「裁判員制度」の具体的制度設計にあたっての日弁連の基本方針

2002年8月23日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

国民の司法参加を実現し、司法の国民的基盤を確立することは、今次の司法改革の目玉ともいうべき最も重要な柱である。司法制度改革審議会は、そのための新たな制度として「裁判員制度」の導入を提唱したが、その導入に当たって最も肝心なことは「広く一般国民が、裁判官とともに責任を分担しつつ協働し、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与することができる」制度とすることであり、適正・充実した審理を実現するため刑事手続を抜本的に改革することが不可欠である。


日弁連は、検討会の審議が進行している状況において、裁判員制度の具体化、立法化に当たってとくに次の事項に重点を置いて取り組む。


1 裁判員の数は裁判官の3倍以上とすること

裁判員は一般国民から無作為抽出で選任されるものであるから、裁判員が主体的、実質的に関与し、市民の多様で豊かな感覚を反映するためには、裁判官よりも裁判員の数を相当多くする必要がある。


2 直接主義、口頭主義を徹底すること

一般国民が審理に関与するためには、証拠調は、諸外国で行われているように、原則として調書ではなく法廷における尋問により心証を取る方式で行われるべきである。このためにも、審理の進め方や弁論等についても、一般国民にわかりやすい形に改める必要がある。また、伝聞法則の厳格化、捜査の可視化も不可欠である。


3 評議、評決におけるルールを確立すること

評議は、裁判員の主体的、実質的関与を確保するために、裁判員の意見を最大限引き出すようなルールを定める必要がある。


また、評決についても、「裁判官又は裁判員のみによる多数で被告人に不利な決定をすることはできないようにする」との原則に立って、厳格な要件を定めるべきである。


4 完全な証拠開示と十分な準備期間を確保すること

公正な裁判を実現するためには、原則として全ての証拠が公判前に開示され、それを検討し立証の準備をするための十分な準備期間が保障される必要がある。


5 身体拘束制度を抜本的に改革すること

被疑者、被告人の防御権を十分保障するためには、保釈(起訴前・後)の原則化等勾留制度の改革や刑事訴訟法39条3項の削除をはじめとした接見交通権の実質的保障の確保等が必要である。