世界人権宣言70周年に当たっての会長談話

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世界人権宣言は、1948年12月10日、国連総会で採択されました。第二次世界大戦での悲惨な人権侵害を二度と繰り返さないという国際社会の誓いが原動力となって起草された世界人権宣言は、本日、採択から70周年を迎えました。  


前文と30か条の条文からなる世界人権宣言は、全ての国の全ての人が生まれながらに享受すべき基本的な市民的、文化的、経済的、政治的及び社会的権利を詳細に規定しています。その基本原理は、90か国を超える国々の憲法典や法律に組み入れられ、今なお、その価値が法形式を変えて世界各国で生き続けています。  


世界人権宣言は、多くの国際人権宣言や人権諸条約の基礎をなすものです。日本が批准している代表的な人権条約である市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、拷問等禁止条約、障害者権利条約、強制失踪条約は、いずれも世界人権宣言が源泉となって制定されました。  


日本は、これらの条約に基づき、人権を尊重し、保護し、充足する義務を負っています。これらの条約は、世界人権宣言と相まって、人権についての国際基準を示すものとして、国内の裁判において活用されるとともに、政策策定等のプロセスにおいても重要な役割を果たすことが期待されています。


しかしながら、日本は、今も多くの人権問題を抱えており、世界人権宣言や人権条約が十分に活かされているとは言えません。  

当連合会はarrow_blue_1.gif2008年の総会決議において、人権条約に基づく個人通報制度や国内人権機関の創設などを求めていますが、それもいまだに実現されていません。  


また、世界に目を向けると、武力紛争が絶えることはなく、人権条約で禁止されているはずの拷問、迫害、無差別の虐殺も続いています。飢餓や貧困も重大な人権侵害です。世界人権宣言は、500を超える言語に翻訳され、人権保障の大切さを広く知らしめる役割を果たしてきている一方、前文に謳われている「恐怖及び欠乏のない世界の到来」までには、なお解決すべき課題が山積しています。


世界人権宣言の採択から70周年を迎える今日、人権の保障が、個人の尊厳の確保と平和の実現に不可欠であることを今一度思い起こし、当連合会として、世界人権宣言をはじめとする国際的な水準に則り、これからも基本的人権を擁護し、社会正義を実現する活動を続けることを決意します。


       

 2018年(平成30年)12月10日

             日本弁護士連合会
           会長 菊地 裕太郎