司法制度改革審議会意見書について

2001年9月7日
日本弁護士連合会


はじめに

司法制度改革審議会(以下、「審議会」という。)は、本年6月12日、2年間にわたる、60回を超える審議、内外の実情視察などの結果を取りまとめ、「司法制度改革審議会意見書-21世紀の日本を支える司法制度」(以下、「意見書」という。)を発表した。


「意見書」は、司法改革の基本理念と方向性を示した上で、司法・法曹・国民がそれぞれ果たすべき役割を明らかにし、「司法制度をより利用しやすく、分かりやすく、頼りがいのあるものとする」(制度的基盤の整備)、「質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹を確保する」(人的基盤の拡充)、「国民が訴訟手続に参加する制度の導入等により司法に対する国民の信頼を高める」(国民の司法参加)という3つの柱で構成されている。


われわれ日本弁護士連合会(以下、「日弁連」という。)は、1990年以来、全国弁護士会と会員の力を結集しつつ、司法改革運動に取り組んできた。とりわけ、1999年7月に審議会が発足してからは、後に述べるように、審議会そのものに積極的に対応するとともに、国民各層との連携を強めつつ、全会あげて司法改革を推進してきたところである。この「意見書」に対する評価は、これまでの運動と実績を踏まえ、あくまでも客観的になされることが何よりも必要である。それは確かな分析をふまえ、さらに一致して「市民の司法」に向けての前進を期するためである。


第1 「意見書」を評価する視点

「意見書」は、総論、各論あわせて118頁の大部なものになっているが、われわれがこれを評価するとき、その視点を確認しておくことが必要である。


まず第一に、その内容を評価するにあたり、日弁連が「司法改革ビジョン」(1998年11月)及び「司法改革実現に向けての基本的提言」(1999年11月)によって示した「市民の司法」、すなわち「市民による司法」および「市民のための司法」をどこまで達成することができるものになっているかという視点に立つことである。


市民は、一方においては、司法に主体的にかかわっていくことが求められているが、今回の「意見書」で、司法の国民的基盤が強化され、国民の司法参加に道が切り開けたかどうか、すなわち「官僚司法」から「市民による司法」への方向が示されているかどうか、また他方、「市民のための司法」を実現するという観点から、「市民が利用しやすい司法」に向けてどこまで具体的改革案が提起されているかを重要な視点として評価すべきである。


第二に、司法改革はこれからも継続していくものであり、われわれは継続していく司法改革の実践者として、「意見書」の方向性を評価する視点に立つ必要がある。


司法改革は、第1ラウンドを終えたところである。内閣に設置される推進体制のもとでの第2ラウンドにおいて、われわれは、「市民による司法」、「市民のための司法」の諸課題を実現するために、引き続き強力な改革運動を進めていかなければならない。そのためには、「意見書」の到達点を固定的・静止的なものとして評価するのではなく、それが上記改革の諸課題についてどこまで踏み込み、何を残したかを冷静に分析し、そこから今後の実現可能性とそのための課題を明らかにし、今後の発展的・実践的な取り組みにつなげていくことが求められている。


第2 「意見書」に対する概括的評価

1. 「市民による司法」は実現されるか

(1) 「意見書」は、司法における国民的基盤を確立するという観点から、法定刑の重い刑事重大犯罪事件に「裁判員」制度を導入することに踏み切った。これは、今回の改革の精神を具体化する重要な成果である。


これまでのわが国の司法は、法律専門家のみの手に握られた司法として、諸外国に例を見ないほど国民的基盤(民主的正統性)が脆弱であった。


この現状に対して対置されたのが、戦前にも、また戦後沖縄でも体験し、その有効性と可能性についても既に一定の検証を経た陪審制実現の要求であった。


裁判員制度は、一定の刑事事件に、選挙人名簿から無作為抽出で選出された国民が、裁判官とともに主体的、実質的に裁判の審理と判決に参加するもので、陪審制を求める広範な国民世論と、国民参加を「評決権なき」参審と一定事件への専門参審制の枠内にとどめようという意見がたたかわされた結果、このようなかたちが提案されるに至ったものである。これは、これからの具体的な制度設計また今後の運用と参加する国民の意識のありようによって陪審制度につながる制度として重要かつ積極的な意味をもつものと考える。


今回の提言では、裁判官と裁判員との比率や評決方法など未確定な部分が残されたものの、裁判員の数を裁判官の数の数倍程度にすることが制度の精神を生かすために重要である。さらに一定の場合に裁判員だけで評決する制度(独立評決)の可能性も残されている。わが国独自の国民参加の制度として、今後も、陪審制の実現を求める市民の運動と連携して、裁判員制度を真の陪審制に近づける努力をすることが、何にもまして緊急の重要課題である。


(2) 日弁連が強く実現を求めた法曹一元制度の実現は、給源の改革、裁判官推薦委員会制度の設置及び人事制度の改革と一体化して、裁判を官僚裁判官制度から解き放ち、司法に国民的基盤を確立する提案であり、「市民による司法」の確立を求めるものであった。


「意見書」は、ただちに法曹一元に踏み切る提言には至らなかったものの、判事補が判事の主たる給源となっている状況を改め、一方で弁護士任官を積極的に推進するとともに、判事補が相当の期間、その身分を離れて、弁護士などの法律専門職を経験する制度を導入すること、特例判事補を段階的に解消していくこと、裁判官の任用についての国民が参加する推薦機関を設置すること、裁判官人事に透明性、客観性を確保する方策を導入することなどの方向を示した。


これは「意見書」が示している「国民のための司法を国民自らが実現し支えなければならない」という理念のもとで、戦後50年、もっぱら官僚制強化の方向で進められてきた司法政策の根幹に転換をもたらすとともに、司法に市民の風を吹き込み、法曹一元制度実現に向けた重要な一歩を踏み出すものである。


それだけに、提言の具体化に向けてその内容を一層明確にするとともに、弁護士任官の積極的推進、弁護士経験のための判事補の受け入れなど、われわれが果たすべき役割と責任は極めて大きいといわなければならない。


2. 「市民のための司法」は実現されるか

改革のもう一つの大きな枠組みは、法曹人口の大幅増加を基盤に司法制度全体の構造を利用者としての市民の立場に立って飛躍的に強化し、三権の中における司法を相対的にも絶対的にも大きなものとし、これを活性化させようとする方向である。


「意見書」は、「司法制度を支える法曹の在り方」を取り上げ、法曹人口の大幅増加を軸として、裁判官、検察官、弁護士等の人的体制の充実と質的改革を提案するとともに、「国民の期待に応える司法制度」を取り上げ、制度面においても、国民に利用しやすくするという観点から、改革の方向といくつかの具体的提案を示している。その方向は、基本的に日弁連が求めていた「小さな司法から大きな司法へ」の要求に合致する。


具体的には、次のとおりである。


(1)A. 「意見書」は、2004年から現行司法試験合格者を1500名に増員し、新たな法曹養成制度の整備状況等を見定めながら、2010年頃には新司法試験の合格者数を年間3000名として、2018年には法曹人口を5万人にする方向を打ち出した。


これに伴い裁判官、検察官や職員を大幅に増員することも明らかにした。


これら裁判官、検察官等の増員については、「意見書」は増員目標を具体的に示すに至らなかったが、第2ラウンドではより大きく具体的な目標値の設定がなされるよう努力すべきである。


さらに、先に述べた裁判官制度の改革も、これまで司法の拡大を阻害し、市民的基盤が欠如した裁判所の官僚的構造に改革のメスを入れることを通じ、「市民のための司法」という側面からこれを評価することができよう。


B. 「意見書」は、弁護士の基本的人権擁護と社会正義実現の役割を明記し、弁護士が司法の基本的な担い手であることを明らかにした。そして、国民各層の強い要求と、日弁連自身の真摯な提案によって、法曹の圧倒的多数を占める弁護士の改革が司法改革全体の基盤になるとの認識のもとに、弁護士人口の増員とあわせて、法律相談の拡充、公設事務所の設置とこれらに対する国または地方公共団体の財政的負担を示唆し、また、法律事務所の法人化、共同化など、市民とのアクセスの拡充と弁護士業務の基盤の充実の方策が具体的に示され、これらのうち法律事務所の法人化は既に立法化が実現した。


さらに、弁護士と弁護士会の国民的基盤を拡充するために、情報の公開、懲戒等の手続の迅速化、透明化、実効化などを求めている。日弁連は、現代社会における弁護士自治のあり方について深く検討し、本年度定期総会での決議の趣旨を体して、国民の理解と支持に基盤をおく弁護士と弁護士会の確立に向け、これらの提言を真摯に受けとめ、その実現に努力すべきである。


C. 「意見書」は、このような人的基盤の強化や、次に述べるような制度改革を支え、これを現実に可能とする法曹を養成するための法曹養成制度の抜本的改革を提言している。


この点については、法科大学院制度(ロースクール)を2004年4月に開校することとして、その制度のあり方について具体的提言をおこなった。これは、これまでの質的にも量的にも限界のある「官」による法曹養成から、大学の自己改革を促し、民間を含めた法曹養成制度に転換することを目指したもので、具体的な制度設計は今後に残されているものの、「市民のための司法」に大きな展望を開くものとして積極的に評価するものである。


(2) 「意見書」は、「国民の期待に応える司法制度」として、市民と司法とのアクセスの強化や、民事、刑事などの裁判の改善、行政に対するチェック機能の強化、労働事件への対応の強化などを提言している。


A. 民事司法制度については、民事法律扶助のさらなる拡大、民事裁判においては、審理の充実、促進の見地から証拠収集手段の拡充、人的基盤の整備などの方向も提起されているが、具体的な提案には至っていない。


また、「審理期間の半減」という目標が掲げられ、「迅速化」の方向が強調されているが、裁判の本来の原則である「適正な裁判」「当事者の納得いく裁判」に関する内容が希薄である。いたずらな「迅速化」によってこの裁判の本来の原則が損なわれることのないようにしなければならない。


さらに、弁護士報酬の敗訴者負担制度の導入については、弁護士会や国民の強い反対の声を受けて原則負担の考えを斥け、一律導入をすべきでないとし、訴訟環境の整備等に十分配慮することとしているが、いまだに導入の方向性を維持している点を批判しなければならず、今後立法過程において市民による訴訟の利用をいささかも萎縮させることのないようにしなければならない。この点での今後のわれわれの取り組みが重要である。


民事訴訟における専門委員制度の導入は、本来の司法参加とは異質のものであることに留意し、適正な訴訟遂行が損なわれることのないようにしなければならない。


特許権及び実用新案権等に関する訴訟事件の東京・大阪両地裁への専属管轄化は、「利用しやすい司法」の理念に反するものであり、適当でない。


B.刑事司法制度については、裁判員制度導入により、司法への国民参加の道をひらいたこと、証拠開示の範囲や時期についての法制化と「調書裁判」の改善の方向性を示した点、取調過程の録音・録画については将来の課題としつつも、取調過程の記録化という最低限の可視化に一歩踏み出した点では評価できる。


また、長年の懸案であった被疑者段階を含めた公的弁護制度の新設を具体的に提案したことは大きな前進である。


しかしながら、裁判員制度の導入についても、事前準備手続以外に、捜査・公判がどのように改革されなければならないのか明らかではなく、さらに裁判体の構成など、具体的な制度設計にあたり、制度の本質にかかわってくる問題が今後に残されている。また、被疑者・被告人の身体拘束に関する問題、すなわち「人質司法」からの脱却や代用監獄の廃止、矯正処遇の改善などについては踏み込みがない。被拘禁者の地位やその処遇について未決を含めて既に法務省と日弁連との間で検討がおこなわれていることを考えれば、なおさらである。さらには新しい公的弁護制度についても、公費の受け皿となる運営主体とその運営について、弁護活動の自主性・独立性を確保する仕組みを構築することなど、刑事司法制度の改革については全般的になお多くの問題が残されている。


C.行政事件に対する対応については、「意見書」において、司法によるチェックの必要性が随所に述べられているにもかかわらず、その具体的改革の方向は示されていない。


労働事件についても、早期、有効な解決が求められているという認識を示してはいるが、労働調停制度の導入提案のほかには見るべきものがなく、参審制の導入、事実上五審制となっている不当労働行為救済のあり方など、今後早急に検討を開始すべき問題が少なくない。


第3 審議会に対する日弁連の取り組み

「意見書」が、以上のような基本的、大局的にみて積極的な改革の方向を示したのは、この間、市民の中に司法改革を求める声が急速に広がり、マスコミ、政党や関係諸団体の積極的な取り組みがあったことによることはいうまでもないが、その中で日弁連も一定の役割を果たすことができたと考える。


(1) 自民党の司法制度特別調査会が1998年6月に報告「21世紀の司法の確かな指針」をまとめて審議会の設置を提言するなど、司法制度改革の動きが現実化するのに対応し、日弁連はいち早く、同年11月に「司法改革ビジョン」を、また1999年11月には「司法改革実現に向けての基本的提言」を、いずれも理事会の全員一致で採択し、日弁連が求める司法改革の全体像を明らかにして対応した。


日弁連が、対置すべき改革像として、法曹一元と陪審制の実現を最重点課題として、「市民の司法」の実現を求め、「小さな司法から大きな司法へ」、「官僚司法から市民の司法へ」などをスローガンとしたことは、現代司法の病理を解明し、改革を促す基本姿勢を定める上で、適切であった。


また、2000年11月1日に臨時総会を開き、法曹人口増員問題について、従前の総会決議を変更し、国民が必要とする数を、質を維持しながら確保することや法科大学院の設置について一定の要件の下に積極的・肯定的立場を表明する決議を採択した。この決議は、日弁連が真剣に市民のための司法改革に取り組んでいる姿勢を内外に示し、その後積極的に司法改革運動を進める上で大きな役割を果たした。


(2)日弁連は、この司法改革を実現することを目的として、内閣に設置された審議会に積極的に対応することを決め、審議会の事務局にも会員を派遣し、日弁連内部における専従的体制も整備し、国民的運動、国民各層との連携を強め、国民、市民との協動を全国的レベルで強化した。たとえば、国民各界、各層に対する働きかけと政権与党を含む各政党、財界、マスコミとも幅広く懇談をかさね、266万人におよんだ司法改革国民署名運動、その時々の情勢に応じた全国的宣伝行動、陪審月間の設定など、司法改革を求める国民運動を発展させ、マスコミを含めて一定の国民世論を作り上げた。


(3)また、日弁連は、審議会に対しては、議事録早期作成・公開、マスコミ公開、裁判利用者アンケート、地方公聴会など、審議会の民主的運営を働きかけた。これがまた市民の関心と司法制度改革要求を増幅させるという相乗効果をも引き起こし、今回の成果につながるものとなった。


第4 審議会後に向けた日弁連の課題

「意見書」が内閣総理大臣に提出され、審議会による司法改革課題の提起という第1ラウンドは終了したが、「意見書」の内容を具体的に立法する第2ラウンドが始まっている。既に本年7月1日に司法制度改革推進準備室が設置され、内閣総理大臣を責任者とする司法制度改革推進本部を整備する動きは始まっており、一刻の猶予も許されない。今回の「意見書」が文字どおり国民にとって望ましい制度として実現しうるか否かは、今後の日弁連あげての運動にかかっていると言っても過言ではない。立法化の段階ではこれまで以上に、国会議員、各政党とともに国民の声と運動が大きな役割を果たすことになるであろう。


(1) 「意見書」で提起された課題の推進と具体化

まず、これからの立法化にあたっては、内容面において、「意見書」で提起された課題のうち積極面をさらに前進させ、不十分な点を改善させていくため、新たな取り組みをする必要がある。


ロースクールについては「意見書」に骨格は提案されているものの、その具体化はすべて今後に残されており、制度設計とともに、2004年の立ち上げに向けて全国でロースクールづくりに取り組まなければならない。さらに、ロースクールを中心として、司法試験、司法修習などプロセスとしての法曹養成のあり方を早急に詰めていく必要がある。裁判官制度の改革、裁判員制度についても、審議会の改革提言を後退させず、さらに前進させるためには、何よりも市民の理解と支援を得て大きな運動を展開することが必要となる。弁護士制度の改革には弁護士会として大きな課題が課せられている。


そして、これらの課題を成功裡に具体化することができるかどうかは、弁護士と弁護士会の取り組みがその成否の鍵をにぎっていることを強く指摘しなければならない。たとえば、裁判官制度の改革にあたっては、弁護士任官を弁護士会がどこまでやり遂げるかが、給源を多様化し、判事補の弁護士など法律職経験を実効あるものとさせ、特例判事補を早期に解消するなどの、ほとんどすべての課題の成否にかかわっている。裁判員制度の運営、ロースクールの設置、民事、刑事の裁判改革にとっても、弁護士が弁護人、代理人や教員としてこれらをどこまで積極的に担っていくかにかかっている。もちろん、その基盤となる弁護士制度の改革がすべての改革の出発点として弁護士会独自の課題であることはいうまでもない。とくに国民的基盤を強化するための諸方策については弁護士自治の重要性に鑑み、日弁連として真剣に論議が求められている。


また、極めて重要なことであるが、今回の司法改革においては、裁判官等の増員はもとより法科大学院の設立、運営等を含め、手厚い財政措置が講じられなければならない。 そのために日弁連としても各方面に対して強力な働きかけが必要である。


(2) 日弁連の運動と組織体制の強化

次に、今回の「意見書」の内容を具体化し、立法化に向けていくためには、日弁連は、これまで以上の体制を整え、総力をあげて運動を強めていかなければならない。


当面、日弁連としては、次の諸課題に精力的に取り組む必要がある。


A. 「意見書」の評価に対する会内討議を活発化させ、認識を共通化すること


「意見書」によって示された司法改革の方向性について日弁連は各弁護士会で会内討議を活発化し、「意見書」の評価について認識を共通化する。具体的には、日弁連執行部、日弁連司法改革実現本部による司法改革キャラバンを全弁護士会において実施する必要がある。


B. 継続的・系統的な調査研究体制を確立すること -司法改革調査室の創設発展等


「意見書」に示された改革の方向性については、立法化に熟したものから今後さらに立法化するまでに議論をつめるものまでいくつか段階がある。したがって、日弁連としても制度改革の実現に向けた継続的・系統的な調査研究体制を早急に確立しなければならない。


具体的には、本年3月2日の日弁連理事会で設置を決定し、8月1日に設置された「司法改革調査室」をより一層充実発展させる。


C. 司法改革推進機構に対して適切に対応していくこと


「意見書」を受けて、7月1日に内閣官房に司法制度改革推進準備室が設置され、立法準備作業をおこない、本年秋には司法制度改革推進基本法(仮称)案が国会に上程される見込みである。これによって、本年末または来年早々内閣のもとに司法制度改革推進本部が設置され、改革に向けた具体的立法作業が遂行されることとなろう。


したがって、日弁連は、この推進機構が国民に開かれたものとなり、十分に各界各層の意見が採り入れられるように組織され、運営されるように努めるとともに、官主導によってあるべき司法改革の方向が後退させられないよう監視を強める必要がある。また、既に日弁連から2名の会員がいわゆる任期付き公務員として準備室の参事官1名、参事官補佐1名に就任しているが、これまで以上に適切な連携を強め、改革の実現に向けた強固な体制を整備しなければならない。


D. 国会、政党に対する強力な働きかけをおこなうこと


今後の立法化にあたっては、21世紀の日本社会における司法改革の必要性と具体的制度内容について、また、手厚い財政措置を講じさせるためにも、国会対策が極めて重要になる。そのためには、日弁連は、国民各層の世論を結集し、各政党に対し強力な働きかけを展開する必要がある。


E. マスコミ、市民団体、学界との密接な連携を図ること


今後の立法化にあたっては、21世紀の日本社会における司法改革の必要性と具体的制度内容について、また、手厚い財政措置を講じさせるためにも、国会対策が極めて重要になる。そのためには、日弁連は、国民各層の世論を結集し、各政党に対し強力な働きかけを展開する必要がある。


F. 強力な国民運動を発展させること


日弁連は、1990年の司法改革宣言以来、司法改革の先駆的役割を果たしてきた。また、現在各地で推進されている「地域司法計画」の取り組みは、まさに弁護士会と市民・自治体等の共同の運動として発展させる必要があり、これを含めて、これまで以上に各弁護士会において地域における市民を主体とする運動を展開し、国民各層・各界全体に司法改革を推進する国民的運動を展開していかなければならない。


おわりに

新憲法制定と戦後司法改革から50年余、近代幕開け以来のわが国の歴史を省察しつつ、21世紀社会の展望を開くために提言された司法制度改革の内容は、司法に携わるものにとってのみならず、広く国民にとって大きな意味をもつものである。


「意見書」が示した内容は、既に述べたような不十分な点を含んではいるものの、日弁連が提唱してきた「市民の司法」の実現を目指す方向性を打ち出したものとして、基本的に評価できるものとなっている。われわれ日弁連は、真に国民のための民主的司法制度を担うものとしての責務を改めて自覚し、全会員の英知と力を結集して、司法の国民的基盤の確立、官僚的裁判制度の改革と弁護士・弁護士会の自己改革に積極的に取り組み、多くの市民とともにさらに前進していかなければならない。


以上