情報公開法の改正に関する意見書

2004年11月19日
日本弁護士連合会


本意見書について

第1 情報公開請求権を確立するための改正(知る権利の明記)

情報公開法1条に、情報公開法の目的として、国民の知る権利の保障にあることを明記すべきである。


第2 手続遅延を防止するための改正

公開請求に対する決定の遅延、不服申立手続の遅延を防ぐため、


  1. 法定の決定期限を徒過した場合には、非公開処分がなされたとみなす規定を新設する。
  2. 異議申立から答申までの期間を30日以内に義務づける規定を新設する。
  3. 情報公開法11条(著しく大量の文書に対する公開請求がなされた場合の開示決定等の期限の特例)の「相当の期間」を90日と規定する。

第3 存否応答拒否処分の濫用を防止するための改正

存否応答拒否処分の濫用を抑止するための、存否応答拒否処分制度を定める情報公開法8条を削除し、あるいは少なくとも存否応答拒否が認められる要件を厳格なものとし、認められる範囲についても、プライバシーを明らかに侵害する場合、国の安全上具体的な危険を生じる場合など必要最小限に限定するよう改正すべきである。


手続き上も、各実施機関の判断に任せず、存否応答拒否処分にあたっては、審査会に事前に意見を求める、あるいは決定後速やかに報告するなどの、処分の適正をチェックする手続きを義務づけるべきである。


第4 不存在処分の濫用を防止するための改正

不存在処分の濫用を防ぐため、恣意的な判断を許さない文書管理・廃棄の仕組みの確立が必要であり、現行情報公開法37条(新法22条・2005年4月1日施行)を改正し、文書管理に関する制度の整備を、政令に委ねるのではなく、情報公開法において義務づける規定を設ける。


第5 適正な文書管理を義務づけるための改正

  1. 現行情報公開法37条(新法22条・2005年4月1日施行)において「政令で定めるところにより行政文書の管理に関する定めを設ける」とされているものを、「法制上の措置を講ずる」と改正し、「行政文書の管理に関する法律」を制定する。
  2. 同法の内容として、所定の保存期間を超える場合は、すべて非現用文書として取り扱うこととし、国立公文書館に移管する。行政機関は、同期間を超えて当該行政文書を利用する場合は、写しをもって利用する。
  3. これに伴い、いわゆる「中間書庫」を制度化すると共に、国立公文書館法を改正し、非現用文書のみならず、保存年限内の現用文書をも管理、保存できるようにする。

第6 必要な情報が公開されるための改正(非公開事由の改正)

(1) 個人情報

非公開事由を定める情報公開法5条1号「個人に関する情報」を「個人の私的領域に関する情報・・」と改め、個人識別情報でもプライバシーと無関係なものは除外すべきである。


同号但書「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」という規定は、削除すべきである。


次のような但書を設け、これにあたるものは氏名も含め開示する。


「事業を営む個人の当該事業に関する情報、法人その他の団体に所属する個人の当該団体における職務又は地位に関する情報、公務員の公務又は公務員たる地位に関する情報」


(2) 法人等情報

法人に関する非公開情報規定(情報公開法5条2号)のいわゆる非公開条件付任意提供情報を非開示とする同号ロを削除すべきである。


(3) 国の安全、公共の安全等情報

防衛情報についての非公開事由(情報公開法5条3号)は、「公開することにより、防衛の目的を失うことが明らかであるもの」との趣旨に限定し、同様に、外交情報(同)、犯罪捜査等情報(同4号)についても、それぞれ、「公開することにより、当該外交交渉の目的を失うことが明らかであるもの」、「公開することにより、犯罪捜査の目的を失うことが明らかであるもの」との趣旨に限定した規定に改正すべきである。


現行の「行政機関の長が認めるにつき相当の理由があるとき」との文言は、行政機関の裁量の幅を不当に広く解釈する原因となっており、削除すべきである。


防衛、外交、犯罪捜査等の支障のおそれについては、一定年数の経過後には、より原則開示の趣旨が徹底されるような制度に法改正をすべきである。


第7 一部分の非公開情報を理由にした全部非公開処分を防止するための改正

情報公開法6条2項を次のとおり改正し、少なくとも現在の同法6条2項の規定は5条1号但書に移す。


「部分公開義務の解釈及び運用にあたっては、行政文書の開示を請求する権利を十分に尊重し、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるよう、独立一体的な情報であっても細分化して開示可能な部分を特定し、開示しなければならない。」との規定を設ける。


第8 全国の国民が司法救済を受けられるための改正(裁判管轄)

全国の国民が、その住所地の地方裁判所で情報公開訴訟を行うことができるよう現行情報公開法36条(新法21条・2005年4月1日施行)を改正すべきである。

第9 制度を利用しやすい手数料とするための改正

情報公開請求時に国民から徴収される現在の開示請求手数料(1件300円)について、これは無料とすべきである。


また写しの交付手数料に関しても高額に過ぎるとともに、納付方法等も相俟って円滑な情報公開請求手続の妨げとなっている。


経済的貧困者による公開請求あるいは公益目的の公開請求については手数料徴収を免除しあるいは減額することを法制化すると共に、現在の手数料額、特に電子媒体での開示請求に関する費用額については引き下げられるのが相当である。


また、手数料の納付方法についても現金支払を可能とする等、本制度が国民の利用しやすくなるような形で拡張するのが相当である。


第10 国会・裁判所の情報公開について

国会及び裁判所について、それぞれを対象とする情報公開制度を、独立した法律として制度化すべきである。


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