司法サービスの全国展開に関する行動計画

2001年5月8日
日本弁護士連合会


当連合会は、市民のために司法サービスを充実させていくことが司法改革の重要な柱であると認識し、弁護士過疎を克服・解消し、全国で均質の司法サービスを提供する体制を整備するため、当面の具体的な目標として、以下の行動計画を定め、実施する。


  1. 2001年度中に全てのゼロワン地域(地方裁判所支部地域内に弁護士がいないか、または1名しかいない地域)に法律相談センターを設置するとともに、2002年度までに全ての地方裁判所支部地域に法律相談センターを設置し、独立簡裁地域にも可能なかぎり法律相談センターを設置する。
  2. 2002年度中に弁護士過疎地域20ヶ所以上に公設事務所を設置する。
  3. 弁護士定着や公設事務所の開設により、2010年までに、管内人口10万人以上のゼロワン地域に複数の弁護士を定着させるとともに、管内人口が10万人未満のゼロワン地域には同時期までに公設事務所と法律相談センターの充実を図るとともに、弁護士定着を推進する。
  4. 2001年度中に弁護士過疎地域の公設事務所に協力する法律事務所を各単位会に2つ以上、全国で100事務所以上つくり、協力事務所の全国ネットワークをつくる。

2001年5月8日理事会承認


 


行動計画策定の理由

当連合会は、「いつでも、どこでも、だれでも良質の司法サービスが受けられる社会」の実現を目指し、市民のために司法サービスを充実させていくことが司法改革の重要な柱であると認識している。こうした観点から、昨年5月の定期総会で、「司法サービスの全国地域への展開に関する決議」を採択し、第1に、1996年定期総会における「名古屋宣言」の完全実施のため弁護士過疎地域に法律相談センターを設置すること、第2に、当番弁護士制度の質的、量的な一層の充実を図ることや、法律相談センターを必要な地域に開設するとともにその機能を充実させること、第3に、弁護士過疎地域への弁護士の定着を目指すとともに、必要な場所に公設事務所を設置することを、今後取り組むべき課題であると位置づけた。


昨年4月に民事法律扶助法が制定され、全国で均質な司法サービスが提供できる体制の整備が急務であることや、司法改革を一層推進してゆく必要性があることなどを考え、これら3つの課題を果たすため、具体的な目標として4つの行動計画を定め、この計画を達成するため全力をあげて努力することを決意する。


以下、4つの行動計画について、具体的に検討する。


1. 法律相談センターの設置について

1996年5月の定期総会における名古屋宣言から5年の経過を間近に控えた本年4月末日現在、法律相談センターまたは公設事務所が設置されていないゼロワン地域は18地域残存している。この地域の多くについては昨年の鹿児島宣言で確認された名古屋宣言の完全実施に向けて単位会において法律相談センターまたは公設事務所の設置を決定しており、2001年度中の実施計画がないゼロワン地域は、神戸地裁龍野支部、鹿児島地裁知覧支部、旭川地裁名寄支部、旭川地裁留萌支部、高知地裁須崎支部の5地域となっている。当連合会は、ここに改めて2001年度中のゼロワン支部への法律相談センターまたは公設事務所の設置を確認し、1年の遅れを生じても名古屋宣言の完全実施に向けて最後の努力をする必要がある。


本年4月末日現在、ゼロワン地域以外の地裁支部単位で法律相談センターが設置されていない地域は57ヶ所である。法律扶助をはじめ、司法制度改革の中で提起・整備される諸制度は全国均一のサービスを必要とするものが少なからずあり、当連合会の推進する司法改革の観点からも、弁護士会が全ての地裁支部において司法サービスの拠点を持つことの必要性は極めて高い。当連合会は、全国に均質の司法サービスを提供するために、目標時期を明示して、具体的な実施計画を定める必要がある。


また、各単位会において当連合会の行動計画が地裁支部を単位としていることは実情に合わず市民のニーズに十分対応できないとの意見も出されている。当連合会としては、弁護士会において地裁支部単位での対策の完了をもって満足することなく、さらにきめ細やかなサービスの実施のために簡易裁判所管轄単位での弁護士過疎対策の実施についても、その推進を明確に定める必要がある。


2. 公設事務所の設置について

本年4月末日現在、当連合会が関与する公設事務所は、ひまわり基金・九弁連対馬弁護士センター、石見ひまわり基金法律事務所、ひまわり基金・遠野弁護士センター、紋別ひまわり基金法律事務所、石垣ひまわり基金法律事務所の5ヶ所である。その他に設置のための協定書締結済みのものが4ヶ所(北上、宮古、二戸、網走)、協定書未締結であるが、単位会において公設事務所設置を決定しているものが相当数ある。


当連合会としては、弁護士過疎対策として効果が大きく、市民の期待も大きい公設事務所について、その設置の推進を明確に宣言して弁護士過疎対策に全力をあげることを鮮明にする必要がある。


3. ゼロワン問題の解消について

弁護士過疎対策の最終的な解決は弁護士の定着である。弁護士が自由業である以上、ゼロワン問題の最終的解決には大きな困難があるが、司法改革を掲げる以上、当連合会としても、その最終的解決に向けて具体的な計画を定める必要がある。


当面、市民のニーズが強く、定着の基礎があると考えられる管内人口10万人以上の地域について期限を定めて定着の計画を定め、これを全力で実施する過程で人口の少ない地域の定着策を模索していくことが現実的と考えられる。


4. 協力事務所について

公設事務所の設置については、単位会の理解、協力は相当程度進んできており、現実の実施のハードルは公設事務所弁護士の確保にしぼられつつある。公設事務所弁護士を確保し、任期満了による交替が行われる場合の交替をスムーズに実現するために、公設事務所に弁護士を派遣し、また任期満了により異動を希望する公設事務所弁護士の受け皿となる協力事務所が相当数必要となる。当連合会としては、公設事務所の設置・維持・拡充のため、協力事務所をつくり、その支援策も含めて具体的な計画を策定する必要がある。


以上