新司法試験,隣接法律専門職の業務拡大及び国民の利便性向上等に関する意見書(3点)

2006年11月22日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

第1 経過


2006年9月14日付で、内閣府規制改革・民間開放推進会議の基本ルールワーキンググループ(以下「WG」といいます。)より、各士業団体に対し、士業に関する意見・要望について照会がなされました。これに対し、日弁連は9月22日に、これまで議論を重ねてきた課題を検討する際の考え方を回答しました(上記ファイル「 →士業および法曹人口・法曹養成制度に関する考え方 」)。


同照会に対し、全国社会保険労務士連合会(以下「社労士会」といいます。)は、個別労働関係紛争に係る簡易裁判所における訴訟代理権等の付与、ADR単独代理業務の紛争目的価額上限60万円の140万円への引き上げ等を要望しました。


これらの要望等を受けて、WGによる社労士会ヒアリングが行われ、それを踏まえて新司法試験、隣接法律専門職の業務拡大、国民の利便性向上を項目とする日弁連ヒアリングが行われました。日弁連は、2006年11月2日の正副会長会においてヒアリング項目についての意見書をとりまとめ、11月6日にWGに提出しました(上記PDFファイル「→新司法試験,隣接法律専門職の業務範囲拡大及び国民の利便性向上について(意見)」及び「→添付資料」)。その後、社会保険労務士への簡裁訴訟代理権付与等の問題を中心とした補足意見書を、11月21日に提出しました(上記PDFファイル「→新司法試験及び社会保険労務士への簡裁訴訟代理権付与等についての補足意見」)。


第2 意見書の概要


  1. 検討のあり方について
    新司法試験のあり方等の問題、隣接法律専門職の代理権等の問題はともに、司法制度全般に関わる重要な課題です。司法制度にかかる諸課題については、司法制度改革審議会及び司法制度改革推進本部において法曹三者のみならず社会各層からの意見を十分に採り入れた議論を経て、一定の方向性と枠組みが作られ、現在官民を挙げたその実行過程にあります。課題の設定及び検討の際には、司法制度改革をめぐる検討の成果を無にすることのないよう、そして司法制度改革における議論の経過を十分踏まえるべきです。
  2. 新司法試験等のあり方について
    法曹人口については、合格者年3000人に達しかつその質と量の両面からの検証を行うまでは、新たな数値目標の設定はすべきではありません。そして、質のともなった法曹養成の観点から、合格者増の前倒しには反対です。また、法科大学院を中核とした新しい法曹養成制度は、司法改革の大きな柱であり、プロセスによる養成を旨とする法科大学院制度の趣旨を損ねることのないよう、その試験内容及び運用には格段の配慮がなされるべきです。
  3. 社会保険労務士への簡裁訴訟代理権付与等について
    司法制度改革審議会及びそれに続く司法制度改革推進本部での検討を経て、社会保険労務士にADR(裁判外紛争解決)での一定の代理権が与えられました。しかし、ADR代理権の施行(2007年4月)もなされていないうちから、かつ何らの緊急性も認められないのに、そのさらなる拡大を検討することには大きな疑問があります。今後検討がなされることがあるとしても、法曹制度と関連づけた隣接法律専門職制度全般、さらには司法制度全般の問題の中での総合的検討がなされるべきです。

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