「大崎事件」検察官の特別抗告に対する会長声明


いわゆる「大崎事件」の再審開始決定を維持し、検察官による即時抗告を棄却した福岡高等裁判所宮崎支部の決定に対して、昨日、検察官が特別抗告の申立てをしたことは、誠に遺憾である。  


第三次再審請求即時抗告審の福岡高等裁判所宮崎支部は、第三次再審請求審において提出された法医学鑑定について、十分な信用性を有するものと評価した。


そして、同鑑定が確定審において提出されていたとすれば、確定判決における事実認定は維持し得なくなるとして、「無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠」(刑事訴訟法435条6号)に該当する旨判断し、検察官の即時抗告を棄却して三度目の再審開始を認めた。


この決定につき、当連合会は、去る3月12日、検察官に対し、三度にわたる再審開始決定の重みを理解し、特別抗告をすることなく速やかに再審公判に移行させるよう求めていたところである。


再審開始決定に対する検察官の不服申立ては、無辜の迅速な救済という再審制度の理念に反しており、禁止されるべきである。


検察官に望まれるのは、公益の代表者として、この決定を謙虚に受け止め、再審開始後の審理において公正な裁判を実現することである。審理の開始自体に異を唱える特別抗告は、いたずらに審理を長引かせるだけである。


原口アヤ子氏は、現在90歳の高齢となっており、再審無罪判決による権利救済には、もはや一刻の猶予も許されない。  


当連合会は改めて、一日も早く再審開始決定を確定させ、再審公判において迅速に審理の上、無罪判決が言い渡されるよう求める。



  2018年(平成30年)3月20日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋