産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会「職務発明制度の在り方について」報告書(案)に対する意見書

2003年11月21日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

はじめに

1.知的財産戦略本部が平成15年7月8日に発表した「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」(以下「推進計画」という。)では、「発明者の研究開発へのインセンティブの確保、企業の特許管理コストやリスクの軽減、及び我が国の産業競争力の強化等の観点から、社会環境の変化を踏まえつつ、所要の検討を行った上で、2004年の通常国会に特許法第35条を廃止又は改正する法案を提出する。」とされている(推進計画20頁)。


そして、産業構造審議会知的財産政策部会(以下「産構審」という。)では、諸外国の職務発明制度の調査研究も含めて、精力的にこの問題に取り組まれており、その基本的な方向性について異論はない。


2.もっとも、特許法35条の改廃を検討するに当たっては、法律の改廃は原則として立法府の裁量事項ではあるものの、特許法は、大正10年法以来長年にわたって職務発明に対して発明者主義をとってきており、使用者と従業者の力関係の中で従業者が弱者の立場にあることを考慮し、かつ使用者との調和を図った結果、同条の定める補償金(対価)請求権は、合理的で適正な対価が従業員に支払われることが確保されるための強行規定として理解されてきたことを充分に考慮しなければならない。


特に発明が実施された場合に支払われるべき実績補償については、それが実施されているのは必ずしも多くなく(発明協会研究所による平成7年のアンケート結果ではその実施は約25%程度、知的財産研究所による平成15年の企業アンケートによれば、大企業ではかなり実施されているが中小企業ではやはり25%程度となっている。)、しかも、実績補償額には低い上限が設けられることが多かったこと、それらの実態に不満な従業者から複数の訴訟が提起されており、最終的には裁判所が適正な補償金を認定できるという最高裁判決もでているという背景事情にも理解を示した上で、なにが立法事実であるかを見据えて今後の知財立国を目指すために有効な方策を提案すべきである。なお、この問題が労働契約関係も含めて労働法上の検討が必要なことも留意されるべきである。


3.このような観点から、産構審が平成15年10月に公表しパブリックコメントを求めている「職務発明制度のあり方について」(以下「報告書案」という。)について、以下に、報告書案(枠囲部分)を引用しながら意見を述べることとする。

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