「更生保護のあり方を考える有識者会議」報告書に対する意見
- 意見書全文(PDF形式・30KB)
2006年9月15日
日本弁護士連合会
本意見書について
本意見書は、法務省に設置された「更生保護のあり方を考える有識者会議」が、2006年6月27日に提言の形で法務大臣に提出した報告書について、その内容に対する意見と更なる提言をまとめたものです。
日弁連は、2006年9月15日の理事会において本意見書を取りまとめ、同年9月28日に法務大臣に提出しました。
意見の要旨は以下のとおりです。
1.更生保護の理念について
更生保護の改革と運用は、社会内での指導・援助の観点から検討されるべきであり、副次的効果である「再犯防止」に偏ってはならない。
2.提言の指摘する問題点について
提言が指摘する問題点は基本的に正しいが、さらに、保護観察期間が短いこと、対象者の範囲が狭すぎることについても問題を提起する。
3.提言事項について
- 保護観察の充実強化
保護観察の充実強化に関連し、就労支援・定住支援策として、雇用保険期間の進行を停止させる等して、出所後に保険給付できるよう制度を改正すること、出所後スムーズに生活保護が支給できるようにすること、高齢者が再犯に及ぶことを回避し得る適切な社会福祉政策を実施すること、受刑中の作業賞与金の増額や、賃金制の採用等も検討すべきであると考える。
不良措置実施は、社会内処遇の間口の拡大とセットでなければならない。また、新たに科される義務については、軽微な違反について不良措置を発動しないことや、負担なく義務を履行できるための工夫が必要である。 - 関係機関との連携強化・情報の共有には、実効性のある施策が望まれる。
- 執行猶予者保護観察制度については、指導援助体制の充実により、運用の拡大が期待される。なお、当連合会は、提言が求める、裁判所、検察庁、弁護士会及び保護観察所の連携に積極的に対応していきたい。
- 仮釈放について、次のとおり考える。
懲役受刑者については仮釈放を原則とすべきであり、当面は運用によるものであっても、迅速に仮釈放の原則化を実現するべきである。仮釈放の審理では、不許可とすべき例外的事由の有無を検討すべきである。また、一定の要件の下で受刑者に申請権を与えることや、外部の意見を反映させるような組織づくりについても検討すべきである。仮釈放の許否について、被害者の意見を過度に尊重することは、慎重に検討する必要がある。 - 担い手のあり方の再構築に関する提言には、全面的に賛成であり、特に保護観察官の抜本的増員、保護観察官の任用制度の創設、国立の更生保護施設の設置、保護司の有給制の採用、保護司を確保する制度の創設に留意すべきである。
- 対象者の改善・更生の実現のためには、更生保護に対する社会の理解の拡大が不可欠であり、必要な協力を惜しまない覚悟である。
- 必要な法整備と併せて実効性のある予算措置も図られるべきである。
4.中長期的課題
- 現在であれば満期出所者とされる者についても原則として仮釈放を行って保護観察に付することが望ましい。
- 執行猶予取消等の不良措置の積極的運用については、幅広く社会内処遇が認められることを前提に、賛成する。
- 電子監視装置等の情報機器の活用については、弊害もあるので、採否については、慎重な検討が必要である。
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