ホームレスの自立の支援に関する特別措置法の期限延長を求める会長声明


ホームレスの自立の支援に関する特別措置法(以下「本法」という。)が、2017年8月7日の期限到来をもって効力を失うことが予定されている。

当連合会は、2012年5月1日付け「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の改正に関する意見書」を発表し、当時予定されていた同年8月の期限到来をもって本法を失効させることなく一定期間延長し、延長期間内に本法の名称を「住宅困窮者に対する生存権保障に関する法律」に改める等して恒久法化の検討を求めた。その後、本法は5年間施行期限が延長されるとともに、2015年4月からは生活困窮者自立支援法(以下「新法」という。)が施行されている。

本法においては、①ホームレス総合相談推進事業(巡回相談指導等事業)、②ホームレス緊急一時宿泊事業(シェルター事業)、③ホームレス自立支援事業(ホームレス自立支援センター)等が実施されていたが、新法の施行に伴い、①については新法の自立相談支援事業に、②及び③については新法の一時生活支援事業に財源の位置づけが移行して実施されている。また、本法のシェルターやホームレス自立支援センターにおける職員の人件費についても、新法の自立相談支援事業に移行して実施されている。

しかし、本法は「ホームレスに関する問題の解決」を法の目的として明記し(1条)、国と地方自治体に対し基本方針・実施計画の策定を義務付け(8条、9条)、国に対しホームレスの実態に関する全国調査の実施を義務付けており(14条)、新法実施後も本法に基づきこれらの計画策定や全国調査が実施されている。一方、新法には、このような文言や規定は全くないため、本法が上記期限到来によって失効すれば、これらの計画策定や実態調査が行われなくなるおそれが強い。

国の調査によって把握された路上生活者の数は減少したとはいえ、2016年1月の調査によってもなお6235人が確認されており、前年の6541人と比べても高止まりしている(実際はその2.8倍の路上生活者が存在するとの民間団体の調査もある。)。ホームレス問題の解決を国や地方自治体の責務として法文上明記し、実態調査や支援計画の策定等を継続実施する必要性が全く失われていないことは明らかである。

ホームレス問題の解決を恒久法に位置付けるに当たっては、2018年度に予定されている新法の見直しに合わせて、新法の中に盛り込む方向性や、当連合会が前述の2012年意見書で主張したように住宅困窮者の権利法を新法から切り出して制定する方向性が考えられる。いずれにせよ、2017年8月の本法の施行期限到来によって、ホームレス問題解決の理念等を明記した根拠法がなくなる事態があってはならない。

したがって、本法の施行期限を一定期間延長した上で、その期間内にホームレス問題の解決を恒久法に位置付ける方策を検討し必要な法改正を行うことを、改めて求める次第である。


 

  2017年(平成29年)1月27日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋