産業構造審議会 知的財産政策部会 商標制度小委員会報告書 「商標制度の在り方について」(案)に対する意見

2006年(平成18年)1月20日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

1. 「Ⅰ 小売業等の商標の保護の在り方」については、基本的に賛成である。しかし、小売サービス業が、他業種に比べ事業者数が多く、また消費者に直結している業種である事を考えると、この制度の導入は、小売業界はもちろん、国民経済全体にとっても、大きな影響を与えることが想定される。よって、技術的・政策的観点などを考慮した制度設計を行うべきである。


なお、特定商品の譲渡等を単純に行う場合と、商品の選択、仕入れから販売までのサービスを提供することを重視する小売り業態との違いを明確にするため、以下においては、役務商標の保護を許す小売業を、特に「小売サービス業」ということとする。


2. 「Ⅱ 権利侵害行為への『輸出』の追加」については、基本的に賛成である。しかし、「通関」の規制については、国際基準の動向を慎重に見極めるべきである。


3. 「Ⅳ 著名商標の保護の在り方」、「Ⅴ 審査の在り方について」、「Ⅵ その他」の部分は、具体的方向性が示されていないので、意見は差し控える。


  • (1) ただし、「Ⅳ 著名商標の保護の在り方」についていうと、商標法と不正競争防止法の関係をどのように理解するかという重要な問題があり、また、それとの関連において「防護標章登録制度」という我が国独特の制度が過大評価されていると見られる節もあり、検討を継続することを要求したい。
  • (2) 「Ⅴ 審査の在り方について」における「1.コンセント制度について」みると、同所の「(4)対応の方向 (3)対応の具体的な方向性」の項では、「コンセント制度の必要性が指摘される…」旨の記載がある。それにもかかわらず、何故この問題が先送りされなければならないか、理由は明確でない。
  • (3) 「Ⅵ その他」の項の「1」に「商標の定義」について記載されている。 同所には、「小委員会の検討の中では…前向きな意見がある一方、現行法の定義によって特段の実務上の支障は生じていないとの意見があった。」とあり、結論としては「更に検討を行うことが必要であると考える。」と結ばれている。この結論に賛成であるが、「商標制度の在り方について(案)」の冒頭の「小委員会の開催経緯」をみると、この問題は第2回小委員会で議論されているのみである。重要な問題である以上、十分討議をし、時間をかけて方向性を見極めるように要望する。
  • (4) 上記「Ⅵ」の「2」は「使用」の定義について述べている。
    今、「小売サービス業」の登録を新たに導入するに当たり、現行の「使用」の定義のままでは、「小売サービス業」の使用は商標法第2条第3項のどれに該当するとみるのであろうか。この点を明確にすることは、小売サービス業制度の適切な運用のために必要であり、重要であると考える。

この点を至急検討し、明確にすることを要求するために、当連合会は、この意見を1月20日の理事会で取りまとめ、1月26日に特許庁長官に提出しました。

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