障害者差別解消法の成立にあたっての会長声明

本日、国会で、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立した。



本法律は、2006年に国連で採択され130ヵ国が批准している障害のある人の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)の批准のための国内法整備として、行政機関等及び事業者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止を義務付け、また、行政機関等に対し、過重な負担でない限り、社会的障壁の除去につき合理的配慮義務を課すものである。



当連合会は、2001年11月に開催した人権擁護大会で「障害のある人に対する差別を禁止する法律の制定を求める宣言」を採択して以来、一貫して同法の制定を求めてきたものであり、我が国で障害を理由とする差別を禁止する個別法がようやく成立したことを、評価するものである。



しかし、本法律の内容は、障害者権利条約及び当連合会が従前から求めてきた内容と比べると不十分な点があり、特に、以下の課題が残されている。



第1に、差別の一類型である合理的配慮義務違反につき、行政機関等は法的義務となっているのに対し、民間事業者は努力義務にとどまっている点である。社会に広く存在する差別から障害のある人を救済するためには、また、障害者権利条約の要請からしても、民間事業者についても法的義務へと移行するべきである。



第2に、本法律では、権利侵害の救済機関として新たな組織を設けず、既存の機関を活用していくことが想定されているが、実効性ある権利救済のためには、第三者性のある救済機関が必要であることは自明である。障害者権利条約33条2項が条約上の権利の実施を促進、保護、監視する機関を設けることを締約国の義務としていることからも、当連合会がかねてから提言しているとおり、パリ原則に則った政府から独立した人権機関の創設が急務である。



第3に、本法律は、差別的取扱いや合理的配慮の具体的内容など、重要事項の定めをガイドラインに委ねている。このガイドラインは、障害者権利条約の各則の趣旨に適合する内容となるよう具体化するとともに、障害のある人の実状にあった内容となるよう、国会の関与などの制度的担保が必要である。



本法律は附則で、平成28年4月の施行から3年経過時に、民間事業者の合理的配慮のあり方を含めて、本法律についての所要の見直しを行うこととしているが、当連合会は、施行後3年を待たず、可及的速やかに本法律を見直し、これらの課題を解決していくことを強く求めるものである。 

 

2013年(平成25年)6月19日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司

 

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