「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」案に対する意見書

2001年5月9日
日本弁護士連合会


意見の趣旨

1. 「第5章補則」の後に、「第6章 地方公共団体の設立する法人等の情報公開」を設け、「第27条」として次の条文を付加すべきである。

第27条 地方公共団体は、その出資又は出えんする法人(以下「出資等法人」という。)について、その性格及び業務内容に応じ、この法律の趣旨にのっとり、出資等法人の保有する情報の開示及び提供が推進されるよう、情報の公開に関する条例上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。


2. 附則第10条として、次の条文を付加すべきである。

附則第10条 政府は、法令に基づき特定の業務を行うものとして行政機関により指定された法人(以下「指定法人」という。)について、その性格及び業務内容に応じ、指定法人の保有する情報の開示及び提供が推進されるよう、この法律の公布後2年を目途として、情報の公開に関する法制の在り方について検討を加え、その結果に基づいて、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする。


意見の理由

当連合会は、従来から、特殊法人を含む政府関連法人は行政の重要な一翼を担い、かつ税金、公的資金を使っていることから、政府関連法人を情報公開の対象とすることなくして真の情報公開制度は有り得ないと主張し、特殊法人情報公開検討委員会を中心に政府関連法人の情報公開が検討されるにあたり、2000(平成12)年1月21日、「政府関連法人の情報公開制度に関する意見書」(以下「前意見書」という。)を発表している。


今般、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」案(以下「本法案」という。)が国会に提案されたが、当連合会が前意見書で求めた政府関連法人の情報公開制度というには必ずしも十分ではない。ただし、その多くは、行政機関情報公開法の施行4年後の見直しの際に、あわせて検討されるべきものであると考える。


しかし、前記意見の趣旨記載の2点については、下記のとおり、特殊法人情報公開検討委員会の平成12年7月27日付「特殊法人等の情報公開制度の整備充実に関する意見」(以下「検討委員会意見」という。)における「残された課題」にも関連するものであり、本法案を修正することを求める。


1. 第三セクターの情報公開制度の確立について

(1) 地方公共団体の出資又は出えんする法人(出資等法人)、いわゆる第三セクターの情報公開制度の確立が喫緊の課題であることは、当連合会においても、下記のとおり、前意見書でも述べたところである。


【前意見書からの引用】


第5 地方公共団体の関連法人を対象にできる制度


地方公共団体が条例で、地方公共団体の関連法人を情報公開制度の対象とできるような、条項を設けるべきである。


政府関連法人の状況、国民生活への負担、影響そして情報公開の必要性は、地方公共団体における公社、外郭団体、第三セクターなどに等しく当てはまる。国に比較して財政の脆弱な地方公共団体では、第三セクターなどの破綻が相次ぎ、公社等が莫大な損失、不良資産を抱えて、さらには地方公共団体自身の財政破綻につながる可能性が現実的な問題として危惧されている。このため、地方公共団体では、住民からの強い公開要求もあり、公社等の健全経営、運営を実現するために、公社等の情報公開の必要性が認識され、出資団体等の情報公開の制度化が検討されてきた。


しかし、公社等が特別法や商法等に基づいて設立されているため、条例で情報公開の対象とすることができず、公社等の情報公開制度は要綱で定められたり、条例では努力規定とされるなどにとどまり、住民に公開請求権を保障する本来の情報公開制度とはなっていない。


そこで、地方公共団体における公社、外郭団体、第三セクター等についても、政府関連法人の情報公開制度と同様の対象法人基準で、条例に定めることによって情報公開の対象機関とすることができるよう、政府関連法人の情報公開法に規定を設けるべきである。


この問題は、政府関連法人の情報公開制度化に関する検討課題と共通し、地方公共団体における公社等の情報公開の実現が早期に求められている状況下で、政府関連法人の情報公開制度において対応し、早期に立法的に解決することが強く求められる。


(2) これに対応し、検討委員会意見においても、「第9 残された課題等」の「(4)その他」として、下記のとおり、地方公共団体が出資または出えんする第三セクターの情報公開制度の整備について明記された。


【検討委員会意見】


「この件は、地方公共団体における制度の整備の問題であり、本委員会に託された検討領域を超える課題である。しかし、特に地方3公社については、地方自治法及び地方3公社の設立法の解釈が問われていたこともあり、関係省からヒアリングを行った。それによると、条例により地方3公社を対象にした情報公開制度を設けることについては、地方自治法上、条例は、法令に違反しない限りにおいて地方公共団体の事務に関し制定することができ、各公社の設立法も、これを禁じていないとしている。


地方公共団体においては、本意見を参考にされるとともに、上記のような状況を勘案し、住民からの要請に応えるべく、情報公開に関する施策の一層の充実に努力されることを期待するものである。」


(3) しかしながら、本法案においては、当連合会の意見はもとより、特殊法人情報公開検討委員会の意見にも何ら配慮するところがないので、意見の趣旨のとおり本法案に第6章第27条を付加することを求める。


2. 指定法人等の情報公開の制度化について

(1)検討委員会意見においては、「第9 残された課題等」の「(1)指定法人等」として、下記のとおり提言している。


【検討委員会意見】


指定法人等の情報公開の制度化に当たっては、以下のような検討を要する課題があり、今後、指定法人等の制度・運営の実態等を踏まえつつ、政府は、理論面及び実態面を通じた調査検討を進める必要がある。


  1. 対象となる法人等を確定するため、指定法人等が行う業務が行政事務かどうかの判別等について、個別の実例を踏まえた理論的な調査研究を行うこと。
  2. 国民に対する説明責務は、指定法人等が負うべきか、あるいは、指定をした行政機関が負うべきかについての理論的な検討のほか、指定法人等の組織・業務の実態を把握し、制度化により要するコストとその効果等も勘案した上で、情報公開は指定法人等と指定をした行政機関のどちらに行わせるのが適当か、また、情報提供の充実だけでは不十分かといった実務上の検討を行うこと。
  3. 制度化に当たり、指定法人等が保有する情報のうち、民間活動に係る情報と指定法人等としての活動に係る情報とをいかに区分するか、また、民間の組織である指定法人等が開示主体となる場合には、どのような救済制度が適当かといった検討を行うこと。
  4. 関連して、指定法人等以外の職能団体等の法人であって、法令を根拠として行政事務を行っている法人における情報公開制度はいかにあるべきかの検討を行うこと。

(2)しかるに、本法案においては、指定法人について、情報公開の法制の検討すらしようとはしていない。これは、検討委員会意見を全く無視するものとして極めて遺憾である。


法人理事者はもとより国会議員の逮捕にまで至ったいわゆるKSD事件を鑑みるとき、国民の公益法人に対する公開性、透明性の確保の要請は強いものと解されるが、とりわけ行政機関は指定法人に対し助成その他の支援措置や指導監督等を行っており、これら指定法人に対する公開性、透明性の確保の要請はより一層強い。


よって、意見の趣旨のとおり附則第10条を付加することを求める。


以上