最高裁判所第6回「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」に対する意見書

2015年9月10日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

2015年7月10日付けで最高裁判所が公表した第6回の「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(以下「第6回報告書」という。)に対し、日弁連は、2015年9月10日付けで意見書を取りまとめ、最高裁判所ほかへ提出しました。

 

本意見書の趣旨

1 最高裁判所が本年7月10日に公表した裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(「第6回報告書」)は、最新の統計データの検証とともに、第3回ないし第5回報告のフォローアップとして民事・家事の分野につき全国複数地区で実情調査を実施し、その結果を踏まえて民事事件における争点整理の充実、合議体による審理の充実、家事事件における手続の透明性の確保や家事調停への裁判官関与の一層の充実などに着目し、司法手続の運用改善の観点を中心に具体的に述べている。紛争の背景にある当事者の要因、社会的要因をも視野に入れ、広く実情分析を続けようとする第6回報告書の姿勢は、積極的に評価できる。

 

2 「争点整理の充実」について、議論の環境作り、裁判官の暫定的心証開示のあり方、裁判所の態勢、当事者・代理人サイドの姿勢など、総合的な活性化の方策検討が求められる。また、口頭での議論の活性化だけではなく、証拠・情報の偏在に対する方策の整備も必要不可欠である。

 

3 合議体による審理をこれまで以上に積極的に活用する必要性が高まっており、審理の適正・充実のみならず、審理期間の短縮にも寄与し得ることや、質の高い裁判を確保する上でも有意義である。合議体の更なる活用のためには、多数の単独事件を抱える右陪席裁判官の負担を軽減して合議体への関与を実質的かつ十分に確保することが重要であるが、運用面だけではなく、裁判官の増員など態勢面の強化を図るべきである。

 

4 報告書では、裁判官の関与の充実についての調査と検討はなされているものの、手持事件数など裁判官の繁忙度、さらには調停委員、家裁調査官などの繁忙度は具体的に触れられていない。それらのより具体的な分析と改善課題を積極的に示していくことが重要である。

 

5 今後は、具体的な措置の提言に向けて、個々の地域、個々の問題点の分析もすべきである。民事裁判・刑事裁判の件数が統計数値上はおおむね横ばいとなっている中、大規模庁においてはなおも裁判官の負担が重い状況があることが窺える。より具体的な実情、要因の分析を続けて行くことが重要である。また、裁判官や家裁調査官、調停委員等の繁忙度の分析を進め、人的態勢の強化に加え、調停室、待合室の整備拡充など態勢面の整備も進める必要がある。

 

6 最高裁は、今後の検証において、引き続き裁判実務の動向を不断に注視するとともに、全国的な統計数値、実情調査の成果の蓄積に加え、地域の実情などさらに具体的・説得的な検証成果の構築に努め、態勢整備に向けた具体的な施策の提言を目指すべきである。

 

 

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