障害者差別解消法の改正を受けての会長声明


本日、第204回通常国会において、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)の一部を改正する法律が成立した。


2016年(平成28年)4月1日に施行された障害者差別解消法は、行政機関等及び事業者による差別を禁止し、相談体制の整備等について規定をするなど、障害のある人もない人も共に生きる社会の実現を目的とした重要な法律として機能している。


当連合会は、2014年(平成26年)10月3日に「障害者権利条約の完全実施を求める宣言」(以下「宣言」という。)を、2019年(令和元年)11月21日に「障害者差別禁止法制の見直しを求める意見書」(以下「意見書」という。)をそれぞれ公表し、障害者差別解消法を含めた障害者差別禁止法制の整備による障害者権利条約(以下「条約」という。)の完全実施を求めてきた。


この度の法改正(以下「本改正」という。)は、宣言及び意見書において指摘してきた現行法の問題点のうち、これまで努力義務に止まっていた事業者による合理的配慮の提供を義務化するとともに、行政機関相互の連携の強化を図り、障害を理由とする差別を解消するための支援措置を強化することを内容とするものであり、障害を理由とする差別の解消を推進させるものとして積極的に評価できる。特に、事業者による合理的配慮の提供の義務化は差別解消を前進させる重要な改正であり、その効果に大いに期待するところである。当連合会としても、コンプライアンスの実践のため事業者の合理的配慮の履行について啓発・周知を図っていくことや、行政機関の実施する相談体制への専門職としての協力を惜しまない所存である。


ただし、本改正内容の施行日は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日とされているところ、上記改正点は条約の完全実施に向けた第一歩であるから、本改正については速やかな施行により、事業者による合理的配慮の義務化、上記支援措置の具体化・予算化が一日も早く進められるべきである。


その上で、①「差別」の定義規定を設け、禁止の対象として間接差別等が含まれることを明記する、②「障害者」の定義に過去に障害を有した者や将来障害を有する蓋然性のある者が含まれることを明記する、③障害者差別解消支援センターといった相談対応機関や政府から独立した紛争解決機関等を設置し、実効的な体制を整備するなど、条約の完全実施に向けての引き続きの努力が求められる。


当連合会は、今後も障害者差別解消法を含む関連法の改正を求めていくとともに、条約の完全実施に向けて、障害のある人の人権擁護の徹底に取り組んでいく所存である。



 2021年(令和3年)5月28 日

日本弁護士連合会
会長 荒   中


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