災害ケースマネジメントの推進に向けた会長声明


災害ケースマネジメントとは、「被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の自立・生活再建が進むようマネジメントする取組」(「災害ケースマネジメントに関する取組事例集」3頁(内閣府))と定義される被災者支援の在り方である。


 当連合会は、2016年2月19日付け「arrow_blue_1.gif被災者の生活再建支援制度の抜本的な改善を求める意見書」において、災害からの復興が、憲法が保障する基本的人権を回復するための「人間の復興」でなければならず、それを実現するために災害ケースマネジメントを制度化すべきことの必要性を明らかにしてきた。そして、2021年10月15日付け「arrow_blue_1.gif弁護士の使命に基づき、被災者の命と尊厳を守り抜く宣言~東日本大震災から10年を経て~」においても、災害ケースマネジメントの制度化を通じて、個人の尊厳に配慮したきめ細やかな被災者支援の実現のために尽力していくことを確認している。


内閣府は、この災害ケースマネジメントに関し、2022年3月31日に「災害ケースマネジメントに関する取組事例集」を、本年3月28日に「災害ケースマネジメント実施の手引き」を公表した。また、中央防災会議は、本年5月30日に防災基本計画において、「地方公共団体は、平常時から、(中略)地域の実情に応じ、災害ケースマネジメント(中略)などの被災者支援の仕組みの整備等に努めるものとする」旨を明記するに至った。経済財政諮問会議においても、2022年度に続き「経済財政運営と改革の基本方針2023 加速する新しい資本主義~未来への投資の拡大と構造的賃上げの実現~」(骨太方針2023・本年6月16日閣議決定)で、災害ケースマネジメントの促進等の事前防災に資する取組を推進する旨を明記するなど、災害ケースマネジメントの促進につき、財政的な裏付けを持たせようとしている。


これらの国の動きは、災害ケースマネジメントを制度化し、全国にあまねく普及させようとするものであり、災害ケースマネジメントの重要性を訴えてきた当連合会としても、高く評価できるものである。


他方で、災害ケースマネジメントは、あくまでも「人間の復興」という目的を達成するための手段であるから、形式のみではなく、実効性を伴った仕組みが整備されなければならない。そのためには、各地域それぞれにおいて、地域の実情に合わせたきめ細やかな被災者支援の取組が必要であることを忘れてはならない。


2023年も、石川県能登地方を震源とする地震や、令和5年梅雨前線による大雨及び台風第2号等、全国各地で多くの自然災害が発生している。自然災害は、場所を選ばず、突如として起こるものであり、私たちは、いつでも、誰しもが被災者になりうるのであって、住む場所によって「人間の復興」の実現に差異を生じさせてはならない。


内閣府より公表された「災害ケースマネジメント実施の手引き」では、災害ケースマネジメントの担い手として、弁護士及び弁護士会が明記された。我々弁護士は、基本的人権の擁護を使命とするものとして、全国のどこで災害が発生しても「人間の復興」があまねく実現されるべく、各弁護士会における災害ケースマネジメントに関する体制整備や、行政及び中間支援団体との連携強化を推し進めていく所存である。



2023年(令和5年)7月6日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治