出入国管理及び難民認定法施行規則の一部改正に対する意見

2005年3月17日
日本弁護士連合会


 

標記施行規則の一部改正に対するパブリックコメント募集につき、当連合会の意見は以下のとおりである。


第1 仮滞在許可制度関係


1 仮滞在期間について


省令案では、仮滞在許可期間は1か月を超えないものとされている。


現在の実務では、申請から異議の棄却まで数ヶ月以上かかるのが一般的であり、申請者の生活を平穏にするという見地からも、仮滞在許可の期間は、実務を踏まえ、実情に即して定められるべきである。


2 就労禁止条件について


省令案では、仮滞在許可をした者全てに就労禁止条件を付することとなっている。


ところで、現在の難民に対する生活費及び宿舎借料等についての保護措置は、外務省が財団法人アジア福祉教育財団難民事業本部に委託して実施しているものであるが、その支給額は、生活費として12歳以上の大人1人につき日額1500円、宿舎借料として月額4万円が原則となっており、最低限度の生活を保障するものとされる生活保護(生活保護法1条)の受給額を相当下回るものでしかない。しかも、一部の難民申請者に対してしか支給されていない。


このような現状のもとで、仮滞在許可を受けた者全てに就労禁止の条件を付けることは、難民申請者の生活を危うくする結果となるから、自己の資産により日本において生活費を支弁できる場合を除いて、仮滞在許可を受けた者全員に適切な保護措置をとるか、それが困難であれば、一定条件下での就労を認めるべきである。


第2 難民審査参与員制度関係


1 「異議申立てに関連する不適格事由」について


省令案では、当該異議申立人の難民不認定処分取消訴訟等の訴訟代理人など、6項目にわたる難民審査参与員(以下「参与員」という。)の不適格事由が列挙されている。


これに加え、第三者性の確保という観点から、難民調査官、入国審査官及び入国警備官など当該異議申出人の調査等に関与した者も不適格事由に加えるべきである。


2 「意見聴取の方法」について


省令案では、法務大臣は、参与員に対して原処分の理由を明らかにした書面、当該処分の基礎とした書類及び資料の写しを示すものとされている。


仮に難民調査官が作成した書面や一件記録の一部のみが示されるとすれば、参与員の公平適正な判断は期待し得ないので、参与員はいつでも一件記録全て及び原処分の判断のもととなった本国情勢等の資料を閲覧することができるようにすべきである。


3 「意見の提出の方法」について


省令案では、3人の参与員によって構成する班において異議申立事件についての意見を法務大臣に提出するに際し、原則として参与員各自の意見及び理由を記載した書面の提出によることとし、例外的に参与員の合議によって得られた一つの意見及び理由を記載することとされている。


しかし、3人の参与員によって班を構成する意義は様々な視点からの合議を通じて適正な判断に到達することにあるから、各自の書面提出方式ではなく、参与員は常に3人による合議を行い、合議を通じて班としての意見を形成することに努めるべきである。合議の結果によってもなお少数意見が存するときは、多数意見をもって参与員の意見とし、理由中に少数意見を明記すべきである。


4 「異議申立てに対する決定」について


異議申立てに対する法務大臣の棄却又は却下の決定において、法務大臣は参与員の意見の要旨を示すこととされている(出入国管理及び難民認定法61条の2の9第4項)。


難民認定実務を今後とも向上させ判断の適正さを確保していくため、棄却又は却下の決定に限らず、異議申立てを理由ありとする場合も参与員の意見を記載すべきである。また、その場合において、多数意見に加え少数意見も付記するべきである。


第3


なお、本件意見に関連して、当連合会は、2004年3月、「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(2004年2月27日政府提案)に対する意見書」を発表しているので、この意見書も参考とされたい。

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