京都府警察が被害者の個人情報を加害者側へ伝達したことに関する日弁連コメント

2012年(平成24年)4月27日
日本弁護士連合会


 

本年4月23日、京都府亀岡市で児童らの列に軽乗用車が突っ込み、10人が死傷した事故について、京都府警察亀岡警察署が、被害者遺族らに無断で死傷者全員の連絡先などを加害者側に伝えていたことは、極めて遺憾である。



当連合会は、2003年(平成15年)10月17日付け「犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求める決議」において、「犯罪被害者について、個人の尊厳の保障・プライバシーの尊重を基本理念」とすることを国に対し求めている。



個人情報保護の観点からも、本人の同意があるときや個人の生命、身体又は財産の保護のため緊急かつやむを得ないと認められるときなどの場合以外は、被害者らの連絡先が開示を許されない個人情報に当たることは明らかである。



犯罪被害者やその遺族は、犯罪による直接的な被害にとどまらず、様々な二次的被害を受ける。連絡先を伝えてもいないのに、加害者側から突然の連絡が入ることは、被害者らの心情を著しく害するものであって、深刻な二次被害になりかねない。幼い子どもや若い母親が無謀な車の運転の事故で亡くなった直後で、被害者遺族が激しく動揺し、あるいは呆然とし、悲嘆にくれているときに、被害者遺族に無断で、その連絡先を加害者家族に伝えることは、被害者遺族の心情を理解しない、非常識極まりない対応である。



また、犯罪被害者に接することを業務内容としており、その心情を最も理解していなければならない警察において、被害者らの承諾なくして連絡先などを開示することは、個人情報保護及び警察官の守秘義務の観点からも重大な疑問が残る。今後は、被害者らの承諾を得た上で開示するようにすべきである。



当連合会は、警察庁及び京都府警察本部に対し、犯罪被害者の心情の理解のために研修をするほか、犯罪被害者等の個人情報の取扱いについて、今後の配慮に万全を期するよう求めるとともに、今後、同様のことが起こらないよう対応を求める。

以上