法制審議会民法(成年後見等関係)部会の設置に関する会長談話


本年2月15日、法制審議会第199回会議が開催され、法務大臣の諮問により法制審議会民法(成年後見等関係)部会(以下「部会」という。)が設置され、高齢化の進展によって、成年後見制度に対するニーズの増加、多様化が見込まれる中、成年後見制度を見直して、より利用しやすいものとする観点から、法改正に向けた具体的な検討が行われることとなった。これに先立ち、2022年6月から商事法務研究会「成年後見制度の在り方に関する研究会」(以下「研究会」という。)における検討がなされ報告書が取りまとめられた。当連合会も、同研究会に委員を推薦し、積極的に議論に参加してきた。


報告書では、現行の成年後見制度の問題点として、①制度利用の動機となった課題が解決し、本人やその家族において、家族による支援やその他の支援によって制度利用の必要がなくなったと考える場合でも、判断能力が回復しない限り制度の利用が継続すること、②本人にとって必要な限度を超えて、本人の行為能力が制限される場合があり、取消権や代理権が広すぎること、③成年後見人等による代理権や財産管理権の行使が、本人の意思に反し、又は、本人の意思を無視して行われることで、本人の自律や自己決定に基づく権利行使が制約される場合があること、④本人の制度利用のニーズの変化に応じた成年後見人等の交代が実現せず、本人のニーズに合った保護を十分に受けることができないこと等が指摘されている。


ここで指摘されている各論点については、当連合会としても、「成年後見法大綱」(1998年4月17日)で示した制度の骨格に関する意見、「arrow_blue_1.gif総合的な意思決定支援に関する制度整備を求める宣言」(2015年10月2日)、「arrow_blue_1.gif「第二期成年後見制度利用促進基本計画(案)」に関する意見」(2022年1月20日)において、適時に提言を行ってきたところでもある。


今後、部会において検討される成年後見制度の見直しは、これらの指摘を受けて、国連障害者権利条約の中核的理念でもある自律の保障(自分の生活や生き方は、自分で決めてコントロールすること)及びインクルージョンの実現といった基本的理念を掲げた上で、第二期成年後見制度利用促進基本計画の基本的考え方に示された総合的な権利擁護の支援策の手段としての役割に応えるため、本人の意思を十分に踏まえ、適切な時機・事項につき、必要最小限度の範囲・期間で代理権等を付与する制度への改革を目指して検討されることが肝要である。


当連合会は、引き続き、本人の権利擁護の視点に立ち、この間の実務運用の蓄積を踏まえた実践的な提言を行い、新たな制度の構築に貢献していく所存である。



2024年(令和6年)4月4日

日本弁護士連合会
会長 渕上 玲子