プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案についての会長声明


本年3月9日、第204回通常国会に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」(以下「本法案」という。)が提出され、現在衆議院で審議中である。


本法案は、製造事業者等が努めるべき環境配慮設計に関する指針を策定し、指針に適合した製品であることを認定する仕組み(以下、この認定を受けた製品を「認定製品」という。)を設けること、ワンウェイ(使い捨て)プラスチックの提供事業者が取り組むべき判断基準を策定すること等を内容とするものである。


当連合会は、本年3月18日付けで、「今後のプラスチック資源循環政策についての意見書」(以下「意見書」という。)を取りまとめ、①リデュース(発生抑制)の徹底を図ること、②熱回収の割合を限りなく低減させること、③拡大生産者責任及び事業者責任を徹底した循環型社会にふさわしい統一的な法制度を整備すること、④プラスチックに使用される有害化学物質を規制することを含む政策を実施すべき旨の意見を述べたところである。


本法案は、プラスチックの資源循環の促進について、事業者の自主性に任せ、行政指導を重視するものであるが、このような手法は過去の例に鑑みれば実効性が乏しく、プラスチック問題の抜本的解決とはならないことが強く懸念されるところである。本法案が成立した場合であっても、少なくとも、認定製品への積極的支援や、ワンウェイプラスチックを多く提供する事業者への勧告・公表・命令等の厳格な運用等、意見書の①及び②の趣旨に沿った今後の運用は必須である。


また、本法案は、プラスチック資源について、容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(以下「容器包装リサイクル法」という。)によるルートを活用した分別回収を市町村に行わせることを想定しているが、これは、回収・リサイクルのうちで最も費用のかかる分別・回収コストを市町村の負担としているという現状の容器包装リサイクル法の問題点を固定化することになる。意見書の③のとおり、拡大生産者責任(製品の使用・廃棄等の後においても、生産者が適切な処理等の責任を負うという考え方)の徹底が必要であり、分別・回収コストを含めたプラスチック資源の回収・リサイクルの責任を生産者に課すこととするべきである。


さらに、本法案は、プラスチックに使用される有害化学物質の規制について何らの規定も置いていないが、意見書の④のとおり、プラスチック製品の製造事業者等に対し、一定の物質の使用禁止、添加剤のポジティブリスト制(安全性を評価した物質のみを使用可能とする制度)の導入、成分表示の義務化等の生産段階からの規制を導入すべきである。


当連合会は、本法案の審議において、以上の点を踏まえた十分な検討が行われることを強く求めるものである。



 2021年(令和3年)5月21日

日本弁護士連合会
会長 荒   中