消費者教育の推進に関する法律の成立に当たっての会長声明

本日、衆議院本会議で、消費者教育の推進に関する法律(以下「消費者教育推進法」という。)が成立した。



当連合会は、2009年2月19日付けで「消費者教育推進法の制定を求める意見書」を公表し、2011年4月15日付けで「消費者の権利を保障し消費者市民教育を推進する実効性のある消費者教育推進法制定を求める意見書」を公表して、消費者教育推進法の制定を求めてきた。



近年、消費者被害は、高額化、高齢化が進むとともに、情報化や国際化等の社会情勢の変化に伴って手口の複雑さや被害回復の困難さも増し、深刻な状態が続いている。また、地球環境問題、南北格差や地域経済の疲弊といった消費に関連する社会問題が深刻化しており、持続可能な消費の確立が求められている。



今回成立した消費者教育推進法は、国や地方公共団体の消費者教育についての責務を明確にし、消費者教育の計画的な推進や多様な関係者が参加する消費者教育推進のための協議会の設置等の推進体制の整備を図る重要な法律である。また、消費者が商品選択と消費者としての行動を通じて主体的、能動的に社会参加し、公正で持続可能な社会を作ることに貢献する「消費者市民社会」の考え方を正面から取り入れた点で極めて画期的な意義を有している。



同時に、全国各地の学校教育、社会教育の現場で充実した消費者教育がなされるようにするためには、解決すべき課題も多い。消費者教育推進法の定める消費者教育推進のための財政措置を十分なものとすること、学校等で教育を担う人材の育成及び相談員の研修を充実させること、教材の充実等が重要であるが、それにとどまらず、消費者教育、とりわけ今回の立法で取り入れられた「消費者市民社会」についての教育に関する教員等の研修体制の整備や、先進的な取組事例の調査・普及を図ることが急務となっている。



当連合会は、国及び地方公共団体に対し、消費者教育推進法の迅速かつ適正な執行、及び更なる消費者教育の充実のため必要な施策を実施するよう求めるものである。



2012年(平成24年)8月10日

日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司