法科大学院の教育内容・方法等に関する提言及び意見

2002年10月22日
日本弁護士連合会


法科大学院の教育内容・方法等に関する提言

  1. 法科大学院制度は、法律実務家養成制度の中核であり、決していわゆる新司法試験のための受験・教育機関でないことを今一度明確化すべきである。
  2. 法科大学院を中核とする新法曹養成制度は、より良質のかつ多様性のある法曹の養成を目的とする以上、輩出される法曹の総体としては、現在の法曹養成制度において養成される法曹の質より低下したものであってはならない。法科大学院修了者の想定すべき能力レベルについては、単に新司法試験合格レベルというようなものではなく、理念の異なる現行制度との単純比較は困難であるが、イメージ的には少なくとも現行司法研修所前期修習修了者と同程度の法律実務家としての基礎的な考え方及び技能を有していること、選択したその他の分野についても実務の中で鍛えていく前提となるだけの基礎的な知識・技能を習得していることが必要である。
  3. いわゆるバイパスルートについては本来法科大学院制度の補完的なものであるべきであり、したがって予備試験で試される能力基準は、法科大学院修了者に要求される上記Ⅱ程度の能力の習得の有無であるべきである。
  4. 法科大学院での教育は、単なる受験用法律知識の習得ではなく、法律実務家として必要な「考え方を鍛える」ための教育であり、また問題解決に必要な法律知識、事実探求・証拠収集の技能、交渉能力、法文書作成能力、及び法曹倫理等の習得のための教育であることを明確にすべきである。
  5. 法科大学院は、そのような能力を身に付けた学生のみが進級し、卒業できるものでなければならず、各法科大学院はその能力を未だ身に付けていない学生を徒に進級・卒業させないだけの厳しさを持たなければならない。
  6. 法科大学院における教育方法については、何よりも学生の主体的参加が必要であり、双方向、多方向の教育方法が求められる。具体的授業方式としてケースメソッド、プロブレムメソッド、対話型講義方式等いずれの方式を採用するかは当該対象科目の特質に応じるが、少なくとも予習もしてこない学生に概説書の内容を概説するようなものであってはならず、その意味で新たな教育文化を創りあげるとの意識変革が必要である。
  7. 法科大学院における教員は、研究者教員にせよ、実務家教員にせよ、担当科目について教材作成(改訂)を行う意欲と能力が必要である。そのためには、研究のための研究会ではなく、教えることを目的とした研究会を立ち上げ、これに参加するような仕組み作りが必要であり、日弁連、法曹関係関連諸団体、学会等は、このような仕組み作りに協力すべきである。

以上