国連子どもの権利委員会の総括所見に関する会長声明


国連子どもの権利委員会(以下「委員会」という。)は、子どもの権利条約(以下「条約」という。)の第4回・第5回日本政府報告に対し、2019年1月16日及び17日に行われた審査を踏まえ、同年2月1日付けで総括所見を発表し、多項目にわたって懸念の表明と勧告を行った。


とりわけ緊急の措置が取られなければならない分野(以下「緊急分野」という。)であると委員会が指摘した差別の禁止(条約第2条)に関しては、委員会は、包括的な反差別法の制定、婚外子差別を含むあらゆる子どもに対する差別的規定の撤廃、マイノリティへの差別防止措置の強化を勧告している(18項)。これらは、他の条約機関からも繰り返し勧告を受けている事項であり、日本政府はこれを真摯に受け止め、早急に対応すべきである。


また、同じく緊急分野と指摘された子どもの意見の尊重(条約第12条)に関しては、日本の現状は、22項で勧告されている「子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明する権利を保障し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保」する状況にはほど遠い。勧告に従い、子どもの参加権、意見表明権が正当に確保されることを速やかに求める。


同様に、緊急分野と指摘された体罰については、家庭を含め、あらゆる場面のあらゆる体罰を法律で明示的かつ全面的に禁止することや、あらゆる現場で実際に体罰を解消するための措置を強化することを勧告している(26項)。当連合会の「子どもに対する体罰及びその他の残虐な又は品位を傷つける形態の罰の根絶を求める意見書」(2015年3月19日)のとおり、速やかな立法措置及び体罰根絶のための措置を求める。  


このほか、子どもの権利に関する包括的な法律の制定(7項)、さらに分野横断的に子どもの権利を保護することができる調整機関並びに評価及び監視のための機関を設置すること(9項)など、多くの勧告がなされている。また、子どもの権利保障をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准(49項)とともに、日本がまだ加盟していない中核的国際人権文書への批准・加入も勧告されている(50項)。 


日本政府は、かかる勧告を真摯に受け止め、省庁横断的なフォローアップを行うとともに、市民社会、そして何より子どもとの対話を通じ、子どもの権利保障を拡充すべく、よりよい制度改善に向けて行動すべきである。


当連合会は、引き続き、他のNGO団体等と連携の上、日本政府に対し、建設的な対話の機会を申し入れるなどして、これらの課題の解決のために取り組む所存である。


 2019年(平成31年)2月25日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎