自由権規約第6条についての一般的意見No.36草案に対する日本政府コメントについての意見書

 

2018年2月14日
日本弁護士連合会

 

本意見書について

国連自由権規約委員会では、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第6条(生命に対する権利)についての一般的意見No.36の採択に向け、その草案の検討が行われています。

 icon_page.png国連人権高等弁務官事務所ホームページ


検討に際して、同草案に対する意見公募が行われたところ、icon_page.png日本政府から同草案に対する意見(コメント) が国連自由権規約委員会に提出されました。 このことを受け、日本弁護士連合会では、2018年2月14日付けで意見書を取りまとめ、同年3月9日付けで国連自由権規約委員会に提出しました。


本意見書の趣旨

1 死刑適用犯罪の限定に関する市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下単に「規約」という。)第6条(生命に関する権利)についての一般的意見No.36(以下単に「一般的意見」という。)(パラグラフ39第2文)中の「最も重大な犯罪」の解釈に対する日本政府コメント(第2文から武装強盗、海賊行為、性犯罪は除く。冒頭に「原則として」を挿入する。)は、日本の現行の死刑適用犯罪の種類が多いことに合わせて、その限定を緩やかに解釈しようとするもので、規約第6条第2項の趣旨に反し、採用されるべきではない。


2 死刑の廃止に向けた国際社会の努力に関する一般的意見(パラグラフ44第1文、同54、同55)に対する以下の日本政府コメント(1)ないし(3)は、2014年の自由権規約委員会による第6回日本審査で採択された総括所見(以下「総括所見」という。)パラグラフ13(a)(死刑廃止に対する考慮、死刑適用犯罪数の減少)および総括所見パラグラフ13(f)(規約の第二選択議定書への加入の検討)に反し、あくまでも日本を意識した死刑の維持にこだわるもので、適切な意見とは言えない。
(1) パラグラフ44第1文中の規約第7条の解釈に関連する「いまだ死刑を廃止していない締約国」という表現に対する日本政府コメントは、これを不適切であるとし、例えば「死刑制度を有する締約国」の表現に置き換えられるべきである、としている。

(2) パラグラフ54に対する日本政府コメントは、パラグラフ全体の削除を求めている。

(3) パラグラフ55に対する日本政府コメントは、パラグラフ全体の削除を求めている。


3 死刑執行に関わる事前・事後の情報不告知に関する一般的意見(パラグラフ44第5文、同60第2文)に対する以下の日本政府コメント(1)、(2)は、死刑囚及びその家族の心情に反し、死刑囚の権利行使の機会を奪う意見で、採用されるべきではない。

(1) パラグラフ44第5文に対する日本政府コメントは、処刑日時を知らせないことは不当な取扱いではなく、死刑囚の精神的苦痛を緩和するなど合理的理由がある、としている。

(2) パラグラフ60第2文に対する日本政府コメントは、近親者に対する不告知も関係者の苦痛を考慮するものであるとし、第2文から「予定されている死刑執行の日時」の削除を求めている。


4 死刑を科す刑事訴訟手続における弁護人の立会い及び適正手続に関する一般的意見(パラグラフ45第2文、同58第2文)に対する以下の日本政府コメント(1)、(2)は、刑事訴訟手続の適正手続に対する理解の欠如であり、とりわけ死刑判決における誤判の危険性を軽視する意見であって、採用すべきではない。

(1) パラグラフ45第2文に対する日本政府コメントは、取調べと予審における適正手続は刑事弁護人の立会いなしでも実現できるとし、「取調べと予審」の用語の削除を求めている。

(2) パラグラフ58第2文に対する日本政府コメントは、あらゆる不当な取扱いに反対するが、あらゆる不当な取扱いによって得られた情報に基づく死刑判決でも、直ちに規約第6条違反ではないとして、同文の「なる」を「なる可能性がある」に修正を求めている。


5 死刑宣告に関する司法的及び行政的再調査に関する一般的意見(パラグラフ50、同51第1文)に対する以下の日本政府コメント(1)、(2)は、日本の死刑制度の現状の運用を正当化するあまり、生命剥奪という不可逆的な結果をもたらす極刑に対する考察を欠く意見で、採用されるべきではない。

(1) パラグラフ50に対する日本政府コメントは、パラグラフ全体の削除を求めている。

(2) パラグラフ51第1文に対する日本政府コメントは、死刑執行回避のための恩赦申立ての事例があるとして、同文から「最終的に」の文言削除を求めている。


6 死刑適用条件の絞り込みに関する一般的意見(パラグラフ53)に対する以下の日本政府コメント(1)、(2)は、死刑執行に直面する人の精神状態に配慮しない形式的な意見であり、日本政府の過去の執行に関する運用とも異なっており、採用されるべきではない。


(1) パラグラフ53第1文に対する日本政府コメントは、公判での慎重な審理によって死刑判決が確定した以上、僅かな精神障害でも執行できないとする誤解を避けるために表現の修正を求めている。

(2) パラグラフ53第2文に対する日本政府コメントは、「死刑執行が特に残酷になる人」において指摘された要素は、公判中においても考慮されたものであり、執行回避の理由とならないので、当該部分の削除を求めている。


7 死刑廃止後の遡及効に関する一般的意見(パラグラフ43第5文・第6文)に対する同文の削除を求める日本政府コメントは、規約第15条第1項第3文の解釈として認められない。


8 犯罪人引渡しに関する一般的意見(パラグラフ34第3文)に対する、同文の最後に「規約第6条に違反して死刑が科されることを防ぐ信頼できる有効な保証が得られていない限り」を追加することを求める日本政府コメントは、内容の確認又は強調をしているものに過ぎず、論理的に不要である。

       

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