日弁連新聞 第565号
臨時総会開催
会則中一部改正の件など全議案を可決
3月5日弁護士会館
臨時総会が開催され、代理出席を含め9862人が出席した。本総会では、希望があった弁護士会および支部の会議室でのインターネット中継による傍聴が導入された。
会則中一部改正(定期総会の開催時期及び開催地並びに総会代理数及び議決権行使方法)の件など4議案
①災害の発生その他のやむを得ない事由により6月に定期総会を開催することが困難な場合、理事会の議を経て、7月以降の開催および開催地の変更を可能とすること、②総会において1人の会員が代理できる議決権の数を50から100に変更することなどを内容とするもの。
②につき「可能な限り会員が議場で議論して議決権を行使すべきだが、今回の改正は緊急事態対応のために必要」などの意見が出され、いずれも賛成多数で可決された。
会則中一部改正(通信システムを利用した理事会等の出席)の件など2議案
理事会等の会議の場所以外から理事および常務理事が出席できること、あらかじめ会長の許可を得ることにより通信システムを用いて理事会等に出席できることなどを内容とするもので、いずれも賛成多数で可決された。
会則中一部改正(通信システムを利用した法定委員会出席)の件など9議案
資格審査会等の法定委員会において、災害の発生その他のやむを得ない事由がある場合に、委員や対象弁護士等が通信システムを利用して出席することを認めるもので、いずれも賛成多数で可決された。
債務整理事件処理の規律を定める規程中一部改正の件
標記規程の効力を有する期限をさらに5年間(最長2026年3月末日まで)延長するもので、賛成多数で可決された。
小規模弁護士会助成に関する規程中一部改正の件
基準会員数による区分を見直し、助成金の支給額を各小規模弁護士会の規模に見合ったものとする改正を行うもので、賛成多数で可決された。
営利業務の届出等に関する規程中一部改正の件など2議案
各弁護士会が会規等で定めるところにより、会員が営利業務の届出を行う場合に、登記事項証明書の添付に代えて登記情報により所属する法人に関する情報の確認を可能とするもので、いずれも賛成多数で可決された。
新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言
日弁連は2月19日、「新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言書」を取りまとめ、同月22日付で厚生労働大臣などに提出した。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、深刻な人権問題、社会問題、経済問題などが複合的に生じており、迅速なワクチン導入に対する期待は、確かに大きい。
しかし、新型コロナウイルスのワクチン開発は極めて短期間のうちに行われ、しかも、従来にない新しいタイプのワクチンも多く、不測の副反応の懸念や、現在の知見が及ばない有害事象の発生も否定できない。
国は、ワクチン接種の全過程で、その責任において問題を適切に予測して可及的に防止する措置を講じるとともに、問題が発生したときには適切・迅速に対応することが必要不可欠である。かかる観点から、次のとおり提言を行った。
①短期間で開発されたワクチンを大勢に使用することから、迅速性のみならず、医学的見地から承認を慎重に行うこと
②自己決定権が尊重された接種のために、適時・的確な情報公開やインフォームドコンセントを徹底すること
③接種が個人の選択で行われるべきことの理解を広め、偏見差別防止やプライバシー保護のための施策を講じること
④接種が大規模になることから、自治体の意向を尊重しつつ的確に連携し、補助体制を整備すること
⑤有効性・安全性について責任を持ち、副反応などへの万全の措置を講じ、適切かつ十分な対応を行うこと
◇
既にワクチン接種は進み、副反応などについて各種報道がなされているところであり、提言に沿った適切な運用がなされているかを引き続き注視する必要がある。
(事務次長 松田由貴)
所有者不明土地問題の解決に向けて
民法・不動産登記法の改正案、国庫帰属に関する法律案提出
所有者不明土地の発生防止、土地の適正利用、相続による権利承継の円滑化等を図るため、3月5日、民法等の一部を改正する法律案(民法・不動産登記法等改正)と、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案(新法)が、国会に提出された。
民法の改正
境界調査等のための隣地使用権、ライフラインの設備設置権、越境した竹木の枝の切除など相隣関係規定を整備する。
また、裁判所の手続を経た上で不明共有者以外の共有者で共有物の変更行為や管理行為を決することを可能にする制度、不明共有者の持分取得・譲渡に関する特則、共有者の持分の過半数で代表者である管理者を選任できる共有物の管理者制度などが創設され、共有制度の見直しが図られる。
相続制度も見直される。遺産分割において、相続人が寄与分や特別受益を考慮した具体的相続分による遺産分割を求められる期間が相続開始時から10年に制限される。
さらに、所有者不明土地・建物の管理命令制度の創設により、裁判所が選任した管理人に利用改良行為権限を付与し、裁判所の許可を得れば売却等も可能とする。管理不全土地・建物についても管理命令制度が創設された。
不動産登記法の改正
不動産を取得した相続人に対し、その事実を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることを義務付ける(過料の制裁を伴う)。一方、登記手続の負担軽減を図るため、相続人申告登記制度、所有不動産記録証明制度を新設する。また、所有権の登記名義人には氏名・名称・住所変更の登記申請が義務付けられるほか、形骸化した登記の抹消手続の簡略化も図られる。
国庫帰属法の新設
相続または相続人に対する遺贈による土地の取得者は、法務大臣に対し、土地所有権を国庫に帰属させる承認を求めることができる。要件は厳格で、通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する場合等では承認が得られない。
施行時期
原則として、公布の日から2年以内に施行される。
(所有者不明土地問題等に関するワーキンググループ 副座長 大桐代真子)
少年法改正法案国会提出
政府は2月19日、罪を犯した18歳・19歳の者の手続・処遇に関する「少年法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出した。
改正法案の概要と評価
適用年齢および基本的枠組みを維持
改正法案では、18歳・19歳の者について、少年法の適用対象である「少年」と位置付け、同法1条の健全育成目的の対象であることを明確にした上で、「特定少年」と呼ぶこととした。そして、特定少年についても、全ての事件を家裁に送致し、少年鑑別所での観護措置を行い、家裁調査官が科学的専門的知識を活用して調査をした上で、保護観察や少年院送致等の保護処分を行う、という現行少年法の基本的枠組みをおおむね維持した。また、保護者の定義も変更はなく、保護者に対する措置も適用される。
これらの点は評価できる。
特定少年の特例
他方で、特定少年の特例として新たに章を設け、①ぐ犯の規定は適用しない、②「原則逆送」の対象事件を、強盗罪等を含む短期1年以上の罪の事件まで拡大する、③保護処分は、6月の保護観察、2年の保護観察(遵守事項違反の場合、1年以内の少年院収容が可能)、少年院送致(3年以下の期間を定める)の3種類とし、これらは「犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において決定されなければならない」とする、④推知報道について、逆送されて公判請求された段階で解禁する、⑤不定期刑や資格制限排除の特則は適用しない、とした。 いずれもこれまでの少年法の内容を後退させるものであり、大きな問題を含んでおり許容できない。
今後の予定
法務省は、2022年4月に民法の成年年齢引下げと同時施行するために、今通常国会での成立を目指すと報じられている。日弁連としては、国会審議において、前述の問題点が解消されるよう、引き続き取り組みを進めていく必要がある。
(子どもの権利委員会少年法・裁判員裁判対策チーム 座長 須納瀬学)
2021年度役員紹介
3月12日に開催された代議員会(本人出席214人、代理出席354人)において、2021年度役員が選出された。就任に当たり、15人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。
矢吹 公敏(東京・39期)
[出身]東京都
[抱負]国際関係の各委員会、ADRセンター、FATF対応、依頼者と弁護士の通信秘密保護、選挙管理、弁護士推薦、最高裁裁判官推薦諮問などを担当します。法の支配を確保し、市民の方々に貢献できる日弁連となるように努力します。
三原 秀哲(第一東京・38期)
[出身]神奈川県
[抱負]財務・経理、民事司法改革総合推進本部、民事裁判手続等のIT化、司法制度調査会、外国弁護士及び国際法律業務などを担当します。会長を補佐し、会員の皆さまの付託に応えるべく、誠実に職務に精励します。
相原 佳子(第一東京・43期)
[出身]愛媛県
[抱負]広報、子どもの権利、全面的国選付添人制度実現本部、家事法制、市民のための法教育などを担当します。会長を補佐し、日弁連が直面する諸課題に誠意をもって取り組みます。
神田 安積(第二東京・45期)
[出身]静岡県
[抱負]法曹養成、刑事弁護、取調べの可視化、会則改正などを担当します。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念は、日弁連の原点でもあります。弁護士を必要とする人たちの期待に応えるために誠実に取り組みます。
佐谷 道浩(茨城県・43期)
[出身]群馬県
[抱負]情報問題対策、国内人権機関実現、研修委員会、日弁連総合研修センター、国際人権問題などを担当します。基本的人権の擁護と社会正義の実現のため、会長を補佐し、他の副会長と協力しつつ、誠実に取り組みます。
横山 幸子(栃木県・40期)
[出身]東京都
[抱負]両性の平等、犯罪被害者支援、民事介入暴力対策、弁護士業務妨害対策、人権擁護大会などを担当します。執行部と委員会との意思疎通を図り、また日弁連外部の意見にも耳を傾けながら、会長を補佐して頑張ります。
小此木 清(群馬・44期)
[出身]群馬県
[抱負]綱紀・懲戒、民事裁判、裁判迅速化、倒産法制、立法対策、所有者不明土地、信託、住宅紛争、高齢者・障害者、中小企業(国際業務支援を含む)を担当します。会長を補佐し、多様な社会的課題を解決・実現する法的仕組みづくりに取り組んでいきます。
田中 宏(大阪・35期)
[出身]和歌山県
[抱負]弁護士業務改革、リーガル・アクセス・センター、ひまわりキャリアサポートセンターなどの業務領域の拡大分野および弁護士倫理、綱紀審査会などの内部自治分野を担当します。弁護士の魅力を高めるべく取り組んでいきます。
土井 裕明(滋賀・48期)
[出身]北海道
[抱負]死刑廃止・刑罰制度改革、国選弁護、貧困問題対策、労働法制、弁護士会照会制度などを担当します。日弁連の活動が、地方の弁護士会や小規模弁護士会にもしっかり伝わるように努めたいと思います。
井口 浩治(愛知県・39期)
[出身]岐阜県
[抱負]司法修習、司法修習費用問題対策本部、若手弁護士サポートセンター、日弁連法務研究財団などを担当します。会長を補佐し、若手会員、司法修習生のサポート等を中心とする日弁連の諸課題実現に取り組みます。
高橋 敬幸(鳥取県・31期)
[出身]鳥取県
[抱負]多様性を確保して議論を尽くし、会員の皆さまの人権擁護の取り組みや日常業務に役立つように尽力します。市民会議、税制、公害対策・環境保全、高齢者・障害者権利支援センター、司法シンポジウム、民事裁判手続等のIT化、小規模弁護士会協議会などを担当します。
原 章夫(長崎県・40期)
[出身]福岡県
[抱負]消費者問題、公設事務所・法律相談センター、中小企業法律支援センター、業際・非弁・非弁提携問題、日本弁護士政治連盟などを担当します。弁護士へのアクセスを改善し、基本的人権の擁護と社会正義の実現に努めます。
十河 弘(仙台・48期)
[出身]岡山県
[抱負]COVID―19対策本部、憲法問題対策本部、災害復興支援、日弁連行政問題対応センターなどを担当します。会長を補佐し、憲法価値の実現、コロナ禍対策、災害復興支援等、日弁連の諸課題に尽力します。
八木 宏樹(札幌・48期)
[出身]秋田県
[抱負]知的財産、弁護士任官推進、裁判官制度改革・地域司法計画、総合法律支援本部、法律サービス展開本部などを担当します。力強く、社会に期待される日弁連を目指して尽力します。
岩﨑 淳司(高知・46期)
[出身]大分県
[抱負]人権擁護委員会、男女共同参画推進本部、法科大学院センターなどを担当します。コロナ禍がもたらした新たな人権課題、日弁連における男女共同参画の推進、我々の後輩の養成、これら諸課題に積極的に取り組みます。
理事
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監事
- 日向 隆(東京)
- 前川 晶(第一東京)
- 田下 佳代(長野県)
- 小谷 英男(大阪)
- 中西 正洋(三重)
弁護士任官者の紹介
4月1日付で次の会員が裁判官に任官した。
柴田 義人氏
50期(元第二東京弁護士会)
ビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所外国法共同事業パートナー、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。
〈初任地 大阪高裁〉
元芳 哲郎氏
55期(元第二東京弁護士会)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。
〈初任地 東京高裁〉
西村 甲児氏
58期(元奈良弁護士会)
あすか法律事務所に勤務。
〈初任地 高松高裁〉
特定商取引法および特定商品預託法の書面交付義務の電子化に反対
特定商取引法及び特定商品預託法の書面交付義務の電子化に反対する意見書
日弁連は2月18日、「特定商取引法及び特定商品預託法の書面交付義務の電子化に反対する意見書」を取りまとめ、同日付で内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、経済産業大臣、消費者庁長官、各政党などに提出した。
書面交付義務の電子化の問題点
政府は3月5日、特定商取引法および特定商品預託法における書面交付義務の電子化を容認する改正法案を閣議決定し、国会に提出した。これは、デジタル社会を推進する政府の方針の一環として、オンライン契約に限定せず、訪問販売等の対面取引においても一律に交付書面の電子化を容認するものである。しかし、電子化に伴う消費者被害の増加や実効性ある被害防止策についてはほとんど議論されていない。
これまで特定商取引法や特定商品預託法では、書面記載事項や交付義務を厳格に規定し、不当な勧誘によって消費者被害が発生しやすい取引類型について、不利な契約条件に気付かせ、冷静に考え直す機会(クーリング・オフ)を付与してきた。しかし、改正法案はこれらの消費者保護機能を大きく低下させる危険性が高い。改正法案に対しては、各地の弁護士会や消費者団体などから次々と反対意見が出されており、連携して対応を進めている。
意見書の内容
意見書は、特定商取引法や特定商品預託法が書面交付義務を定めた趣旨や消費者保護機能を改めて整理した上で、電子化によって害される消費者の利益を具体的に指摘した。そして、デジタル社会にあっても紙による書面交付の必要性は変わらず、拙速に電子化を導入すべきではないこと、現に多発している消費者被害に対する実効性ある規制強化を先行して検討すべきことを提言した。
(消費者問題対策委員会 副委員長 小林由紀)
日弁連短信
委員会活動のニューノーマル
2020年度の日弁連は、コロナ禍が続くという未曽有の事態の中で、その活動の在り方を探し続けてきた。
その中でも、好むと好まざるとにかかわらず、ウェブ会議というものが革命的な変化をもたらしたことは間違いない。
従来、委員会の会議とは、全国各地から委員が集まり、リアルな空気感の中で活動と結束を深めるものであったが、感染症の感染拡大により、それはままならなくなった。そして、しばらく活動の停滞を余儀なくされた。しかしその間、委員の活動力はただ眠っていたのではなく、時機を待っていたのであり、身近なツールとしてウェブ会議という代替手段が浸透するとともに、一気に休眠打破が訪れた。
すなわち、ウェブ会議による委員会開催を行うことで、加速度的に議論の整理が進み、懸案事項に関する各種意見書案や声明案も次々仕上げられるようになったのである。移動や交流に時間をかけていない分、余計に熱量が込められた感もあった。
例えば、私が担当した消費者問題関係の意見書等だけでも、次のようなものを公表している。
給与ファクタリングの取締りを求める会長声明、違法な事業者ファクタリングの取締りを求める会長声明、インターネット通販での定期購入契約の被害防止に関する意見書、インターネット上の破産者情報拡散防止に関する意見書、消費者裁判手続特例法の見直しに関する意見書、連鎖販売取引における若年者被害防止に関する意見書、販売預託商法の全面禁止に関する会長談話、送り付け商法の禁止を求める意見書、景表法の課徴金制度の強化を求める意見書、実効的な発信者情報開示請求のための意見書、消費者契約法の見直しの方向性に関する意見書、特商法・預託法の書面交付義務の電子化に反対する意見書、賃貸住宅管理業務適正化法施行規則等についての意見書、電子商取引における消費者被害の救済に関する意見書。
顔を合わせた会議が本来の在り方であり、交流を含め、その方が好ましいことは言うまでもない。しかし、コロナ禍において、新しい形で検討を進め、結果として多くの意見書等を世に問うことができたことは、大変意義深いと感じる。さまざまな場面でニューノーマルが求められる中、これからも、各局面に応じた柔軟な活動の在り方を探していく必要があろう。
(事務次長 畑中隆爾)
同性の者にも事実上婚姻関係と同様の事情にある者として法の平等な適用を
同性の者も事実上婚姻関係と同様の事情にある者として法の平等な適用を受けるべきことに関する意見書
日弁連は2月18日、「同性の者も事実上婚姻関係と同様の事情にある者として法の平等な適用を受けるべきことに関する意見書」を取りまとめ、翌19日付で、内閣総理大臣、法務大臣、厚生労働大臣、都道府県知事、政令指定都市市長、警察庁長官、衆議院議長および参議院議長に提出した。
意見の趣旨
国および地方公共団体は、法令等における「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」等の解釈において、法令上の性別が同じ者を除外することなく、法を平等に適用し、その保護を図るべきである。
取りまとめの背景
日弁連は、2019年7月18日付「同性の当事者による婚姻に関する意見書」の中で、国に対し、法令上の性別が同じ者同士の婚姻を認め、これに関連する法令の改正を速やかに行うよう求めたが、いまだ改正はされていない。
同性の者が、婚姻はできないが(または望まないが)共同の生活を送ることは、現実に既に生じている家族の関係の一つである。
現在、多数の法令に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」等について法律上の配偶者と同様の扱いをする定めが置かれている。判例法理でも、「いわゆる内縁」は「婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない」(最二小判昭33・4・11)として、いくつかの場面で婚姻と同様の保護を認めている。
しかし、いまだ同性婚が認められていないことから、性別が同じ者同士の場合には、これらの法令等の適用を受けることさえ困難になっている。そこで、平等原則の観点から、意見書を取りまとめた。
(両性の平等に関する委員会LGBTの権利に関するプロジェクトチーム 座長 本多広高)
全国一斉
新型コロナウイルス感染症
生活相談ホットラインを実施
2月25日午前10時から午後7時まで、全国52の弁護士会の協力を得て、フリーダイヤルによる全国一斉ホットライン(電話相談会)を実施した。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、勤務先の休業や解雇・雇い止めなどにより収入が絶たれたり減少したりしたことが原因で、生活に困窮する人が増加している。その中には、家賃や住宅ローンの支払いが困難となって住居喪失の危機にある人も少なくない。
また、金融庁、全国銀行協会、日弁連などが中心となって「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」にコロナ特則を設け、2020年12月1日から新型コロナウイルス感染症の影響を受けた債務者への適用が開始されている。この特則により、新型コロナウイルス感染症の影響で債務の返済が困難になった個人や個人事業主が、破産や民事再生等の法的手続によらずに住宅ローンなどの既存債務を整理し、一部の財産を手元に残すことが可能になった。
このような状況の中で、全国各地の弁護士が無料で市民から相談を受ける機会を設ける必要があると考え、日弁連の災害復興支援委員会・貧困問題対策本部・消費者問題対策委員会が共働して、ホットラインの企画・準備・運営を行った。
ホットライン当日は、債務に関する相談や、公的支援制度の説明を求めるもの、解雇や休業手当等の労働問題に関するものなど、全国で850件を超えるさまざまな相談が寄せられた。各弁護士会で、多くの会員と事務局職員に尽力いただいたことに改めて感謝申し上げる。今後は、多数寄せられた相談の傾向把握・分析を行い、日弁連としていかなる施策が必要かを検討し、具体的に実行していくことが求められる。
(事務次長 藤原靖夫)
人権イベント・シンポジウム
新型コロナウイルスと人権
~差別・偏見のない社会を目指して~
2月15日 オンライン開催
新型コロナウイルス感染拡大の中、感染者らを社会的に排除しようとする状況が発生している。このような差別・偏見は感染者やその家族などの人格や尊厳を侵し、生活に重大な悪影響を与えるもので決して容認できない。いかにして差別・偏見のない社会を構築するか考えるべくシンポジウムを開催し、約210人が参加した。
日弁連の取り組み
北村聡子会員(東京)が、2月に公表された「COVID―19と人権に関する日弁連の取組―中間報告書―」について、偏見差別・プライバシー、医療、貧困、両性の平等、裁判を受ける権利などの項目ごとに日弁連の取り組みと課題がまとめられているとして、その概要を説明した。関哉直人会員(第二東京)は、2020年12月4日から10日までの人権週間に実施された新型コロナウイルスと偏見・差別・プライバシー侵害ホットラインに寄せられた31件の相談内容を類型化して紹介した。
さまざまな立場から新型コロナウイルスと差別・偏見を考える
続いて3人のパネリストによる報告とパネルディスカッションが行われた。押谷仁教授(東北大学大学院)は、感染症疫学・ウイルス学の見地から、差別や偏見のまん延により感染者を早期発見できなくなることの不利益を皆が理解する必要があると述べた。坂元茂樹教授(同志社大学)は、国際法の専門家として、法律がつくり出した社会的差別であるハンセン病の歴史を振り返り、コロナ差別によって同じことを二度と繰り返さない日本にしなければならないと強調した。三浦麻子教授(大阪大学大学院)は、社会心理学の観点から社会の差別に対する意識は時代とともに確実に変わってきているとして、その平均値を動かす努力を絶えず続けていくことが差別や偏見などの問題への対処法として有効であると指摘した。
検察審査会制度の“これまで”と“これから”
~強制起訴制度から11年~
2月9日 オンライン開催
強制起訴制度のこれまでの運用状況や現状を踏まえ、検察審査会(以下「検審」)の課題と展望について意見交換を行った。
基調講演
―検審の改革課題
川﨑英明名誉教授(関西学院大学/大阪)は、起訴基準(起訴の法的性格)について、訴訟構造論と被疑者・被告人の権利論の視点を挙げ、弾劾的訴追観をもとに強制起訴の基準を考える場合でも、濫訴排除のために合理的根拠の存在が求められるとした。その上で、検審の審査において被疑者防御権を手続的に保障し強制起訴の合理性を担保すべきと論じた。
また、検察の民主的コントロールの在り方として、検審に不当起訴の審査機能を付与して訴追過程の透明化を図るとともに、検察事務の改善勧告機能を強化すべきとした。そして検察を国家の代理人から市民の代理人にする制度として、検審の将来像を考えていくべきであると説いた。
基調講演
―検審の展望
平山真理教授(白鷗大学)は、検察と検審の起訴基準は異なるとした上で、検審では、起訴について「社会に警鐘を鳴らして同種事件を抑止する」という意義が強く意識されているのではないかと述べた。
また、現在の検審は、起訴相当・不起訴不当議決が減少傾向にあり、検察の正しさを確証する存在になっていないかとの懸念を示した。一方で、起訴相当・不起訴不当議決後の起訴で有罪判決が出れば、検察は不起訴処分の正否を突き付けられることになり、検審は検察にとって「厄介な存在」となり得ると評した。
パネルディスカッション
平山教授は、検察審査会制度では、審査員が検審の役割を自覚するとともに、議決してもしなくても結果は変わらないとの認識に陥るのを避けるためにも、審査補助員弁護士の役割が重要と語った。
川﨑名誉教授は、検審の改革課題は、公判中心などの刑事司法改革の中核に関わる問題であると指摘した。その上で、指定弁護士には、補充捜査での取調べの可視化、証拠開示など、あるべき訴追者としての活動・判断の実践モデルを示してほしいとの期待を寄せた。
第3回
LGBTの権利に関する取組についての意見交換会
2月16日 オンライン開催
日弁連は、本年2月に「同性の者も事実上婚姻関係と同様の事情にある者として法の平等な適用を受けるべきことに関する意見書」(3面参照)を取りまとめるなど、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の権利保護について積極的に取り組んでいる。意見交換会では各弁護士会における取り組みを報告し、課題を共有した。
各弁護士会の取り組み
―アンケート集計結果
両性の平等に関する委員会の森あい特別委嘱委員(熊本県)が、各弁護士会に対するアンケートの集計結果を報告した。常設の電話相談窓口や面談窓口の設置、研修会や勉強会の開催状況、弁護士会規則や就業規則、ガイドライン等の整備など、各弁護士会におけるLGBTに関する対外的・対内的な取り組みが紹介された。
基調報告
山下敏雅会員(東京)は、LGBTに関する現在の状況や法律相談における注意点を説明した。LGBTの当事者が増加している今日においては、その相手方の代理人となった場合でも、LGBTへの理解や立場を考えた主張をしなければならないと注意を促した。また、同性婚などLGBT特有の法律問題のみならず、貸金請求など一般的な法律問題でLGBTを背景とする場合にも相談者がありのまま相談できる体制を全国で整えることが必要であり、少数者の人権擁護のために弁護士、弁護士会が取り組むことは極めて意義があると力を込めた。
分科会
地域ごとに5つの分科会に分かれ議論がなされた。関東圏の分科会では、弁護士会内での意識喚起について、LGBTへの関心の強さには個人差があるため、企業法務にからめた小冊子を制作して会員に提供したり、刑事事件など他の分野に関連付けて研修会を行ったりといった工夫が示された。そのほか、当事者支援団体との連携の仕方や自治体との関わり方についても活発な議論がなされた。
第63回人権擁護大会第3分科会プレシンポジウム
人口減少とコロナ危機を乗り越え、安心して生活できる地域づくりを考える
―日弁連自治体調査報告から―
2月26日 オンライン開催
人口減少や東京一極集中が進む一方、地方の衰退が深刻な問題となっている。コロナ危機の到来により地方自治体の役割の重要性があらためて問われる今、地域再生に向けた全国各地の取り組みに学び、危機を乗り越えて安心して生活できる地域づくりについて、意見を交わした。
日弁連 自治体調査報告
貧困問題対策本部の委員らが、地域再生に向けた特色ある取り組みをしている地方自治体について調査結果を報告した。①神奈川県小田原市の「持続可能な地域社会モデル」に基づくまちづくり、②北海道帯広市の積極的な中小企業振興策・同下川町の林業を中心とした地域循環型経済、③岡山県奈義町の定住化に向けた住宅施策や子育て支援施策・同西粟倉村の地域資源に付加価値をつける「百年の森林(もり)」構想、④長野県阿智村の住民自治や住民協働を重視した取り組み・同下条村の少子化対策・同泰阜村の在宅福祉の充実などの取り組み例が紹介された。⑤大規模合併を経て政令指定都市となった浜松市については、合併前後の人口動態や財政効果、周辺部地域の聴き取り結果等が報告されたが、合併には一長一短あり、評価は難しいことが指摘された。
パネルディスカッション
岡田知弘教授(京都大学名誉教授/京都橘大学教授)、小出太朗氏(全国町村会行政部長)が、地域づくりと地域の役割について意見交換した。岡田教授は、地域の持続的発展のため、地域内再投資力を高め、地域内経済循環を構築することの重要性を説いた。小出氏は、コロナ禍により東京一極集中の弊害・リスクが顕在化したと指摘し、持続可能な国づくりのため、地域の活性化と地域が共生して新たな価値を創る価値創生社会の実現を目指すと述べた。
ブックセンターベストセラー
(2021年2月・手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター
順位 | 書名 | 著者名・編集者名 | 出版社名・発行元 |
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1 |
遺産分割実務マニュアル〔第4版〕 |
東京弁護士会法友全期会相続実務研究会/編 | ぎょうせい |
2 | 高速マスター 法律英単語2100 法律・基礎編 | 渡部友一郎/著 | 日本加除出版 |
3 | こんなところでつまずかない!保全・執行事件21のメソッド | 東京弁護士会親和全期会/編著 | 第一法規 |
婚姻費用・養育費等計算事例集(中・上級編)新装補訂版 | 婚姻費用養育費問題研究会/編 | 婚姻費用養育費問題研究会 | |
5 | 実務解説 改正会社法〔第2版〕 | 日本弁護士連合会/編 | 弘文堂 |
6 | 模範六法2021 令和3年版 | 判例六法編修委員会/編 | 三省堂 |
一問一答 令和元年改正会社法 | 竹林俊憲/編著 | 商事法務 | |
8 | 概説 改正相続法〔第2版〕 | 堂薗幹一郎・神吉康二/編・著 | きんざい |
9 | 有斐閣判例六法 Professional 令和3年版 | 長谷部恭男・佐伯仁志・酒巻 匡・大村敦志/編集代表 | 有斐閣 |
10 | 婚姻費用・養育費の算定〔改訂版〕 | 松本哲泓/著 | 新日本法規出版 |
養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究 | 司法研修所/編 | 法曹会 | |
改訂版 ケース・スタディ ネット権利侵害対応の実務 | 清水陽平・神田知宏・中澤佑一/著 | 新日本法規出版 |
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順位 | 講座名 | 時間 |
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1 | できる!インターネット被害対応2020-入門編- | 113分 |
2 | 交通事故を中心とした偶発事故対応弁護士費用保険について | 38分 |
3 | LAC制度の概要 | 12分 |
4 | 中小企業向け弁護士費用保険について | 9分 |
5 | 交通事故刑事弁護士費用保険について | 22分 |
6 | 自然災害債務整理ガイドラインー新型コロナウィルス感染症への適用ー | 88分 |
7 | 業務妨害行為対応弁護士費用保険について | 12分 |
8 | 自然災害債務整理ガイドライン・コロナ特則ー債務整理申出の実務ー | 58分 |
9 | 自然災害債務整理ガイドライン・コロナ特則ー相談、委嘱対応の実務ー | 74分 |
10 | 新型コロナウイルスにより影響を受けた事業者の倒産回避対策 | 146分 |
お問い合わせ先:日弁連業務部業務第三課(TEL:03-3580-9902)