区分所有法の改正に関する意見書

2000年6月16日
日本弁護士連合会


本意見書について

建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)は、昭和37年に制定され、その後、昭和58年の改正を経て現在に至っている。



この間都市部を中心としてマンションが急増した。建物の欠陥に関する紛争や居住者間の紛争、さらにはマンションの管理をめぐる紛争等の種々多様な内容の争いが増加している。また、初期の頃に建設されたマンションがそろそろ老朽化し、建替え等をめぐる紛争が現実問題となりつつある。



そこで、日頃日常の活動を通じてマンションに関する紛争等の関与してきた立場から、区分所有法をはじめ関連する法律の改正等について以下の提言をおこなう。



  1. 共用部分について、区分所有法は積極的な定義をせず、登記上も明確ではない。そのため本来共用部分とされるべきものが専有部分として扱われる等の弊害が生じており、かかる弊害を排除するため登記書類に各階平面図等の図面を添付させるなどの方策をとるべきである。また、区分所有法は、共用部分に関し規約による別段の定めを許容しているが、等価交換による旧地主や分譲業者の優遇等を目的とする不平等な利用が横行しており、例外設定について一定の制限を設けるべきである。
  2. 区分所有法は、専有部分と敷地利用権の一体性、すなわち分離処分の禁止を原則としながら、規約による例外を許容しており、そのため、両者の関係が不明確となり、取引や管理の面で混乱を生じる結果となっている。したがって分離処分禁止の例外については必要やむを得ないものに限定すべきである。
  3. 現在、マンション分譲の際には、分譲業者が一方的に作成した規約(原始規約)に購入者の個別の同意を取り付けるという運用がなされているが、原始規約には往々にして問題があり、後日、裁判等に発展するケースが後を立たない。したがって原始規約について(1)行政庁の審査手統を新設する、(2)分譲業者や元地主に特別の利益を与える等の不公正条項を無効とする規定を設ける、(3)原始規約に限り改定の決議要件を緩和する等の対応をすべきである。また、分譲にあたり駐車場専用利用権の分譲、留保等の不公正な分譲が行われることのないよう禁止規定を設けるべきである。
  4. マンションの管理については、区分所有者の権利を保護するためにも益々管理に関する規定の重要性は高まっており、他方、管理に関し数多くの紛争が発生し、裁判等の手続による解決が求められているものも少なくない。そこで(1)法定の要件を撤廃し管理組合の法人化を容易にすべきであり、(2)共用部分、管理に関する訴訟に関し管理組合に当事者適格を付与すべきである。また(3)区分所有法は管理者による管理方式を前提としているが、現実には理事会による管理方式が採用されており法と現実が乖離している。したがって理事会による管理方式も法律に取り込むべきである。さらに(4)マンションの管理会社及び業として管理者となる者について免許制度を前提とする業法を制定すべきである。
  5. 建物の復旧をめぐる紛争において、特定の者に買取請求が集中する惧れがあり、これを回避するために買取請求の相手方を復旧賛成者の団体が指定した者等とし、代金の支払も賛成者全員の連帯責任とするなどの方策を講じるべきである。また、買取請求について期間制限を設け権利関係の安定を図る必要がある。買取請求の際の「時価」について算定基準や算定方法を法定すべきである。
  6. 建替え決議の要件について具体的な基準を明示するとともに、決議後の建替え手続及び事業を推進する団体の法的地位を明確化すべきである。


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