツールの取締りを強化すること(警察庁)
    (3)被害の予防と救済への配慮(警察庁、法務省)

  4. 「貸金業者に対する処分その他の監督状況の検証」について
    (1)利息制限法の定める金利を超えた貸付をしている貸金業者の広告を禁止すること(金融庁)
    (2)サラ金・クレジット会社が自主的かつ円滑に過払金を返還する体制を整備すること

  5. 「施策を総合的かつ効果的に促進する」ことについて
    (1)モデル自治体による実施を行うべきこと(総務省、金融庁)
    (2)多重債務者対策本部等に日本弁護士連合会のみならず、消費者や多重債務者の意見を十分反映させること(多重債務者対策本部)

  6. 見直し規定について
    本要望書の要請の主旨1「資金需要者等が借入れ又は返済に関する相談又は助言その他の支援を受けることができる体制の整備」ないし5「施策を総合的かつ効果的に促進する」ことについての施策を確実確実に実行して、施行後2年6月以内の見直しにおいて、「特例金利」、「利息制限法の金額刻みの引き上げ」を認めるべきではない(多重債務者対策本部、金融庁)

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