消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ報告書の取りまとめに当たり、行政による被害回復制度の導入を改めて求める会長声明
内閣府消費者委員会の消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ(以下「WG」という。)では、事業者の自主的取組や民事ルールでは対応しきれない悪質商法に関して、実効的な法整備や違法収益のはく奪、財産保全等の制度の検討を行っている。既に報告書(素案)が公表され、近々、報告書を取りまとめる見込みとされている。
この素案には、当連合会が「詐欺的商法の一種であるポンジ・スキーム事案についての行政による被害回復制度の導入を求める意見書」(2021年8月19日)等において提言してきた行政庁による破産申立制度等の具体的な方策が盛り込まれており、高く評価できる。
この点、2009年に制定された消費者庁及び消費者委員会設置法(附則第6項)において、政府は、加害者の財産の隠匿又は散逸の防止に関する制度を含め多数の消費者に被害を生じさせた者の不当な収益をはく奪し、被害者を救済するための制度について検討し、必要な措置を講じることが求められていた。これを受け、消費者庁は、消費者の財産被害に係る行政手法研究会を設置し、2013年6月に報告書「行政による経済的不利益賦課制度及び財産の隠匿・散逸防止策について」を取りまとめるなどしていた。しかしながら、その後、消費者庁において、十分な具体的な方策の検討が行われてきたとは言えない。
その間、ジャパンライフ事件やケフィア事業振興会事件等、いわゆるポンジ・スキームと呼ばれる破綻必至の詐欺的商法により、巨額の被害が生じた。このような被害を繰り返させることはあってはならない。
当連合会は、破綻必至の事業による消費者被害の発生を防止し、その被害を一刻も早く救済できるようにするために、WGの報告書が素案から後退したものとならないことを期待するとともに、政府に対し、WGの報告書を真摯に受け止め、行政庁による破産申立制度等、悪質商法に対する行政による被害回復制度の導入をするよう、改めて求める。
2023年(令和5年)7月20日
日本弁護士連合会
会長 小林 元治