学習指導要領の改訂にあたって消費者教育の充実を求める意見書

2007年6月14日
日本弁護士連合会


 

本意見書について

現行学習指導要領は、中学校については1998年、高等学校については1999年に告示され、それぞれ2002年及び2003年から施行されていますが、告示後8年以上を経過し、現在その改訂作業が行われています。


消費者問題がますます複雑化・多様化している中で、現代社会を生き抜くためには、中学校・高等学校などの学校において契約の基礎を修得させるなどの充実した消費者教育がなされ、「生きる力」を身に付けることがまさに求められています。


そこで、日弁連では、今般の学習指導要領改訂においては、基礎学力の強化だけでなく、真に現代社会を生き抜く力を付けさせるための「消費者教育」も極めて重要であり、その具体的内容が盛り込まれるべきであるとの意見書をとりまとめ、文部科学省に提出しました。


意見の趣旨は下記のとおりです。


現在、改訂が検討されている学習指導要領においては、「消費者教育の充実」の観点から内容を策定し、具体的には以下の内容が実現されるべきである。


  1. 中学校の社会科及び技術・家庭科、高等学校の公民科及び家庭科においては、生徒が現代社会を生き抜く力を身に付けられるよう、次の内容の消費者教育を行うこと。
    (1) 「契約」について、その意味や仕組み、成立の要件や効果などの基本的事項を十分修得させたうえで、消費者の日常生活は多くの契約を結ぶことによって成り立っていることを理解させること。
    (2) 消費者が商品やサービスを選定し、契約を締結するにあたって、自ら権利の主体として、商品やサービスの品質や内容、契約条項の意味などの必要な情報を積極的に収集し、合理的な判断の下に契約を締結することが重要であることを理解させること。そのうえで、情報収集についての知識・技術を修得させるとともに、契約締結の判断を合理的に行える能力を身に付けさせること。
    (3) 多重債務問題や悪質商法等の現実に生起する消費者トラブルについて、社会経済の仕組みや構造から考えてその問題点を見抜く知識と能力を修得させること。
    (4) 被害者を生まないために関係諸機関に情報を提供したり、対処を求めたり、自ら消費者団体を組織し参加したりするように能動的に行動する態度や考え方を修得させること。
  2. 消費者教育を行うにあたっては、現実に生起する消費者トラブルを題材として、授業を展開すること。特に多重債務問題については、具体的事例を用いて、金利問題や多重債務からの予防策及び救済策についての学習を行うこと。
  3. 消費者教育は総合的学習の時間なども利用して、教科にとらわれることなく、広い観点から行われるよう工夫すること。
  4. 上記の内容を授業で実現するために、教師に対する研修の充実や具体的事例を盛り込んだ教材の提供などがなされること。

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