特定商取引法等の一部を改正する法律案に関する国会審議についての会長声明
消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特定商取引に関する法律等の一部を改正する法律案(以下「本改正案」という。)が衆議院において可決され、本日、参議院での審議が始まった。
本改正案は、詐欺的な定期購入商法及び送り付け商法への対策や販売預託の原則禁止等を規定している点について一定の評価ができる。
しかし、政府による「デジタル社会の推進」の名の下に、消費者庁の検討会等での議論もないまま、事業者が交付義務を負う書面について、その交付を電磁的方法で行うことを可能とする条項(以下「本条項」という。)が盛り込まれた点については、非常に問題が大きい。この点については、多数の弁護士会や消費者団体、労働・労働福祉団体、地方議会等各種の団体から反対・慎重意見の提出が相次ぎ、当連合会も、契約内容やクーリング・オフ規定を消費者に告知し、契約の是非を考え直す機会を付与する等の消費者保護機能が失われるおそれが強いとして、本年2月18日付けで「特定商取引法及び特定商品預託法の書面交付義務の電子化に反対する意見書」を公表した。さらに衆議院における審議においても、4名中3名の参考人から書面交付義務の全面電子化に反対する意見が述べられた。それにもかかわらず、本条項について全く見直しがなされないまま本改正案が衆議院で可決されたこと、衆議院消費者問題に関する特別委員会において、政省令等の制定や抜本的な消費者被害防止策の検討に向けての附帯決議もなされなかったことは、極めて遺憾である。
当連合会は、参議院において、書面交付義務の電子化によって生じ得る消費者被害の防止について改めて慎重な検討がなされ、抜本的な被害防止策の制度化に向けて本来先行すべき事前拒否者に対する勧誘禁止制度等の実効性ある規制の検討も含め、より充実した審議が行われることを求める。
2021年(令和3年)5月21日
日本弁護士連合会
会長 荒 中