ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する意見

2003年7月18日
日本弁護士連合会


本意見書について

意見の趣旨

第1 新設に反対する諮問中要綱(骨子)の条項

1 電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写(要綱(骨子)第五)

当連合会は,当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体からの複写については強く反対する。


2 保全要請等(要綱(骨子)第七)

当連合会は,保全要請等の新設には強く反対する。


仮に保全要請の規定を新設する場合においても,以下の点を修正しない限り,当連合会はその新設に強く反対する。


  1. 保全の必要性(通信履歴が滅失又は改ざんに対して特に弱いと信ずるに足りる合理的な理由がある場合)を要件とすべきである。
  2. 保全の対象が過去の通信履歴であることを明示すべきである。
  3. 保存期間につき,90日以内とするのは長すぎるので,30日以内とすべきである。
  4. 保全要請は書面にてなされるべきである。
  5. 犯罪捜査のための通信傍受に関する法律にならって,政府は,保全要請 の件数並びにそのうち差押許可状請求まで至った件数,保全要請に係る罪名,保全要請に係る通信手段の種類及び保全要請が行われた事件に関して逮捕した人員数を国会に報告して公表しなければならない。

3 不正指令電磁的記録等作成等の罪の新設等(要綱(骨子)第一)

当連合会は,不正指令電磁的記録等の罪の新設(5類型。未遂を入れると6類型)のうち、作成罪,取得罪及び保管罪の新設については、「実行の用に供する目的」を犯罪的行為を行うために使用する目的であることを明確にするとともに、電子計算機の正当な試験等の場合には犯罪にならないことを明確にする修正をしない限り、その新設に反対する。


第2 改善のため修正を求める諮問中要綱(骨子)の条項

1 わいせつ物頒布等の罪(刑法第175条)の改正(要綱(骨子)第二)

当連合会は,「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も同様とする」との要綱(骨子)について,「頒布」に代えて「公衆送信」の用語を使用するとともに,刑法第174条(公然わいせつ罪)との体系的整合性を考え,刑法175条の2というような形で規定するように修正されるべきであることを提案する。


2 電磁的記録に係る記録媒体の差押えの執行方法(要綱(骨子)第三)

当連合会は,他の記録媒体に複写等して差し押さえることができる場合には電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえができないこと(補充性),被疑事件と関連性がある範囲でしかできないことを要件とすること及びこのような差押えを認める場合に,元の電磁的記録と複写等された電磁的記録の同一性を担保する措置を定めるように修正されるべきであることを提案する。


3 記録命令付き差押え(要綱(骨子)第四)

当連合会は,記録命令付き差押えについて,他の記録媒体に複写等して差し押さえることができる場合には電磁的記録に係る記録媒体の差し押さえができないこと(補充性),被疑事件と関連性がある範囲でしかできないこと及びこのような差押えを認める場合に,元の電磁的記録と複写等された電磁的記録の同一性を担保する措置を定めるよう修正されるべきであることを提案する。


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