平成28年熊本地震における震災関連死の審査に関する会長声明


熊本地震における震災関連死の審査について、市町村から審査を県に委託したいという要望が出されているとの報道がある(2016年5月11日NHK報道)。

震災関連死の審査は、弔慰金の支給不支給を決するだけでなく、災害による死であるか否かを公的に決めるものであり、亡くなられた被災者及び御遺族にとって、震災関連死の認定が適正に行われることは極めて重要である。

当連合会は、東日本大震災の後、2013年9月13日付けで「震災関連死の審査に関する意見書」を公表し、震災関連死審査の在り方について意見を述べているが、そのうち以下の点について、改めて関係各機関に要望する。

関連死の審査を適正に行うためには、被災地の震災前の状況、被害状況、各避難所の状況、亡くなられた被災者の方が震災前後に利用していた医療機関や介護事業者の地理的関係や震災前の状況、震災後の復旧状況など、様々な情報を元に、そこから十分な調査を行う必要がある。こういった事情を最も把握しているのは被災地の市町村であるから、災害弔慰金の支給に関する審査は被災地市町村が設置する審査会で行うことが適当であり、県への審査事務の委託はできる限り避けるべきである。被災地市町村は復旧・復興の過大な業務を抱えている状況にあるが、国や県が職員の派遣等を含め、被災地市町村の震災関連死審査業務を支援するべきである。

また、震災関連死の認定は、法律上の相当因果関係の有無の判断であって、医学上の因果関係の有無ではない。そして、法律上の相当因果関係の有無の判断については、事案によっては判断に相当な困難を伴うものであることから、審査委員には、法律実務に精通した専門家を、できれば3名、少なくとも複数名を置くことにより、その判断の知見が反映される体制とすることが求められる。当連合会及び弁護士会も委員の派遣・推薦について協力を惜しまない。


 

 2016年(平成28年)5月20日

             日本弁護士連合会
           会長 中本 和洋