顔認証システムに対する法的規制に関する意見書

 

 

2016年9月15日
日本弁護士連合会

  

本意見書について


日弁連は、2016年9月15日付けで「顔認証システムに対する法的規制に関する意見書」を取りまとめ、同月16日付けで警察庁長官、個人情報保護委員会委員長、総務大臣、都道府県知事、及び政令指定都市市長に提出しました。

 

本意見書の趣旨


 1  警察が犯行現場付近における不特定多数の人の顔画像データを収集し、個々人を特定するための特徴点を数値化したもの(以下「顔認証データ」という。)を生成し、これらのデータをあらかじめ生成している特定人の顔認証データで構成されているデータベース(以下「顔認証データベース」という。)との一致を検索して被疑者等の同一性を照合する制度(以下「顔認証システム」という。)について、市民のプライバシー権等の侵害を極力少なくするために、国は、以下の各項の内容を盛り込んだ法律を制定するとともに、関係法令の改正を行う等して、適切な規制を行うとともに、被疑者・被告人等からのアクセス権の保障を認めるべきである。

(1) 利用条件の限定

①警察が犯罪捜査のために行う、監視カメラ等により記録された顔画像データの収集は、裁判官が発する令状により行うこと(ただし、設置者が権限を有する領域に適法に設置している店舗等の施設内で犯罪が行われた場合の顔画像データを除く。)。

②犯行現場付近の画像からの顔認証データ生成は、重大な保護法益を侵害する組織犯罪(以下「重大組織犯罪」という。)の捜査に必要な場合に限定し、適法に生成された顔認証データは、捜査のための必要がなくなった時点で直ちに廃棄すること。

③警察が既に適法に保有している被疑者・前科者等の顔画像データから顔認証データを生成することが許される場合は、重大組織犯罪の前科者に限定すること。

④顔認証データベースに登録する顔認証データは、重大組織犯罪の前科者に限定した上、登録期間を設定し、期間経過後には直ちに消去すること。

⑤顔認証データベースの照合は、重大組織犯罪に対する具体的な捜査の必要性がある場合に限定することし、どのような方法なら許されるのか、あらかじめ法律によって条件が明示されること。

 (2) 個人情報保護委員会による監督

個人情報保護委員会が、警察による、顔画像データの収集、顔認証データの生成・利用・廃棄、顔認証データベースの構築、顔認証データベースへの登録、顔認証データベースの利用状況、顔認証データベースからのデータ抹消等が的確に行われているかをチェックできるようにすること。

(3) 基本情報の公表

顔認証システムの仕組や検索の精度について定期的に公表すること。

(4) 被疑者・被告人等の権利

顔認証システムは、事実に無関係な者のアリバイ(現場不在証明)主張の手段となり得るから、被疑者・被告人等の請求による顔認証システムによる照合が認められるべきであること。また、顔認証データシステムに誤登録されている者に開示請求権及び抹消請求権を認めること。


2 上記内容を盛り込んだ法律ができるまでの間、国家公安委員会は、顔認証データに関する上記内容を含んだ規則を制定し、事前に明示されたルールに則った運用の確保を図るべきである。都道府県警察も、これに則った運用を行うべきである。


3 行政機関は、既に収集済みの顔画像データ等について、顔認証システムの運用に伴うプライバシー権の侵害を防止する観点から、実際の必要以上に高精度な顔画像データの収集・利用を行ったり、必要性なく顔認証データを生成・利用したりしていないかを検証するとともに、以後もこの点に十分に留意すべきである。

特に、都道府県公安委員会が保有している自動車運転免許証作成時の顔画像データを裁判官が発する令状なく捜査機関に提供したり、自ら顔認証データを生成したりしないようにすべきである。



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