成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止のための実効性ある施策を緊急に実現することを求める会長声明


民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる「民法の一部を改正する法律」(平成30年法律第59号。以下「本法律」という。)が、本日施行された。


我が国の民法は、1896年の制定以来、120年以上もの長きにわたり成年年齢を20歳と定めてきたのであり、今般の引下げは、国民の生活に重大な影響を与える歴史的な法改正である。しかし、それにもかかわらず、懸念される多くの課題が残されたまま施行日を迎えることとなった。


本法律の成立に際し、参議院法務委員会において全会一致で附帯決議がなされ、そこでは、本法律成立後2年以内にいわゆるつけ込み型不当勧誘取消権を創設すること、若年者のマルチ商法等の被害の実態に即した必要な措置を講じること、実践的な消費者教育の実施を図ること、18歳、19歳の若年者への周知徹底や社会的周知のための国民キャンペーン実施を検討すること等が求められていた。これらは、施行まで3年10か月という長期に設定された準備期間のうちに実施されなければならない施策であった。


当連合会としても、成年年齢引下げについては再三にわたり慎重であるべきという意見を表明し、本法律成立に際しても、引下げは拙速とした上で、弊害防止のための実効性ある施策の実現等を求める会長声明を公表していた。さらに2021年4月には、「1年後に迫る成年年齢引下げに伴う弊害防止のための実効性ある施策の実現を求める会長声明」を公表し、改めて政府に対し、前記附帯決議に示されたような成年年齢引下げに伴う弊害防止のための実効性ある施策の実現を求めた。


しかしながら、この間、成年年齢引下げ自体の周知は一定程度進んだものの、18歳、19歳の者が未成年者取消権を失うことにより被害を防げなくなるおそれがあること、そしてそのために悪質な業者のターゲットに一層なりやすくなることといった弊害については、十分な周知徹底がなされているとは言い難い。また、つけ込み型不当勧誘取消権については、本法律成立後2年以内という明確な期限が付されていたにもかかわらず、いまだ創設に至っておらず、ごく一部の被害類型の取消権創設に向けて議論がなされているにすぎない。消費者被害の予防につながる実践的な消費者教育も、全国的に十分に行われているとは言えず、消費者庁が作成した生徒用教材「社会への扉」でさえ、全ての高等学校等で活用されるには至っていない。


成年として新たな一歩を踏み出したばかりの若年者が真っ先に消費者被害に遭うような社会を、我々は決して容認してはならない。当連合会は、政府に対し、成年年齢引下げに伴う若年者の消費者被害防止のための実効性ある施策を緊急に実現することを求めるとともに、今後若年者に生じるおそれのある消費者被害の内容や傾向を速やかに調査・検証し、これらを踏まえた更なる施策を実現することを求める。



 2022年(令和4年)4月1日

日本弁護士連合会
会長 小林 元治