商法等の一部を改正する法律案要綱案に対する意見

2001年12月19日
日本弁護士連合会


  • 商法等の一部を改正する法律案要綱案(第二次案の二)に対する意見
    • 第一  種類株主の取締役等の選解任権
    • 第二  株券失効制度の創設
    • 第三  所在不明株主の株式売却制度等の創設
    • 第四  端株等の買増制度
    • 第五  株主提案権の行使期限の繰上げ等
    • 第六  株主総会等の特別決議の定足数の緩和
    • 第七  株主総会招集手続の簡素化等
    • 第八  取締役の報酬規制
    • 第九  大会社以外の株式会社における会計監査人による監査
    • 第十  会計監査人の会社に対する責任についての株主代表訴訟
    • 第十一 現物出資、財産引受及び事後設立の目的たる財産の価格の証明
    • 第十二 資本減少手続等の合理化
    • 第十三 外国会社
  • 商法等の一部を改正する法律案要綱案(第二次案の一)に対する意見
    • 第一株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律上の大会社についての社外取締役の選任義務
    • 第二  経営委員会制度
    • 第三  商法特例法上の大会社の利益処分案等の確定等
    • 第四  委員会制度及び執行役制度の導入
  • 商法等の一部を改正する法律案要綱案(第一次案の三)に対する意見
    • 第八  商法特例法上の大会社についての連結計算書類の導入
  • 商法等の一部を改正する法律案要綱案(第三次案)に対する意見
    • 第十四 計算関係規定の省令委任

はじめに

法務省の法制審議会は、先に同会が公表した「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」に掲げられていた検討項目のうち、今国会で成立した株式制度の見直し、会社関係書類の電子化等を除く他の検討項目につき要綱案として検討中である。


当連合会は、先に公表された中間試案について、本年6月16日付で意見書を提出しているところであるが、今回の要綱案には、中間試案において、特に改正が提案されていなかったもの及び中間試案の内容が変更されたもの等があるので、改めて、要綱案の第二次案の二、第二次案の一、第一次案の三の順に下記のとおり意見を述べる。(なお、第三次案に対しては第十四計算関係規定の省令委任についてのみ意見を述べることとする。)


商法等の一部を改正する法律案要綱案(第二次案の二)に対する意見

第一 種類株主の取締役等の選解任権(中間試案第四)
意見

基本的に賛成。


但し、一2の規定(取締役等の選解任権がない株式の発行数・発行比率を発行済株式の2分の1以下にするという規定)は、やや疑問ではある。しかし、議決権制限株式に関する発行規制と画一的に規定するという意味では、やむを得ないかも知れない。


なお、法令又は定款に定める員数の取締役を選任することができない場合の定め(五)を置くことには賛成であるが、「取締役を選任すべき種類の株主が存在しないとき」の意義や「定款の定めを廃止したものとみなす」の意義については、さらに明確化が必要なのではないかと考える。


さらに、種類株主によって選任された取締役等について、定款変更時に任期満了とする規定(七)については、これを支持する意見が大勢であったが、疑問も提出された。


理由

一.定款上株式の譲渡に制限を置く会社(「譲渡制限会社」)においては、株主間の結束が強い(資本の結合が強い)ので、専ら出資者間の利害に関わる事項に関しては、株主自治に委ねる場面を多くしてよいという考えから、種類株式の発行及び種類株主の権限の多様化の一環として、その取締役等の選任権及び解任権について、種類株主のみの意向を反映することができる規定を商法中に置くことについて、賛成する。監査役の選任及び解任に関しても、同様な観点から、種類株主のみによって選解任される者を設けることは、定款の定めによって行う以上、これを認めてよいと解される。譲渡制限会社等閉鎖性の高い会社においては、株主間契約によって、また、株主間の力関係で、特定の株主は取締役を送り込む代わりに監査役の選任で足りるとする場合があるからである。


また、特定の種類株主によって選任された取締役又は監査役であっても、会社全体及び株主全員に対して責任を負うことに変わりはないので、当該種類株主総会による解任の場合(四1)以外の解任の途を設けたこと(四4)、但し、裁判所への解任請求は選任権者である種類株主(総会)による解任が否決された場合であること(四4但書)も、その趣旨によるものであるから妥当である。


二.しかし、譲渡制限会社において、取締役等の選解任権がない株式の発行数・発行比率を発行済株式の2分の1以下にするという規定(一2)を置くことにどれほどの意味があるかは疑問である。


配当に関する議決権に関する規定とも関係するが、取締役会ではなく株主総会が配当を決するものとすれば、また、転換条件(配当がない決算期の株主総会においては、選解任権は普通株式と同様になるとすればよい)にもよるが、それらの条件が不利なものであれば、これを引受ける出資者(種類株式引受人)がいるだろうか、疑問である。譲渡制限会社において、取締役等の選解任権がない株式の多寡によって、会社債権者の権利が左右されるということにもならないのだから、その発行については、これに規制を加える意味はあまりないのではないか、あるいは、そこまで規制しなくてもよいのではないか、と思われるのである。


しかし、株主の根本的権利である、配当金受領権や取締役等の選解任権に関する規制に関しては、画一的明快な規定がよいという考えによれば、譲渡制限会社にあっても、取締役等の選解任に関する議決権のない株式の発行規制を設けるのは、やむを得ないものということになろう。


三.第一の五によれば、法令又は定款に定める員数の取締役を選任することができない場合、即ち、法令又は定款所定の定員に不足することになった場合に欠員となった取締役等が特定の種類株主の選任によっていた場合、その後任者、補欠者の選任を行うべき種類株主がもはやいなくなったときには、当該種類株主の取締役等の選解任権に関する定款の規定は、「廃止したものとみなす」とされている。これはそのような場合には、他の株主がその選任(補欠)を行うことができるものとするものであり、妥当である。


この場合、当該「定款の定めを廃止したものとみなす」とされるのは、単なる一時的失効ないしは効力停止ではないと解されるので、会社が再度そのような種類株式を発行しようとするときは、さらに定款を変更してその旨の規定を置くことを要するものと考えられる。


但し、当該種類株式を発行会社が自己株式として保有し消却していない場合や、株主総会において議決権を行使できない子会社等がこれを保有している場合には、「法令又は定款に定めた員数に足りる取締役を選任すべき種類の株主が存在しないとき」に当るのかという疑問が生じうる。即ち、そのような場合であって、特に定款上定められた当該種類株式の授権株式数に残余がある場合には、定款変更決議を要せず残枠内で再度発行することができるとも言えそうであるし、かつ、自己株式として保有するものや子会社等が保有するものを譲渡して種類株主を創設することも可能であると解されるから、そのような場合には「定款の定めを廃止」するのが株主の意思に合致するのか疑問である。さらに、定款上定められた当該種類株式の授権株式数に残余がある場合にも同様に、株主としてそのような発行枠をもはや使用して増資を行う意思がないことを意味する「定款の定めの廃止」を一律に規定することでよいか、なお疑問が残る。


四.第一の七によれば、定款の定めを廃止した場合(譲渡制限の廃止と取締役等の選解任権に関する種類株式の発行に関する定めの廃止の場合がある)、種類株主によって選任された取締役の任期は、定款変更の効力が生じたときまでとする(当然任期満了となる)とされているが、当該種類株主の利益代表としての取締役であること、他の株主の信任を得ていないこと及び定款変更の効力が生じた場合には当然任期満了となる旨を承知で就任することになることから、これでよいとする意見が大勢を占めた。


しかし次のとおり疑問とする意見もあった。譲渡制限会社であって種類株主に選任された取締役等であっても、その地位や権限、責任は、すべて、他の取締役等と異なるところはなく、したがって、譲渡制限が撤廃された後も、あるいは、種類株式が廃止された後も、そのような定款変更によって任期が短縮される必然性はないのではないかと考えられる。取締役等と会社との関係は委任契約であるが、任期の途中でこれを打ち切れば、原則として損害賠償の問題が発生する。「委任関係は定款変更によって一律に打切られる」ということを法定する必要はないのではないか(後任者への引継ぎまでや、一定のプロジェクト終了までは引き続きやってほしいという場合等は、改めて、再任のために株主総会を開かなければならないが、常にそのようにしなければならないというのは窮屈であるから)、疑問がある。


第二 株券失効制度の創設(中間試案第七)
意見

前回中間試案に対する意見において指摘した懸念について、a.株券喪失登録の日から1年後を失効の日としてたこと(六1)、b.喪失登録申請時の提出書類に関する規定を設けたこと(一2)、c.株主名簿上の登録者(登録質権者を含む)等への喪失登録の通知(二2)、d.株券所持人による喪失登録抹消申請(五1)及びその申請があったことの株券喪失登録者への通知(五4)、並びに、その2週間後の喪失登録の抹消(五5)などの手続規定を整備したことは評価できる。


商法230条の規定(公示催告、除権判決)は削除されるが(八)、上記株券喪失登録後の善意取得者の権利については、解釈が分かれるかもしれない。しかし、これについては、商法の規定で直接は触れないで解釈に委ねて良いであろう。


第三 所在不明株主の株式売却制度等の創設(中間試案第八)
意見

賛成。


通知や催告が届かない場合であっても、「配当金を振込で受領することで満足している株主や登録質権者がいる」ことは、当連合会の前回中間試案に対する意見の中でも触れたところであるが、今回「調査したところ、このような株主が相当数に及ぶことが判明した。このように配当金を受領することだけで満足している株主の株式を当該株主の意思によらずに売却することは相当ではない」から、継続して5年間、通知・催告が到達しないだけでなく、「配当金の送金もできない株主に限定して、その株式を売却することができることとし」たものであって(第一次案の三、第三の一2補足説明参照)、妥当である。


第四 端株等の買増制度(中間試案なし)
意見

特に異論はない。


第五 株主提案権の行使期限の繰上げ等(中間試案第九)
意見

一、二とも、賛成。


なお、繰上げの必要性は多数の株主がある大会社に限られるのであって、対象会社を限定すべきではないかとの意見もあり、慎重に検討されたい。


第六 株主総会等の特別決議の定足数の緩和(中聞試案第十)
意見

賛成。


ただし、定足数の緩和により、発行済株式総数の9分の2以上の株主の賛成で会社の重要事項が決議される結果となることから、反対意見もあった。


第七 株主総会招集手続の簡素化等(中間試案第十二)
意見

一. 株主総会招集手続の簡素化


賛成。


二. 株主総会招集通知の発出期間の短縮


賛成。


中間試案に対し株主総会招集通知の発出期間の短縮の対象会社について譲渡制限会社に限定すべきであるとの意見を付していたところであり、賛成。定款変更の要件について検討する必要がある。


三. 書面等による株主総会決議


賛成。


総株主の同意を得る前提としての議案の説明方法、議案の賛否、議案の修正の可否、決議の成立時期など検討する必要がある。


注 電話会議の方法による取締役会等


多数が参集する取締役会で電話会議によることは、現実の場面では出席者が面前にいないために発言の機会を捉えることが難しく実施が難しいとの意見があった。テレビ会議システムの利用などを検討すべきである。このような方式を認めるとしても、取締役会には取締役が一堂に参集するのが原則であり、取締役が海外にいる場合など正当な事由のある場合に限定すべきであるとの意見が強かった。


いわゆるチャットの方法による取締役会については,テレビ会議や電話会議とは異なり取締役が各自のパソコンで意見等を入力する必要があり、ロ頭での意見交換、テレビ会議や電話会議と比べると十分な討議が行われにくいという意見が強く、消極的な意見が強かった。


第八 取締役の報酬規制(中間試案第十三)
意見

賛成。


取締役の報酬について書面等による株主総会決議がなされた場合、総会を開催しないで総会決議があったものとして取り扱われることになり、総会の招集通知も発しないものとされている。この場合には取締役の報酬につき、理由の開示を書面化するなどの方途を検討すべきである。


現在の取締役の報酬決議が報酬総額の上限を決議するにすぎないことから、本要綱案の補足説明が、「具体的な算定方法」,「具体的な内容」は,取締役の総枠としてのものであれば足りるという前提で記載しているものであって,個人別の具体的な算定方法等まで株主総会で決定しなければならないという趣旨ではない、としていることは現状からみてやむを得ないとも考えられる。しかし、取締役の報酬・賞与についても支給総額については情報を開示しようとする動きがあるなかで、安易な現状追認となり会社の情報開示が一層消極的なものとなることが危惧される。


第九 大会社以外の株式会社における会計監査人による監査(中間試案第十六)
意見

一.賛成。


二.中間試案については、商法特例法第18条及び第19条、並びに第十五、第二十一の準用は反対するとの意見を付していたものであり、本要綱案についても、監査役3名以上からなる監査役会の設置を強制する商法特例法第18条、19条を適用するとされている点については反対。


第十(会計監査人の会社に対する責任についての株主代表訴訟)、第二次案の一の第三(利益処分案等の確定等)の適用については賛成する。


なお、社外取締役の選任義務(中間試案第十五)、連結貸借対照表及び連結損益計算書作成(中間試案第二十一)の準用を除外したことは賛成する。


第十 会計監査人の会社に対する責任についての株主代表訴訟(中間試案第十七)
意見

(乙案)の採用に賛成


先般成立した「コーポレート・ガバナンス法案」と平仄を合わせる必要があり、会計監査人の会社に対する責任について,同法案における取締役の責任限定と類似の責任限定を行うべきである。


責任限度の定めについては、代表取締役に準じて会計監査人が会社から受けた報酬の6年分に相当する額を基準とする見解が多かった。監査役についての規律にあわせるのであれば2年となるが,それでは会計監査人の責任を限定し過ぎたことになってしまうとの意見が多かった。


第十一 現物出資、財産引受及び事後設立の目的たる財産の価格の証明(中間試案二十三)
1. 現物出資等について弁護士等の証明の制度と検査役調査制度との関係
意見

検査役調査制度も存置し、両者を選択的な制度とすることは当連合会の意見と同一であり、かかる修正には賛成。


2. 証明者の欠格事由について
意見

基本的には賛成。


ただし、代表社員が業務停止以外の欠格事由に該当する場合であっても「社員の半数以上」との要件にあたらないことをもって当該法人について欠格事由なしとしてよいかどうかは、検討の余地があるように思われる。例えば、社員の「人数」ではなく「出資額」の半数以上という要件が考えられる。


3. 証明を行った弁護士等の財産価格填補責任を過失責任と位置づける考えについて
意見

当連合会の意見と同様であり賛成。


4. 証明を行った弁護士等の財産価格填補責任に関し、過失の証明責任を転換している点について
意見

賛成。


ただし、例えば「その証明をした当時における合理的な評価額が定款に定めた価格に著しく不足するものでなかったこと」の証明など、無過失の証明方法を例示すべきである。


理由

財産価格填補責任を過失責任とする場合、責任追及者たる会社が証明を行なった弁護士等の過失を具体的に証明することは相当困難であり、証明責任の転換については一応賛成。


しかしながら、「不存在の証明」の性質を有する無過失の証明は、証明すべき事由が広範となりがちであり、現実には極めて困難であり負担が大きいというのもまた現実である。


したがって、かかる現実を直視して、当事者間の立証負担の公平を実質的に図るべく、無過失の立証方法について具体的に例示する必要があると考える。


この点、弁護士等は、証明の時点における事実を総合的かつ多面的に検討して価格の証明を行なうのであるから、当該証明の時点における事実に基づいて合理的に算出された評価額が定款に定められた価格に著しく不足するものでなかった場合には、注意義務がつくされているものと推定されるべきである。


そこで、例えば、「その証明をした当時における合理的な評価額が定款に定めた価格に著しく不足するものでなかったことその他その任務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したとき」のような規定方法が考えられる。


5. 証明を行うことができる者に税理士を加えるかどうかについて
意見

積極的に賛成はしない。


本証明制度が、裁判所選任の検査役による検査に代えることができるものである点及び会社法上の制度である点からすれば、裁判実務に精通している弁護士及び弁護士法人並びに会社の監査実務を執り行う公認会計士及び監査法人が証明適格者として最もふさわしいものと考える。


6. 証明の対象となる財産が不動産である場合について、不動産鑑定士の鑑定評価をも得なければならない旨の明文の規定を設けるかどうかについて
意見

賛成。


現行の不動産鑑定士による鑑定が一定の成果を上げており、また、これを排除しなければならい弊害も存在しない。


第十二 資本減少手続等の合理化(中間試案第二十七)
意見

賛成。


第十三 外国会社(中間試案第二十八)
意見

賛成。


なお、中間試案に対する当連合会の意見においても述べたところであるが、外国会社の国内営業所の設置義務の廃止については、その必要性が真に存在するのか疑問であり、むしろ、インターネットの普及に伴い、容易に国境を越えてビジネスができる現在及び将来の環境を考えると、国内営業所の設置義務の必要性は高まるとして反対する意見がなおも相当程度存在することを付記しておく。


商法等の一部を改正する法律案要綱案(第二次案の一)に対する意見

第一 株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「商法特例法」という。) 上の大会社についての社外取締役の選任義務(中間試案第十五)
意見
  1. 社外取締役の義務化に賛成。
    先般の中間試案につき、社外取締役を義務化すべき対象会社を、全ての商法特例法上の大会社とするのではなく、より限定すべきであるとの付帯意見を付していたところであり、本要綱案が、大会社のうち譲渡制限会社を除外することとしたことに賛成する。
    なお、審議中であった「コーポレート・ガバナンス法案」が成立し、社外取締役の責任の軽減が認められることとなったことから、社外取締役の選任を義務づける環境が整備されたといえる。
  2. 社外取締役の要件(資格)については、賛成。
    社外取締役の要件に,当該大会社又はその子会社の執行役であったか,又は現に執行役である者を社外取締役に該当しないことを付加したことについては賛成する。
  3. 社外取締役の責任を軽減すべきであるという趣旨には賛成であるが、その軽減する規定の方法については、第266条第2項及び第3項の適用を排除すべきかについて見解が分かれた。

第二 経営委員会制度(中間試案第十四)
意見
  1. 経営委員会制度の導入については、賛成する。ただし、経営委員会を導入した場合、現状の常務会等と同様の事実上取締役会の上位に位置する機関となる可能性があり、単なる常務会等の追認となることを理由に反対する見解があった
  2. 対象会社を、大会社で取締役の数が十人以上のものに限定する必要性があるかについては、経営委員会を導入する会社の取締役の員数を法律で一律に限定する必要はないとして、疑問がある。
    (ただし、取締役会による迅速な意思決定に支障を生じているという実情からみて取締役の員数による制限をすべきであるとする見解もあった。)
  3. 中間試案の時点で、経営委員会の委員につき取締役会が解任権限を有すること、解任理由の要否等を明記すべきであるとの見解があったところである。本要綱案では、経営委員会の設置が、取締役会の決議によることが明確化され、経営委員会の委員の選任解任も同条項に含めて解することができ、賛成。
  4. 経営委員会の構成員数については、賛成。ただし、経営委員会にも社外取締役を1名以上入れるべきではないかとの意見があった。
  5. 経営委員会に意思決定を委ねることができる事項については、本要綱案では「商法第二百六十条第二項各号に掲げる事項」とされている。しかし、会社の業務執行を機動的に行うという趣旨を実現するという観点からは、その範囲に限定する理由は乏しく、定款および取締役会決議などでその権限の範囲を拡大することを認めるべきではないかと考える。
    ただし、経営委員会の権限事項が広汎なものとなることから、経営委員会の専断的意思決定による暴走に歯止めをかける必要性もある。その意味で本要綱案が、経営委員会の権限を「商法第二百六十条第二項各号に掲げる事項」に限定したとすれば、制限としては誠に不十分といわざるを得ない。立法的には経営委員会の決定に対し、取締役会で反対意見を述べた取締役・監査役に執行を差止請求できる権限を認めるか、社外取締役に経営委員会への出席権・意見陳述権を認めるべきであるとの意見があった。
  6. 読み替え規定については、賛成。
    経営委員会の招集について,第259条第1項本文のみを準用することに賛成。
  7. 経営委員会と代表取締役との関係(再委託の可否、可能である場合の範囲、報告義務の有無等)については、なお明確でない。
    経営委員会を設置したこと及び経営委員会への委託事項については、登記事項とするものとする中間試案の考え方を維持すべきである。

第三 商法特例法上の大会社の利益処分案等の確定等(中間試案第十八)
意見
  1. 大会社における利益処分案等の確定についての本要綱案の規定は賛否両論のあるところであるが、本要綱案については慎重意見が多かった。
    本要綱案全体をみた場合、会社経営の迅速性・機動性・柔軟性の観点から経営委員会の制度、委員会設置会社の執行役制度などが導入され、業務執行にあたる取締役の権限が一層強化されることになるが、その反面として株主の会社経営に占める地位が弱くなってしまうことが予想される。株主保護の観点からは、自ら受ける利益を決定する利益処分案の確定まで、取締役に委ねることが望ましいか問題であるとの指摘がなされた。
    定時総会の承認があったとみなす時期を明示した点については賛成。
  2. 自己株式の買受けに関する特例は、大会社における利益処分案の確定について株主総会の承認があったものとみなされる場合について、取締役会の決議により自己株式の取得を認めるものである。この点については、大会社における利益処分案の確定についての本要綱案の規定に賛否両論のあるところであり、この規定にも議論がなされた。
    元来株式消却特例法により取締役会決議で認められていた自己株式の消却が平成13年商法改正で同法が廃止されたことから、かえって規制が厳格化されたとの評価があったところであり、自己株式取得規制の一般的規制のあり方と関連して検討すべきであるとの意見が多かった。
  3. 大会社における取締役の任期についても、1の見解と関連して賛否両論があった。
    大会社につき利益処分案の確定に定時総会の承認を求めることを要しないとする要綱案に反対する立場からは、取締役の任期の短縮にも反対する。

第四 委員会制度及び執行役制度の導入(中間試案第十九)
意見

一. 指名委員会、監査委員会及び報酬委員会(以下「各委員会」という。)制度並びに執行役制度の採用


  1. 各種委員会制度及び執行役制度の採用が、選択制とされており賛成。
    社外取締役を中心に構成される各種委員会を設置して取締役会の監督機能を強化し、執行役に業務執行を決定させることで、業務の効率性を高めること等の理由は相当である。各種委員会制度及び執行役制度の導入は会社内部の問題であり、その会社の自主的経営判断を尊重するのが建前であるというべきである。
  2. 本要綱案は、「定款をもって,第四に規定する特例の全部の適用を受ける旨を定めることができる」とし、各種委員会制度及び執行役制度を一体のものとして導入するものであり、賛成。
  3. 本要綱案は、対象会社を大会社と規定するが、各種委員会制度及び執行役制度の趣旨である取締役会の形骸化等の事情は、必ずしも大会社に限られないことから、対象会社を一般の会社に拡大すべきであるとの見解があった。
  4. 委員会等設置会社に特別の商号を付するかについては、この制度を採用した会社を識別する商号、呼称が必要とまではいえない。
  5. 中間試案では、委員会等設置会社においては、監査役制度が任意化されていたが、本要綱案では監査役制度が廃止されることとされていることについては、賛成。
    実際に委員会等設置会社で監査役を存続させる可能性は乏しいと考えられるし、監査役と監査委員会との二重監査の必要性に疑問があるだけでなく、徒に会社の組織を複雑化させ実務上の混乱を生じさせないために、監査役の廃止が望ましい。

二. 委員会等設置会社における取締役会及び取締役


  1. 各種委員会を設置した場合の取締役会の権限を法律で明確にしておく必要性があることから、基本的に賛成。取締役会の具体的権限については、なお検討を要する。
  2. 取締役は,委員会等設置会社の業務を執行することができないものと規定することは、各種委員会・執行役を設置した場合の取締役会の権限から当然である。

三. 各委員会


1.(一) 各委員会の権限


  1. 指名委員会の権限については、賛成。
    指名委員会の権限が議案の内容の決定とされ、「推薦」の権限にとどめ取締役会が最終決定することを否定していることについて賛成。
    指名委員会が、執行役(特に代表執行役)の選任の議案についても指名権限を有するとすべきかについては、反対していたところであり、取締役の選任に限定していることにつき、賛成。
  2. 監査委員会の権限については、賛成。
  3. 報酬委員会の権限については、賛成。
    執行役の報酬は報酬委員会に決定権があるが、執行役に意見陳述権を与えるべきである。

(二) 委員会の組織


賛成


※監査委員会に常勤の監査委員(取締役)を置かない場合、現実に業務監査の実効性があがるのか疑問があることから、常勤1名を義務付けるべきである。


※監査委員のうち社外取締役として、親会社の取締役等を排除すべきかが問題があるが、これを排除する必要がないという意見があった。

(三)監査委員の資格


賛成


(四)委員の選任


賛成


2.委員会の運営等


(一) 取締役・執行役の説明義務


賛成


(二) 取締役会の招集権限


賛成


※各委員会を組織する取締役であって当該委員会が指名した者が,取締役会を招集することができるものとすることは、臨時に取締役会に報告の必要がある場合があることから賛成。

(三) 取締役会への報告義務


賛成

(四) 委員会を組織する取締役の費用請求権


賛成

(五) 委員会への規定準用


賛成


3. 監査委員会の権限の行使の方法等


(一)ないし(六)は反対


委員会等設置会社では執行役の権限が強大となることが予想されるため、監査委員会を設置したことで、従来からの監査役監査より業務監査体制が弱体化することは許されない。本要綱案では、監査委員会の権限行使に「監査委員会を組織する取締役であって監査委員会が指名した者」が要件とされており、従来は独任制とされ、他の監査役から掣肘を受けない建前であったにもかかわらず、「指名」が要件とされ、権限行使に制限が加えられることから反対する。


(七)及び(八)は賛成。


4. 報酬委員会の権限の行使の方法等 賛成


(一)ないし(四)  賛成


ただし、取締役の報酬については、お手盛り防止の観点から株主総会決議を要するとされてきたところであり、報酬委員会が取締役及び執行役が受ける個人別の報酬を決定するとしても、お手盛り防止の手段ないし方策が必要であるとの意見が出された。


四. 執行役及び代表執行役


1. 執行役の職務


賛成


2. 執行役の選任・解任等


賛成


  1. 執行役の選任については、賛成。
  2. 執行役の任期を1年とすることは、職務に専念する趣旨および適材を任用するための柔軟な人事という観点から妥当。
  3. 取締役と執行役の兼任を認めることに賛成。取締役と執行役の兼任は、執行機関と監督機関の分離からは問題もあるが、経営の重要事項について決定する取締役会に執行役が参加することは会社の業務執行の意思決定を的確に行うという観点から実務上やむをえない。
  4. 執行役を自由に解任できるとすることは、執行役の業務執行の担当者としての地位から、会社との契約関係(法的地位)について委任契約関係と解されるので当然であるとの意見が多かった。

3. 執行役の取締役会に対する報告義務等


賛成


4. 代表執行役


賛成


なお、執行役制度が導入された場合、現在商法の制度外で実施されている「執行役員」については、取引上の混乱を避ける趣旨で、「執行役」類似の名称の使用禁止が検討されるべきである。「執行役」類似の名称が使用された場合、それによる表見責任が検討されるべきである。


五. 取締役及び執行役の責任


1. 取締役及び執行役の会社に対する責任


(一)


(1)ないし(3) 取締役又は執行役の責任 賛成


(4) 執行役及び取締役の責任の減免については,先般成立した「コーポレート・ガバナンス法案」と平仄を合わせるべきであり、執行役の責任については社内の取締役に準じ報酬年額の4年分、代表執行役は報酬年額の6年分を免除の下限とすべきである。

(二)


(1) 執行役の違法配当責任 賛成。


(2) (1)の規定により執行役の負う義務の免除について準用するものとすることに賛成。

(三)


(1) 利益供与禁止規定違反による責任 賛成


(2) (一)の(4)の規定は,(1)の規定により取締役又は執行役の負う義務の免除について準用するものとすることに賛成。

(四)


(1) 自己取引による責任 賛成


(2) 免除決議 賛成


2. 取締役及び執行役の第三者に対する責任


(一)ないし(三) 賛成


六. 計算書類の確定の方法


意見


賛成


七. その他の規定の整備


意見


賛成


商法等の一部を改正する法律案要綱案(第一次案の三)に対する意見

第八 商法特例法上の大会社についての連結計算書類の導入
1. 作成すべき連結計算書類に連結剰余金計算書を加えた点について
意見

証取法上の連結財務諸表による開示が成果を収めている点を承認し、よりこれに近いものを商法上の連結計算書類とするものであり、賛成である。


2. 連結計算書類を作成すべき会社の範囲について
意見

広く大会社と規定し、有価証券報告書提出会社に限定するのを当分の間として経過措置とすることは賛成である。


なお、中間試案に対する当連合会の意見でも述べたとおり、充実した計算書類作成の要請は大会社に限らないのであるから、近い将来においてはその範囲を中会社、最終的には広く株式会社全てに拡大する方向での検討が継続されるべきであると考える。


3. 決算期が年2回以上ある大会社に関する経過措置について
意見

賛成。


理由

毎決算期に連結計算書類の作成義務を課して、タイムリーディスクロージャーを徹底しようとしている点は非常に評価できるところである。この経過規定は、有価証券報告書提出会社の連結決算日及び連結会計年度(連結財務諸表規則3条)に配慮してスムーズな移行を図るものと考えられ、賛成である。


4. 取締役の連結計算書類の提出期限を定時総会の会日の6週間前までとし、かつ監査役会及び会計監査人の同意により延長できるとする点について
意見

反対。


理由

中間試案においては、この提出期限を定時総会の8週間前までとし、同意により延長することができるとされていた。この中間試案に対し、当連合会は、「監査役及び会計監査人の選任のイニシアチブが経営陣に存在するという事実を直視すれば、同意によっても提出期限を延長し得ないこととして、監査に必要な期間を確保し、連結計算書類の適正監査を強く担保すべきである」ことを理由として、前段(8週間前)については賛成、後段については反対の意見を述べているところである。


要綱案における修正は、前段については原則的な提出期限を遅め、その上で同意による延長を存置するものであり、中間試案よりも更に後退したものといわざるをえない。修正理由は「実務対応が困難との意見」を容れたとのことであるが、これは監査を受ける側(会社)の意見にすぎない。監査を行なう側(会計監査人)としては、商法上の子会社以外の会社も商法上連結対象とすることが想定されているのであるから、適正監査のために時間を確保する要請は極めて大きいというべきであり、中間試案よりも後退させる理由は存在しないはずである。


なお、真に「実務対応が困難」との実態があるのであれば、招集通知の添付資料の項(11.)で後述するようなものとともに、経過規定で対応するなどの工夫が考えられる。


以上のとおり、改正規定としては、提出期限は定時総会の8週間前まで、延長は同意によっても不可、とすべきであるというのが当連合会の意見である。


5. 会計監査人の連結対象会社に対する報告請求権・調査権について
意見

賛成。なお、適正監査を担保するためには連結対象会社が拒否し得る場合の正当理由については、例示するなどして一定の解釈基準を示す必要性があるものと考える。


6. 連結計算書類についての監査の範囲を会計監査に限定する点について
意見

賛成。


理由

確かに、連結計算書類作成義務化の目的はディスクローズの充実にあり、連結計算書類として作成されるものは、業務監査をも含む適正監査に裏打ちされたものであることが望ましいことは疑う余地がない。


しかし、監査役による業務監査の範囲を現行の商法上の子会社(以下単に「子会社」という。)に対するものを超えて広く連結対象会社まで拡大することは、監査役の業務を過大なものとし、本来的な監査業務に支障をきたす可能性があり、また、子会社に該当しない連結対象会社の独立性に対する疑問も生じる。


したがって、これらの調和として、業務監査が及ぶ範囲を現行規定のまま子会社までとして、その余の連結対象会社については会計監査に限るという考えに賛同する。


7. 中間試案における連結対象会社に対する監査役の報告請求権・調査権が要綱案においては削除されている点について
意見

反対。


理由

連結計算書類の子会社以外の連結対象会社に関する部分の監査を会計監査人による監査に限定し、監査役による監査は全く行なわないというのであれば格別、要綱案においても当該部分も含めて連結計算書類の全部を監査役の監査にかからしめており、特に監査役会の連結監査報告書には「会計監査人の監査の方法又は結果を相当でないと認めたときは、その旨及び理由並びに監査役の監査の方法の概要又は結果」や「監査のために必要な調査をすることができなかったときは、その旨及び理由」の記載をすることとなっている(六3(二)及び(三))。


このように、一方では監査役による独自の監査を予定しておきながら、他方で監査役の報告請求権・調査権を規定しないというのでは、監査役の責任範囲が極めて曖昧なものとなる。


したがって、子会社以外の連結対象会社に対する会計監査人の権限と同様の権限を監査役にも認めるべきであると考える。なお、このことは連結監査における業務を会計監査に限るか否かとは別問題であると考える。


8. 会計監査人及び監査役会の連結監査報告書の提出期限を個別の監査報告書の提出期限と異にすることについて
意見

反対。理由は招集通知の添付資料の項(11.)で後述する。


9. 会計監査人の連結監査報告書の記載事項について
意見

監査結果の信頼性を担保するため、会計監査人が子会社以外の連結対象会社に報告請求権・調査権を行使した場合には、その方法及び結果(会計に関する部分のみ)をも監査報告書の記載事項とすべきである。これも「監査の方法の概要」に含まれるとの趣旨であるとしても、別立てで明記すべきである。


10. 連結計算書類を定時総会における報告事項とする取扱いについて
意見

賛成。


理由

計算書類は、利益配当請求権という株主の重要な権利に影響を及ぼすものであるから株主総会の承認手続に服することとなっている。大会社においても監査意見が適法・相当という条件下でのみ報告事項とされるのであって、これらの条件を満たさない限りやはり承認決議を要するものとされている(商法特例法16条1項)。


他方、連結計算書類の作成義務化の趣旨は、専ら株主その他に対するディスクローズという点にあり、現在想定されている連結計算書類においては、連結決算によって利益配当請求権が生じる類のものではない。


したがって、株主の承認決議までは不要と考えられ、一律報告事項とする取扱いには賛成である。


11. 連結監査報告書を招集通知に添付せず、会計監査人の監査結果及び監査役会の不相当意見がある場合にはその内容を総会の現場で報告すれば足りるとの取扱いについて
意見

反対。


理由

連結計算書類について、株主総会に出席しない株主(議決権行使書の提出によって定足数に含まれかつ議決権を行使している株主であっても、現実に総会場に赴かない株主も含む。)が会社から受動的に受けられる情報は、会社(取締役)が作成し、監査役会及び会計監査人に提出したものにとどまることとなる。そして、この連結計算書類について監査役会及び会計監査人による連結監査報告書の内容を知ることを欲する場合には、株主は、閲覧し、公告に意を払い、あるいは有価証券報告書を縦覧する等、自ら能動的に行動しなければならないこととなる。


かかる状況について、現行法において、有価証券報告書を縦覧する等の能動的な行動をせず、受動的な立場に甘んじている限り株主は一切の連結情報を知り得ないという状況にあることと対比して、例え一部であっても受動的なままで情報を享受できるという点を捉えて、その範囲で評価することも不可能ではない。


しかし、不適法意見あるいは相当でない旨の意見が付された場合を想定すると、受動的な株主は、不十分な情報のみを積極的に受領させられ、かつ縦覧等の能動的な行動によって完全な情報を獲得しようという意欲を減退させる効果をも生ぜしめることと相俟って、改正の眼目である「企業情報のより積極的な開示」という目的に照らし、かえって有害な事態を招く可能性があるといわざるをえない。


したがって、招集通知にこれらの連結監査報告書の添付をなさしめるべきと考える。また、このことの当然の帰結として、連結監査報告書の提出期限も計算書類と同様とすべきと考える。


ただし、監査証明が要求される証取法上の連結財務諸表について、当初は個別の財務諸表の提出期限から1ヵ月遅れの事業年度経過後4ヵ月以内とされていたものを、平成元年に有価証券報告書と同時(すなわち事業年度経過後3ヵ月以内)に提出すべきものとされ、さらに平成4年には有価証券報告書に組み入れて開示されることとなったという歴史的経緯及び実務に照らし、上記のような制度導入について速やかに対応することは、相当の困難が生じることは想像に難くない。


したがって、改正後一定期間については、経過措置を設けることもやむをえないものと考える。ただし、その場合であっても、上記のような弊害に鑑みれば、株主に対して、連結監査報告書を事後的に送付するとか、少なくとも不適法意見あるいは相当でない旨の意見が提出された場合に限ってその旨を通知するような制度を付加する必要があるものと思われる。


以上のとおり、改正法の法文上は、連結監査報告書を定時総会の招集通知に添付せしめる規定とし、実務対応への配慮及びこれに伴う弊害防止に関する措置については経過規定をもって対応すべきと考える。


12. 備置について
意見

現行の備置制度が必ずしも十分に閲覧権行使に貢献しているとは考えられないことから、利害関係者がより容易にアクセスできるよう、例えば法務局へ提出させるなどして、情報の作成者及び情報の開示を受ける者以外の第三者機関のもとに確実に備え置かれるような実効性のある制度とすべきである。その場合事務手続の負担等を考え、提出すべき法務局は本店所在地に限定することもやむを得ないことは、既に中間試案に対する当連合会の意見で述べたところである。特に、本要綱案を前提とした場合、上述のように株主は不十分な情報にさらされることとなりかねないのであるから、閲覧権保障の要請は、より一層高まるというべきである。したがって、この点を十分に念頭に置いて、積極的な制度改善が図られるべきものと考える。


商法等の一部を改正する法律案要綱案(第三次案)に対する意見

第十四 計算関係規定の省令委任
意見

反対。


理由

商法第34条の規定が国際的な会計基準と乖離していること、ついては速やかにこれを是正すべきことは明らかである。したがって、株式会社については同条を適用しないものとすることについては賛成である。


しかしながら、上記の乖離を是正する方策として、商法第285条ノ2ないし第287条ノ2の規定を削除したうえで、法務省令に具体的な定めをおくことには反対である。


なぜなら、会計基準について法務省令への委任を行うことに伴い、配当限度額及び中間配当限度額の各算定についてまで法務省令によって定められることとなってしまっているが、根本的な株主権の一つである利益配当の内容について商法本則から導きえない結果となることは大きな問題であると考えるからである。


したがって、会計基準及び利益配当限度額の算定については、いずれもあくまで商法本則において規定されるべきであり、現状是正あるいは今後の国際情勢等の変化に対応する方策としては時期に応じた商法改正をもって行うべきものと考える。


以上