自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律の成立に当たっての会長談話


本日、第204回通常国会において、自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律(以下「本法」という。)が成立した。


本法は、自然災害(暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象により生じた被害をいう。)の被災者等の生活を支援し、被災者等を慰藉する等のため自発的に拠出された金銭を原資として、都道府県又は市町村(特別区を含む。)が一定の配分の基準に従い被災者等に交付する金銭である「自然災害義援金」について、交付された金銭や交付を受ける権利を差し押さえることなどを禁止するものである。


自然災害義援金の差押禁止に関しては、これまで、一般法は制定されておらず、東日本大震災や平成28年熊本地震等の大規模災害に関して5つの個別立法がされ、限定的に対処されてきた。しかし、平成29年九州北部豪雨や平成30年北海道胆振東部地震など個別立法がされなかった災害が数多く存在するところ、これらの自然災害では、自然災害義援金を差し押えることは法律上禁止されていなかった。


全国で毎年のように自然災害が発生する中で、事後的に個別法で対処するというこれまでの対応は、極めて不安定である。災害という不慮の事態に遭った被災者等の苦しみやその心情を慰藉し、生活再建を支援したいという寄附者の善意は、自然災害の規模や範囲、地域、時期を問わず共通であり、優劣を付けられるものではない。それにもかかわらず、特定の自然災害では災害義援金の差押えを禁止し、それ以外の自然災害では災害義援金の差押えを禁止しないというこれまでの対応は、同じ苦しみを抱える被災者等の間に不公平を生じさせるものでもあった。


当連合会は、これらの問題を指摘し、広く、災害対策基本法第2条第1号に定める災害を対象として、義援金の差押えを禁止する一般法の制定を求めてきた(2020年(令和2年)1月17日付け「災害を対象とした義援金の差押えを禁止する一般法の制定を求める意見書」)。


今般成立した本法は、災害の規模や範囲、地域、時期に限定を加えることなく、広く自然災害を対象として、交付される自然災害義援金の差押えを一般的に禁止するもので、全ての災害を対象とした立法を求めてきた当連合会としては、これを高く評価する。


本法の成立を受け、被災者等に交付される自然災害義援金の差押えが禁止されるとともに、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を含む債務整理の手続上も、自然災害義援金を自由財産と同視して被災者等の手元に残すことができるようになるのであって、被災者等の生活再建に大きく資することになる。


当連合会は、引き続き被災者等の支援に徹底して取り組んでいく所存である。



 2021年(令和3年)6月4 日

日本弁護士連合会
会長 荒   中