外国籍会員の参与員選任を求める会長声明

岡山弁護士会は、2011年(平成23年)10月17日、岡山家庭裁判所からの推薦依頼を受けて、2012年(平成24年)1月1日からの任期の参与員について、2011年11月7日付けにて、外国籍弁護士1人を含む15人の参与員候補者を同会会員の中から推薦した。



ところが、2011年12月12日、岡山家庭裁判所から、日本国籍を有しない者については参与員に選任しない旨の連絡があった。その理由の概要は、参与員は、審判に立ち会って家事審判官に意見を述べ(家事審判法3条1項)、あるいは、人事訴訟において、審理または和解の試みに立ち会って、裁判所に意見を述べる(人事訴訟法9条1項)立場にあるため、公権力の行使または国家意思の形成への参画に携わる公務員に該当するというものである。



当連合会は、2009年(平成21年)3月18日に「外国籍調停委員・司法委員の採用を求める意見書」を取りまとめ、(1) 法律の規定なく外国籍者の就任を制限できる公務員職は、当該職種への外国籍者の就任を求めることが国民主権原理と本質的に両立しないものに限定されるべきこと、(2) このような職種以外の公務員職については、法律による制限がない限り就任の制限が認められないこと、(3) 仮に法律をもって就任を制限するとしても真にやむ得ない理由が認められる職種に限定されるべきこと、を明らかにした。そして、弁護士としての専門的知識を備え、人格識見を備えた外国籍の弁護士会会員を、調停委員及び司法委員の職種から排除することは、当該会員の不合理な差別を受けない権利及び職業選択の自由の侵害に該当するとして、その採用を最高裁判所に対して求めた。しかしながら、その後最高裁判所の対応はまったく変化しておらず、2011年も大阪、兵庫県、京都、仙台及び東京の各弁護士会が外国籍会員を調停委員若しくは司法委員として推薦したところ、いずれも各地方裁判所若しくは家庭裁判所から、最高裁に任命を上申しない旨の回答を受けた。



参与員においても、その職務の内容は裁判所・家事審判官の補助機能しかなく、外国籍会員の就任を認めることが国民主権と本質的に両立しないとは到底いえない。法律にも最高裁判所規則にも、参与員について日本国籍を要求する条項は存在しない。したがって、今回の岡山家庭裁判所の拒絶は、国籍を理由とする違法な差別というほかない。



よって、当連合会は、岡山弁護士会が推薦した外国籍の会員についても、参与員に選任するよう岡山家庭裁判所に対し求めるとともに、再度、調停委員・司法委員を含む司法関係職について、職務の内容を具体的に検討することなく、外国籍会員の就任を拒否することがないように各裁判所に求めるものである。
 

2012年(平成24年)2月15日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児