NPO提供の介護サービス事業に対する要望

2000年12月15日
日本弁護士連合会


本年(2000年)4月18日、大蔵省は、特定非営利活動法人(NPO)が提供する介護サービスを法人税の課税対象とする方針を固め、また国税庁は、本年6月1日付けの厚生省老人保健福祉局長からの照会に対して、同月8日付けで、介護保険法の規定に基づく介護サービス事業は、法人税法上、収益事業に該当する旨の回答を出しています。これらのNPOに対する課税の方針は、多くのNPO関係者などから強い批判がなされているところです。そして、現在は来年度予算案編成を控え最後の調整がなされている状況にあります。


国(厚生省)は介護保険制度発足に際し、介護保険のサービス提供事業者の資格要件である法人の中にNPOも含むこととしました。これは高齢者が介護サービスについて多様な選択肢の中から選択権を行使できる機会を保障する必要があり、そのためにはサービスの質が一定のレベルに達しているかぎり広くサービス提供者として参入する場を提供すべきであるとの判断があり、またNPOが営利業者と異なり地域に密着した木目細かい介護サービスの提供を担当していることの重要性を評価したからです。


従って、介護サービス全体の質的・量的豊富化を推進して行くためには、介護保険サービスに参入したNPOを財政面で支援していく政策こそ必要とされているにもかかわらず、冒頭の課税方針はNPOを支援・育成する動きを逆行させ、その財政を圧迫して撤退を迫り、新規参入を阻む結果をもたらすおそれが大きいことは明らかです。


介護サービスが法人税法上の収益事業に該当しても、NPOの場合は利益の分配ができない制度になっており、また同種の公益的活動を行う社会福祉法人の提供する介護保険サービスについては同法施行令第5条1項29号において非課税とされていることと区別して取り扱うことの合理的説明は困難であり、前述したNPOの重要性を考えれば、むしろ社会福祉法人と同様に法人税法施行令上非課税対象として追加規定すべきです。従って、当連合会としては、国に対してNPOの提供する介護サービス事業に対しては非課税とするよう要望します。