経済財政運営と改革の基本方針2022の閣議決定を受け、民事法律扶助の一層の充実・強化を求める会長談話


今般、政府は、いわゆる骨太の方針と称される「経済財政運営と改革の基本方針2022」を閣議決定した。この基本方針において、国民生活の安全・安心を確保するための施策として、総合法律支援の充実・強化が明記されたことを、当連合会は歓迎する。


長引くコロナ禍の影響によって、ひとり親家庭等のいわゆる社会的弱者がますます困難な状況に立ち至り、適切な法的支援が十全に提供される必要性が高まっている。貧困の固定化を防止し、国民生活のセーフティネットとして、総合法律支援、とりわけ民事法律扶助がその機能を果たすことは、基本的人権の擁護において極めて重要である。民事法律扶助の在り方を点検し、利用の障壁を可及的に取り除くべく、不断の検討が行われることが必要である。


当連合会は、既に2009年5月29日開催の第60回定期総会における「→司法改革宣言-日弁連創立60周年を迎えて-」において、「容易に司法にアクセスできず、司法救済が受けられない弱い立場の市民が多数取り残される『司法格差』の解消のためには、司法過疎・偏在の解消や民事扶助制度の抜本的改革・・・が必要」とし、「→人間らしい労働と生活を保障するセーフティネットの構築を目指す宣言」では、「生活に困窮した人々があまねく法的支援を受けることができるようにするため、民事法律扶助制度の抜本的改革を進め、対象者・対象事件の範囲と現行の利用者負担のあり方を見直し、同制度の一層の充実発展を目指すこと」を確認している。また、2011年5月27日の第62回定期総会における「→民事司法改革と司法基盤整備の推進に関する決議」においても、民事法律扶助制度の拡充を求め、「法の支配を社会の隅々まで行き渡らせ、民事法律扶助制度を法的セーフティネットとして十分に機能させるためには、以下のことが必要である。」とし、立替償還制を改め原則給付制とするなど、利用者負担の軽減を図ること等を指摘しているところである。


さらに、今日では、社会構造の変化、民事法律扶助の対象となる事件類型の多くが家事事件、自己破産事件等へ変化をしたことを受け、民事法律扶助が社会福祉政策としての側面が強まっていることを踏まえると、上記宣言等で言及をしてきた利用者負担の在り方についての検討は、喫緊の課題であると指摘できる。


本年は、我が国において、民事法律扶助が導入されてから70周年の節目の年である。民事法律扶助制度がより利用しやすいものとなり、同時に、担い手の確保についても持続可能性を持ったものとなるよう、当連合会は、総合法律支援を担う関係諸機関と緊密に連携をとりながら、民事法律扶助のますますの発展と諸課題の解決に向け、その役割を担う所存である。



 2022年(令和4年)6月8日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治