いわゆる谷間世代への一律給付実現を求める会長声明


当連合会は、2018年5月25日に高松市で開催された第69回定期総会において、「arrow_blue_1.gif安心して修習に専念するための環境整備を更に進め、いわゆる谷間世代に対する施策を早期に実現することに力を尽くす決議」を採択し、2020年9月4日には「arrow_blue_1.gif改めて、いわゆる谷間世代に対する国による是正措置の実現を目指す会長声明」を公表している。また当連合会は、司法修習生の修習期間中に給与及び修習給付金の支給を受けられなかった、いわゆる谷間世代(約1万1000人、全法曹の約4分の1)の会員に対する給付金支給の会内施策を実施してきた。


しかし、現在まで谷間世代に対する一律給付の制度の創設はなく、その不平等感や経済的負担によって法曹としての活動に支障が生じかねない状況が続いている。


そこで、この問題を解決すべく、市民に幅広くアピールするとともに、国会議員その他様々なルートを通じて活動してきた。そして、本日時点で、国会議員の過半数を超える371名からの応援メッセージを頂戴している。このメッセージは正に国民の声であり、この問題の早期解決を求める意思の表れである。


法曹は、司法という社会インフラの整備として本来公費により養成されなければならず、一時的に公費による養成が途絶えた状態は修復されるべきであり、世代を問わず全ての法曹が公費により養成され、その公的役割を自覚し、十分力を発揮することは、この国の司法制度を利用する全ての人の利益となる。近年の大規模自然災害や新型コロナウイルス禍をはじめとして弁護士の活躍の必要性は高まっており、この状況下で国民のための司法を維持強化するためには、早期にこの問題を解決することが必要である。


この問題は司法の場でも指摘され、名古屋高等裁判所2019年5月30日判決では、「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならない(中略)例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられるが、そのためには、相当の財政的負担が必要となり、これに対する国民的理解も得なければならないところであるから、その判断は立法府に委ねざるを得ない。」とされている。応援メッセージが国会議員の過半数を超えたことからも正に立法府の判断が求められる状況にあるといえる。


そして、埼玉、大阪、愛知県、福岡県及び札幌の各弁護士会が実施した谷間世代に対するアンケート(2022年4月時点で968名から回答)の結果は、法曹として様々な場面で活躍している谷間世代の多くが、問題の早期解決により、この世代の会員の多くが抱いている不公平感や経済的負担感がなくなり、更に公益的場面等で幅広く活躍できる可能性を示している。


さらに、当事者として、かつて2017年裁判所法改正による新たな給付制実現に向けて活発に活動したビギナーズ・ネットが、国会議員にこの問題の解決を求め、活動を再開し、多くの国会議員から応援を受けている。


当連合会は、いわゆる谷間世代に対する国による是正措置の実現を当連合会の重要課題の一つとして掲げており、ビギナーズ・ネットとともに、早期にいわゆる谷間世代への一律給付の実現を求めるものである。



2023年(令和5年)3月31日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治