国連・女性差別撤廃委員会委員の選任について(要望)
日弁連総第91号
2002年(平成14年)3月27日
内閣総理大臣 小泉 純一郎 殿
外務大臣 川口 順子 殿
内閣府男女共同参画会議議長 福田 康夫 殿
日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡
国連・女性差別撤廃委員会委員の選任について(要望)
日本弁護士連合会におきましては,国連・女性差別撤廃委員会の委員候補者の選任問題につきまして,次のとおり要望いたします。
第1 要望の趣旨
日本政府は,女性差別撤廃委員会の委員候補者の選任に当たり,まず,その選出過程の情報を公開するとともに,その選出手続にNGOも関与できる形をとること,及び広く委員候補者の人材をNGOを含めた国民から求めて選任するよう要望いたします。
第2 要望の理由
日本弁護士連合会は,世界人権宣言にうたわれた性差別なき権利と基本的自由の享有を実現するため,国連女性の地位委員会及び女性差別撤廃委員会の活動を評価し,一層の活動を期待し,支援してきました。そのため当連合会は,1994年1月,「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女性差別撤廃条約」という。)に基づく日本政府の第2回及び第3回政府報告書の審査に当たり,「女性差別撤廃条約の日本における実施状況に関する日本弁護士連合会の報告」を提出し,1999年10月6日に国連総会で採択された女性差別撤廃条約の選択議定書についても,1998年2月に意見書を提出するなどして,女性差別撤廃条約の完全実施及びそのために同条約が効果的手段を持つよう選択議定書の採択を求め,わが国に対する選択議定書の採択を求める活動も続けております。
わが国は,1985年に女性差別撤廃条約を批准しましたが,同条約第17条1項は,「この条約の実施に関する進捗状況を検討するために,女性に対する差別の撤廃に関する委員会を設置する。」と定め,委員会は「徳望が高く,かつ,この協約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。」「委員は,締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし,個人の資格で職務を遂行する。」と定められています。
このように,女性差別撤廃委員会は,政府の代表や代理ではなく,個人の資格で委員会の職務を遂行する委員であるのです。しかし,これまで日本から選出された委員は全員,現職の公務員または,選出直前まで公務員であった者となっています。
条約の実施状況に関する政府報告書の審議についても,自国の現職の公務員または,元公務員が委員としてこれを行うことについては,公正な調査及び審議を期待することは困難と思われ,仮に困難でないとしても公正さに疑問を抱く余地があり,委員会活動の公正さを手続的に担保する必要があります。とりわけ,女性差別撤廃条約の選択議定書が2000年12月に発効しており,女性差別撤廃委員会の委員が,締約国の条約違反についての個人等の通報を受理し,また職権での調査手続を行うことになるため,現職の公務員または,元公務員が委員となって調査及び審査をし,見解や勧告を出すことについては,その公正さの問題は一層大きくなると考えられます。
従って,女性差別撤廃委員会委員及びその委員候補者の選任については,まず,その選出過程の情報を公開するとともに,その選任手続にNGOも関与できる形とすること,及び広く委員の人材をNGOも含めた国民から求めて選出されることが必要です。
さらに,今般,女性差別撤廃条約の選択議定書の発効により,委員会は,個々の事件の通報の審査という準司法的な機能も行うことになります。そのような観点からは,「十分な能力を有する専門家」という選任の指標において,準司法的な審査・判断作業についての経験や能力の有無,並びに準司法的な作業に不可欠とされる中立性や独立性を確保できる人物であるかどうか,が十分に考慮されなければならないことは言うまでもありません。
よって,要望の趣旨のとおり要望いたします。
なお,国連事務総長及び女性差別撤廃委員会議長に対しましても,別紙の とおりの要望をしていることをお伝えいたします。
以上
別紙
HR2/6/2001
2002年3月27日
国連事務総長 殿
女性差別撤廃委員会議長 殿
日本弁護士連合会
会長 久保井 一匡
国連・女性差別撤廃委員会委員の選任について(要望)
日本弁護士連合会におきましては,国連・女性差別撤廃委員会の委員の選任問題につきまして,次のとおり要望いたします。
第1 要望の趣旨
国連事務総長は,女性差別撤廃委員会の委員選出選挙に当たり,同委員会委員の候補者リストの提出要請に際しては,各条約締約国に対して,その選出手続につき,NGOも関与できる形をとること,広く委員の人材をNGOを含めた国民から求めて選出するよう,周知徹底することを要望いたします。
また,本要望を実現するため,女性の地位委員会及び女性差別撤廃委員会に対しても、本要望があったこと及びこれに対する対応手段をとられるよう,要請願います。
なお,当連合会におきましては,日本政府に対し,女性差別撤廃委員会の委員候補者の選出に当たり,まず,その選出過程の情報を公開するとともに,その選出手続にNGOも関与できる形をとること,及び広く委員候補者の人材をNGOを含めた国民から求めて選出するよう要望いたしております。
第2 要望の理由
日本弁護士連合会は,世界人権宣言にうたわれた性差別なき権利と基本的自由の享有を実現するため,国連女性の地位委員会及び女性差別撤廃委員会の活動を評価し,一層の活動を期待し,支援してきました。そのため当連合会は,1994年1月,「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下「女性差別撤廃条約」という。)に基づく日本政府の第2回及び第3回政府報告書の審議に当たり,「女性差別撤廃条約の日本における実施状況に関する日本弁護士連合会の報告」を提出し,1999年10月6日に国連総会で採択された女性差別撤廃条約の選択議定書についても,1998年2月に意見書を提出するなどして,女性差別撤廃条約の完全実施及びそのために同条約が効果的手段を持つよう選択議定書の採択を求め,わが国に対する選択議定書の採択を求める活動も続けております。
わが国は,1985年に女性差別撤廃条約を批准しましたが,同条約第17条1項は,「この条約の実施に関する進捗状況を検討するために,女性に対する差別の撤廃に関する委員会を設置する。」と定め,委員会は「徳望が高く,かつ,この協約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。」「委員は,締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし,個人の資格で職務を遂行する。」と定められています。
このように,女性差別撤廃委員会は,政府の代表や代理ではなく,個人の資格で委員会の職務を遂行する委員であるのです。しかし,これまで日本から選出された委員は全員,現職の公務員または,選出直前まで公務員であった者となっています。
条約の実施状況に関する政府報告書の審議についても,自国の現職の公務員または,元公務員が委員としてこれを行うことについては,公正な調査及び審議を期待することは困難と思われ,仮に困難でないとしても公正さに疑問を抱く余地があり,委員会活動の公正さを手続的に担保する必要があります。とりわけ,女性差別撤廃条約の選択議定書が2000年12月に発効しており,女性差別撤廃委員会の委員が,締約国の条約違反についての個人等の通報を受理し,また職権での調査手続を行うことになるため,現職の公務員または,元公務員が委員となって調査及び審査をし,見解や勧告を出すことについては,その公正さの問題は一層大きくなると考えられます。
従って,女性差別撤廃委員会委員の選任については,まず,その選出過程の情報を公開するとともに,その選出手続にNGOも関与できる形とすること,及び広く委員の人材をNGOも含めた国民から求めて選出されることが必要です。
さらに,今般,女性差別撤廃条約の選択議定書の発効により,委員会は,個々の事件の通報の審査という準司法的な機能も行うことになります。そのような観点からは,「十分な能力を有する専門家」という選任の指標において,準司法的な審査・判断作業についての経験や能力の有無,並びに準司法的な作業に不可欠とされる中立性や独立性を確保できる人物であるかどうか,が十分に考慮されなければならないことは言うまでもありません。
よって,要望の趣旨のとおり要望いたします。
以上