大川原化工機事件国賠訴訟判決に関する会長談話


東京地方裁判所民事第34部(桃崎剛裁判長)は、2023年(令和5年)12月27日、大川原化工機株式会社及び大川原正明社長らが国と東京都を相手に国家賠償請求をした事件につき、警視庁公安部の警察官による逮捕及び取調べ並びに検察官による勾留請求及び公訴提起が違法であると認定し、国と東京都に対して賠償を命じた。


本判決は、警視庁公安部が通常要求される捜査を遂行せずに大川原社長ら3名を逮捕したこと、担当検察官が必要な捜査を尽くすことなく勾留請求及び公訴提起を行ったこと、警察官による同社役員1名への取調べにおいて、偽計が用いられた上に、自由な意思決定を阻害することが明らかな態様によって供述調書が作成されたことが、いずれも国家賠償法上違法であるとした。


本判決において国家賠償法上違法とされた警察官や検察官の行為は、強制捜査や公訴提起といった強大な権限を不正に濫用したものと言わざるを得ず、本判決の判示は正当なものである。


本件において、大川原社長ら3名は、約11か月もの間身体を拘束された。この身体拘束は、裁判官が発行した令状に基づくものであり、裁判官の身柄拘束についての判断も検証されなければならない。とりわけ本件は、一貫して無罪を主張し、黙秘権を行使した大川原社長らを勾留し、幾度にもわたる保釈請求が却下され続けた事案である。罪を認めない「無実の人間」が拘束され続けたのであり、まさに「人質司法」による身体拘束がなされた事案である。しかも、うち1名は、身体拘束中に胃がんに罹患しながらも、裁判官は保釈を認めず、その結果、死亡するに至っており、このような裁判官の保釈判断は、強い非難を免れない。


当連合会は、2020年(令和2年)11月17日付けで「arrow_blue_1.gif「人質司法」の解消を求める意見書」を公表しているが、本件のような悲劇を二度と繰り返さないためには、無罪を主張し、あるいは黙秘権を行使する被疑者・被告人を殊更長期間拘束する「人質司法」の解消が必要不可欠であり、その実現に向けて全力を尽くす決意である。



2024年(令和6年)1月10日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治