裁判の迅速化に係る検証に関する報告書についての意見書

2005年(平成17年)10月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

最高裁判所は、2005年7月15日付けで「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」を公表しました。それに対し、同年10月18日付けで「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書についての意見書」を取りまとめ、最高裁判所等に提出しました。

本意見書の趣旨

裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(以下「報告書」という。)が、裁判に要する期間とその諸要因と考えられるものについての基礎的データを分析し、その結果を広く国民に示したことは、一定の意義があると評価できる。また、報告書の中で、最高裁判所が、裁判の迅速化に関する法律(以下「迅速化法」という。)を基盤整備法として位置づけたことも、高く評価する。


今回の検証により、第一審2年以内という一応の目安からしても、また経年変化で見ても、民事・刑事とも、裁判に要する期間はかなりの程度短縮化していることが改めて示されている。このような状況では、審理期間という側面にのみ焦点を当てるのは妥当ではなく、迅速化の面を強調するあまり、裁判の適正や充実がおろそかにならないよう、今後も現場の裁判を見守る必要がある。


今回の検証ないし報告書の取りまとめは、次のような課題を残している。


第一に、今後、裁判の適正・充実の観点からの検証が必要である。


第二に、司法制度及び人的・物的体制の基盤整備の観点からの検証(地域的状況の検証含む)は十分とはいえない。


第三に、裁判に要する期間とその諸要因の分析についても、例えば証人数が多いと審理期間が長くなるなど、実務家にとってごく当然と考えられることが改めて数字で示されたにすぎないものが多く、何らかの改善の方向性を示すような結果は出ていない。逆に、審理期間を短くするために証人数を減らすべきであるなどという本末転倒の議論につながることを懸念する。


以上の点は、第2回目以降の検証において、十分考慮すべきである。


なお、報告書を各裁判所、裁判官に配布するにあたっては、現場への誤ったメッセージとならないよう、格段の配慮をお願いしたい。


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